扉を開けた瞬間、ソファに座る人物が目に入った。
スーツ姿の男。自分の他に誰もいないのを良いことに煙草でも吸おうとしていたのか、手には火の着いていない煙草とライターが握られている。
しかしレオに気付くとその両方とも胸ポケットにしまい込み、さっと片手を上げた。
「よぉ貧乏人」
「○○さん!」
○○と呼ばれた男は、自分に気付きぱっと近付いてきたレオの頭をぐりぐりと撫でる。
まるで近所の犬とじゃれるような扱いだが、レオは「くすぐったいですよ」と笑った。
「この間の任務はどうでしたか?」
「楽勝だ。俺を舐めて貰っちゃ困る」
にっと笑って見せた○○は「あぁそうだ」と小脇から紙袋を取り出す。
「ほれ、土産だ」
ぽんっとレオの手に置かれたのは甘い香りを放つ箱の入った紙袋。
「え?・・・わっ、これもしかして駅前のドーナッツ?凄く美味しいって評判の!」
「貧乏人のレオちゃんは日々の生活すらままならないと思ってなぁ?優しい優しい俺に感謝しろよ」
「有難う御座います!○○さん!」
「・・・お、おぅ」
そんな素直にお礼を言われるとは思わなかったらしい○○は気恥ずかしそうに頬を掻いた。
これがザップ相手なら絶対に文句の一つや二つ・・・いや、大乱闘になる可能性すらある。
貧乏人貧乏人と言いつつ、実は一番にレオを可愛がっている○○は堪らずわしゃわしゃとレオの頭を撫でた。
「ザップには秘密だぞ。アイツ、ぎゃーぎゃーうるせぇから」
「あっ、じゃぁザップさんが戻ってくる前に二人で食べちゃいましょうよ」
「おー・・・別に良いけど」
「じゃぁお茶淹れてきますね!」
「おー」
さっさとお茶を用意しに行ったレオの背を見送る○○は胸ポケットにそっと手をやった。
しばらくしてカップを二つ手に持ち戻ってきたレオ。
○○の隣に腰かけ、紙袋の中に入っていた箱を開けた。
「わっ、美味しそう」
「好きなの食え。俺は残ったので良い」
美味しそう美味しそうと嬉しそうに声を上げるレオに小さく笑いつつ、お茶を一口。
「決めました、この苺のにします」
「おー、じゃぁ俺はチョコな」
ひょいっとチョコのかかったドーナッツを手に取る。
もちもちとしたドーナッツの上にかかっているチョコ。口に入れれば、程よく甘いソレが口の中で溶ける。
レオの淹れたお茶でそれを飲み下すと、気持ちも腹も満たされた気がした。
「○○さんって、優しいですよね」
「・・・そうか?」
ドーナッツを食べながら唐突にレオが言い放つ言葉に○○は少しだけ怪訝そうな顔をした。
「何だかんだ言って、僕にいろいろ食べさせたりしてくれるし」
「・・・知ってるかレオナルド、そりゃ餌付けって言うんだぜ」
ドーナッツを指差しながら苦笑を浮かべる○○にレオはふるふると首を振る。
「それに、○○さんって僕が傍にいる時煙草吸うの我慢しますよね」
「あー、まぁな。真横で煙たいの嫌だろ?」
その言葉に「ザップさんはじゃんじゃん吸いますけどね」と笑いながらレオは残りのドーナッツを口に押し込んだ。
「僕、○○さんのこと、結構好きです」
目をぱちぱちと瞬かせた○○は「あー」だとか「んー」だとか一頻り唸った後、ぽんぽんっとレオの頭を撫でて笑う。
「まぁ、俺もお前の事嫌っちゃいねぇよ、貧乏人」
「○○さんって、ちょっと素直じゃないですよね」
レオはくすくすと笑いながら○○の手を受け入れた。
ドーナッツはいかが?
それからしばらく、ドーナッツの空き箱を見つけたザップが「何二人だけ食ってんだよ」と恨みがましい目を向けた。
あとがき
ごごごごごご、ごめんなさいぃぃいいいいッ!!!!!!
血界戦線まだ見た事無いんですっ!!!!大分誰コレ状態になってしまいました。本当に申し訳ないですorz