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※この小説は過去にリクエストされた番外編『父母になりました』に微妙に繋がっています。本編の十年後設定です。
読まなくても大丈夫なレベルですが、ただ【フランはホグワーツ生で、主とセブルスをお父さんとお母さんと呼んでいます。】





表向きはイギリスの名門校であるホグワーツ魔法学園。

全寮制で一年の大半を学園の中で過ごす。

もちろん長期休暇も存在しており、その間学校に残る生徒もいるが、その殆どは帰省。


・・・○○とセブルスのことを『お父さん』『お母さん』と呼ぶ変わった生徒、フランも帰省する生徒の一人であった。






「ただいま戻りましたー」

ばたーんっ!と勢いよく扉が開かれ、長期休暇の経てホグワーツへと戻って来たフランが姿を見せた。


部屋の主である○○とセブルス。二人はお茶をしていたのか、手に温かな湯気を放つティーカップを握っていた。




「おー、おかえりー」

「普通その言葉は“あっちの奴等”に言う台詞だろう・・・」


軽い言葉で出迎える○○と、呆れたような顔をしつつもフランのために紅茶を淹れるセブルス。

フランは「親に会ったら『ただいま』って言うのが礼儀ですよー」と言いながら荷物をずるずると引きずり、部屋へと入ってくる。一応は生徒と教師の間柄なのだが、その辺りの礼儀は無いようだ。





「それにしても大きな荷物だな、フラン。何か土産でもあんのか?」

ずるずると引きずられている荷物。


「笹川京子がいろいろ用意してくれてましたよー。あ、あとこれも持ってきました」

荷物の一つである大きな大きなリュックから取り出したソレに、○○は「バズーカか?」と首を傾げた。

そう。フランの手には、何処か見た事のあるようなバズーカが一つ握られていた。





「実はですねー、ジャンニーニが面白いもの作ってたので、ちょっと借りてきちゃったんですよ」

「はははっ、フラン知ってるか?それってドロボーって言うんだぞ」


「ミーはファミリーの一員なので、ギリギリセーフです」

「まぁ俺は別に困らねぇから良いけど・・・で、それは何なんだ?普通のバズーカじゃないだろ?」


飲んでいた紅茶のカップを置き愉快そうな顔でフランに尋ねる○○。

フランは「その通りです」と胸を張って見せた。






「その名も、十年前バズーカでーす」






「十年前?十年後なら聞いた事あるが・・・」

「十年バズーカとそう性能は変わらないらしいですけど、十年後じゃなくて十年前と入れ替われるらしいですよ、おっと・・・!」


「あ、こらフラン――」


もっと良く見せようとしたのかバズーカを大きく掲げたフラン。勢いが良すぎて手から滑るバズーカ。床へと落ちゴンッ!!と音を立て・・・



どかんっ!!!!



見事にバズーカが誤発射され、茶菓子の用意をしていたセブルスにぶち当たってしまったのは、もはやテンプレと言うしかないだろう。










もくもくと上がる煙。

○○は「セブルス!」と声を上げながら煙の中へ駆け寄った。



「・・・ぁっ」

そこにいたのは確かにセブルスだった。けれど“今の”セブルスではなかった。

十年前、まだ学生のセブルスが本を手にぽかんとした表情のまま立っていた。




「せ、セブルス・・・」

「な、何なんだ此処は・・・それにお前は・・・○○?」


「っ・・・」

○○は自分を見上げるセブルス(学生)に内心ガッツポーズをしつつ「あぁ、○○だ」と笑顔で頷いた。




魔法を使えば拝めないこともないが、こんな形で過ぎ去った学生時代のセブルスに拝めるなんて、○○にとってはご褒美でしかない。

くるりとフランを振り返りこっそり「グッジョブ!」と言う辺り、○○の喜びが窺える。


フランもフランで「お邪魔なようなので荷物整理してきまーす」と部屋を出て行った。









「久しぶりって言うべきなのかな、こういう場合って」

完全に二人きりとなり、○○は小さく微笑む。



「此処は一体・・・」

「十年後の未来だ。ごめんな、こっちの都合で十年前のセブルスと入れ替わってしまったみたいなんだ」


「此処は、十年後・・・なのか?」

少しだけ不安そうな顔をするセブルスの頭を「大丈夫。すぐに戻れるさ」と撫でれば、セブルスの頬は朱に染まる。



「・・・十年もすれば、やっぱり大人になるんだな」

「見た目はな。けど、中身は全然変わってないってよく呆れられてるよ」

「それは僕か?」

「そう。相も変わらず愛らしい俺の恋人」


「・・・確かに、あまり変わってないかもしれないな」

小さく苦笑を浮かべるセブルスを堪らず抱き締めれば抱き締められたセブルスは「ひゃっ!」と小さく悲鳴を上げた。

それすらも愛おしく、優しく優しく「セブルス、会えて嬉しい」と惜し気も無く愛を向ける○○にセブルスの顔はどんどん赤くなっていく。




「や、止めてくれ・・・そ、そのっ」

「恥ずかしい?」


「・・・っ、十年後の○○は、意地悪だ」


その言葉に○○は目を瞬かせた後、小さく吹き出す。

笑われたセブルスはむすっとした顔で○○を見上げている。ごめんごめん、と○○はセブルスの頭を撫でた。





「セブルスが可愛すぎるんだ・・・なぁ、そっちの時代の俺は、セブルスを幸せに出来てるか?」

「何だ、自信がないのか?」


「ははっ、そうだなぁ・・・ちょっと不安だな」


「・・・僕は、幸せだ」

その言葉に○○は「有難う」と笑った。





「本当は今すぐキスしてやりたいが、十年前のセブルスは十年前の俺のものだから、我慢しよう」

「・・・○○にしては、殊勝な心がけだな」


「はははっ、十年後覚悟しておけよ」

「・・・やっぱり、十年後の○○は意地悪だ」


でもきっと、十年後の僕はそんな○○の事も――



そう言いかけた時、ぼふんっ!という爆発音と共に煙が上がった。



げほっと少し咽れば、腕の中にいるのは○○が見慣れたセブルス。

自身が抱き締められていることに気付いたセブルスは、冷ややかな目で○○を見た。





「・・・貴様、十年前の僕に手を出してはいないだろうな?」

「ギリギリセーフ。流石に幼気な子供に手は出さないって」


セブルスは「当然だ」と言いながら○○の鳩尾を軽く殴った。








十年前サービス






「あれ、入れ替わる前に持ってた茶菓子は?」

「・・・十年前の○○にやった」

「・・・マジか。セブルスもちゃっかり楽しんでんじゃん」

「楽しんだかどうかは兎も角、部屋であんなものを暴発させたフランは説教だ」


「あ、セブルス約束覚えてる?」

「約束?」

「『十年後、覚悟しておけよ』ってヤツ」

「・・・・・・」

「あ、その顔は覚えて――」

「フランを探しに行くぞ」

「おいおいセブル・・・あーあ、行っちゃった」

まぁ、逃がす気はないけどな。

○○は意地悪く笑った。




あとがき

フランが出て来たので、前に書いた番外編(本編には無関係)を利用しちゃいました。
・・・学生セブルス、貴いと思います(真顔)



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