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停泊した島にいたソイツに惚れた。


カフェテラスで珈琲を飲みながら読書をするその横顔に目を奪われ、俺の視線に気付き軽く会釈する姿に心を奪われた。


欲しくて欲しくてたまらなくなった。

奪うという選択肢もあったが、俺はソイツに・・・○○に嫌われるような手段は使いたくはなかった。

だから思い切って、正面切って言ってやった。俺の船に乗れ、と。





俺の船に乗れ、と誘うところまでは上手くいった。だが・・・



「・・・俺と○○の関係が進展しないのは何故だッ!!!!」



薄暗い船長室、ダンッ!!!とテーブルに拳を叩きつける。

船に乗れと言い、良い返事を貰えたところまでは良かったんだ。だが俺は、俺が思った以上に○○に惚れていた。


・・・正直な話、○○とどう仲良くなれば良いのかわからない。下手なことをして、○○に嫌われたくはない。

まるで女のような考えだが、○○相手ならこんな考えに達してしまうのも仕方ないと思う自分がいた。


どうしても○○に近付きたい。だが、そのための最良の方法がわからない。





「・・・これに、頼るか」

随分前に停泊した島で間違えて購入したこの書物。これには俺が知らない・・・所謂“恋愛の極意”なるものが数多く綴られていた。

俺には必要のないものだと思っていたが、まさかこんなところで役立つとは・・・



○○に気に入られたい。その一心で、俺は徹夜でその本の内容を暗記することにした。

明日、俺はこの本の内容を実行するのだ・・・













■実践@曲がり角で出会い頭にぶつかる


食堂での朝食後、○○の部屋に一番近い曲がり角で待機。

○○の気配を感知。よし、○○は一人だな。

気配を殺す俺に気付くことなく曲がり角を曲がって来ようとする○○の前に飛び出すっ!!!!


「・・・っと、危な」

「・・・・・・」


いなされた、だと・・・!?

変な沈黙が俺と○○の間に流れる。最初に口を開いたのは○○だった。


「・・・船長、前はしっかり見て歩いた方が良い」

「・・・悪いな」


普通に注意された。クソッ!





■実践A高いところにある物が取れないアピール


書庫で○○が読書をしているのを発見。その目の前で、高い場所にある本へと手を伸ばす。・・・普通に届かないな。

ぐぐぐっと手を伸ばす。


本では、此処で相手が代わりに高い場所にある物を取り、その時に身体が急接近するというが・・・


「・・・船長」

「あ?何――」



「脚立を持って来た。使うと良い」



「・・・すまないな」

・・・俺は普通に脚立を使って本を取った。





■実践B目の前でこけてドジっ子アピール


つかつかと○○の近くへと歩いて行き、そのまま足を縺れさせ床へとこけ――

「船長」

ぐいっと腕を掴まれる。


「・・・今日はどうしたんだ船長。足元には気を付けろ」

「・・・すまないな」


こけることは叶わず、中途半端な体勢な俺の内心は大荒れだ。





■実践C相手の部屋にやってきて一言『来ちゃった』


ノック無しに扉を開け放つ。鍵を閉めないとは、不用心だな。俺以外の奴が入れないように注意するべきか・・・


「船長?」

「・・・来ちまった」


○○が「はぁ」と気の無い返事をする。意味わかってねぇな、コイツ。

ベッドに腰掛け本を読んでいたらしい○○はぱたんっと本を閉じる。


「・・・船長」

「何だ」


「茶でも飲んでくか」

「・・・頼む」



・・・ちょっと成功か?





■実践D相手を上目使いに見て一言『今日は帰りたくない』


○○の淹れた紅茶を飲み始めると、○○は普通に読書を再開しやがった。クソっ!

俺がどかっと隣に座っても、じーっと見つめても反応無し。コイツ、そもそも俺を意識に入れてんのか?


・・・まぁ、俺がどれだけ○○を思っても、コイツはどうせ俺のこと――



「船長」

「っ!な、何だ?」

「そろそろ就寝したい。悪いが、帰ってくれないか」


「・・・・・・」

泣くぞ。




「・・・今日は、帰りたくねぇ」




これは本心で、つい○○の服の裾を掴んだ。

○○は・・・


「そうか」


あっさり頷いた。

















「・・・は?」

「ん?」


「そ、その頷きはどういう意味だ?」

「帰りたくないんだろう?」

「確かにそう言ったが・・・」


「それを了承したという意味の頷きだ。船長、今日は可笑しいぞ」

可笑しいのはお前だろっ!





「船長、寝る時は毛布派か?タオルケット派か?」

「はっ?」


「寝る時は右端と左端どっちだ。床に落ちる危険性が無いのは右端だ」

「いや、ちょっと待て」


「それとも船長は、別々に寝る方が良いか」

「・・・・・・」



是非同じベッドで、とつい言ってしまった俺は悪くない。






書物の名はレディース雑誌








これで彼のハートもガッチリキャッチ☆というふざけたキャッチコピーの印刷されたその書物は、果たして役に立ったのだろうか。



あとがき

・・・レディース雑誌を真剣な面持ちで読むローを想像してみてください。乙女でしょう?←
たぶん、二人は両想いなんでしょうね!←



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