×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -


今日は良い天気だったから、洗濯物もすぐに乾いた。

取り込んだ洗濯物を居間に集めて一人畳む。主くんが買ってくれた柔軟剤もちゃんと使ってるからふわふわと柔らかくて気持ち良い。それに良い香りもする。



鼻歌交じりに洗濯物を畳んでいると「光忠」と呼ばれた。

顔を上げて見れば主くんがにこにこ笑いながら居間に入って来て、そのまま僕のすぐ側で足を止める。




「光忠、あーんってしてごらん」

「ん?どうしてだい、主くん」


「良いから、あーんってしてごらんよ」


「あ、あーん・・・」

突然なんだろうと思いながらも素直に口を開けば、主くんが笑顔のまま僕の口に何かを放った。


吃驚して口を閉じれば何か固形物が僕の口の中あって、それは僕の口の中で少し溶けた。溶けたソレは吃驚するぐらい甘い。




「んっ!な、何これ!?」

「チョコレートだよ。知らない?」


食べ物だから、安心して。と主くんは楽しそうに笑う。

僕が慌てる姿を見て楽しんでいるようだ。




「知識としては知ってるけど、実際に食べたことは無いよ・・・もぉ、吃驚させないでよね」

趣味悪いなぁ、もぉ!と言いながら口の中のチョコレートをもぐもぐ。溶けたチョコレート、やっぱり甘い。美味しい。




「ふふっ、ごめんごめん。で?お味は?」

「・・・甘くて美味しい」


「それは良かった。さっき大倶利伽羅に食べさせたら顔を顰めて『甘すぎる』って言われたからね。そっかぁ、光忠は甘いの好きかぁ」


その言葉にぴたりと動きを止めて主くんを見つめる。





「・・・倶利ちゃんにもやったの?」

「おや、食いつくところはそこかい」


「答えてよ」

「したよ。光忠にやったのと全く同じ、あーんってして貰った口に放り込んだ」



「・・・・・・」

口の中は相変わらず甘くて美味しいチョコの味がするのに、何だか味がなくなった気がした。


自然と洗濯物を握っていた手に力が籠って、手元にあった洗濯物の一つに皺が寄ってしまう。

それを見ていた主くんは「おやおや」と笑った。笑うなんて酷い。





「不貞腐れた顔をしているね。気に入らなかった?」

「・・・別に、主くんが他の刀剣と何しようと僕がとやかく言う筋合いはないけどね」


ふんっとそっぽを向いて洗濯物を畳む。



あぁもう!手に力が入りすぎて全然綺麗に畳めない。これも全部主くんのせいだ!

恨みがましく主くんを見てみれば主くんは相変わらずにこにこ笑ってるだけだし・・・何だか完全に僕の独り善がりじゃないか。


一人で勝手に落ち込んだり怒ったり、全然格好良くない。





「そう落ち込まないで。チョコ、もう一口食べる?」

僕の気も知らないで呑気にチョコを見せてくる主くんに小さく「・・・貰う」と返事をすればすぐに目の前にチョコが一欠け口の前に差し出された。



「ほら、あーんしてごらん」

「・・・自分で食べれるのに」


「洗濯物畳んでるんだから、手が汚れたら困るだろう?」

「・・・・・・」


その言葉に仕方なく口を開けばまた主くんが僕の口にチョコを放る。

悔しいけど、やっぱりチョコは甘くて美味しい。






「光忠は甘党だなぁ。そうかそうか」

「・・・だったら何?もぉ!家事の邪魔するんだったら他の場所行ってよ!どうせ他の刀剣にもやるんでしょ、それ」


ふいっと顔を背けながら言えば主くんは声を上げて笑った。酷い、酷過ぎる。




「わ、笑わないでくれないかい?」

「ごめんごめん。でも、つい笑ってしまうんだ・・・ふふっ」


「ほら!また笑ってる!」

酷いよ!と言いながら手元にあった手拭いを軽く投げれば主くんは「おっとっと」と手拭いをキャッチしてそのまま洗濯物の山へと戻す。





「私の光忠は本当に可愛らしいなぁと思ったら、つい」

「なっ!?可愛いって、何言ってるんだい!?ぼ、僕は可愛いとかそういうのじゃなくって・・・」


「ふふっ、はいはい。光忠は格好良いよ」

「全然思ってないでしょ!」




可愛いって何さ!

僕は可愛いって言われても全然嬉しくないよ!か、可愛いとか・・・




「・・・っ」

ぶわりと熱くなった顔を隠すように下を向く。


まだ全然畳み終わってない洗濯物の山が視界に入る。れ、冷静にならないとね。主くんには全然そんな気無いわけだし、僕が一人で勝手に慌ててたら、格好悪いもんね。よし、冷静に冷静に――






「大倶利伽羅にもさっき怒られてしまってね」

「えっ?倶利ちゃんに?」


突然の言葉に顔を上げると主くんは「うん」と何処か穏やかな表情で頷いた。




「『意中の相手意外にそんなことするようだと、光忠に嫌われるぞ』ってね。いやはや、大倶利伽羅には敵わないね」

「僕に嫌われるって・・・」



さっきってことは、あの『あーん』ってヤツだよね?

それをやったら僕が怒るって、それって明らかに僕が主くんに気があることをバラしてるようなもんだよね!?倶利ちゃん!


思わぬ密告者の存在に顔が青ざめるのを感じる。さっきまで顔が熱かったから、酷い温度差だ。

主くんはそんな僕の顔を見て「おっと、何で青褪めているんだい?」と困り顔。



というか、あれ?意中?





「けどまぁ、大倶利伽羅の言うとおりだと私も反省してね。これはもう意中の相手にしかしないことにしたんだ」

「えっ、け、けど今・・・」


「おや、今のはある意味告白のつもりだったんだけど、どうやら光忠には伝わらなかったらしい」


「こ、告白っ?」

それって誰に?あ、そ、そっか、今この部屋にいるのは僕と主くんだけだし、さっき意中の相手って言ってたし、そっか、そっかぁ・・・





「ほ、ほんとに?」

「これが冗談なら何て酷い冗談だろうね・・・もちろん、本当だよ」


そうだよね。

主くんはたまには冗談を口にするけど、悪い冗談を言う人じゃないもんね。


でも、僕が意中の相手かぁ・・・




「光忠、顔が笑ってる」

「えっ!?」


「それは喜んでくれてるって思っても良い?」


「ぅ・・・うんっ」

こくこくと頷けば主くんが「それは良かった」と頭を撫でてくれた。


それだけでも胸がいっぱいになる。

こんな幸せな気持ちをくれる主くんに少しでもお返しがしたくって、僕は「あ、あのね、主くん」と口を開く。






「そ、その・・・僕も、主くんのこと・・・」

「待って」


「えっ」

突然言葉を止められてしまい、どうして?と主くんの顔を見る。・・・とても吃驚した。


だって主くん、普段じゃ考えられないぐらい顔してるんだ。何かこう・・・照れてる、みたいな。





「主くん・・・もしかして、照れてる?」

「・・・恥ずかしい話、さっきの光忠の言葉を最後まで聞いたら倒れてしまうんじゃないかってぐらいには照れているよ」


「・・・ふふっ、主くんの方が可愛いじゃないか」

「可愛いのは光忠だよ。それは譲れない」


若干赤い顔のままで僕の頬を撫でて笑う主くんに、僕も顔が熱くなった。








意中の君にしたいこと








「す、好きだよ、主くん」

「・・・・・・」

主くんはあろうことか洗濯物の上に突っ伏して「今、見せられない顔になってしまったよ」と困ったような声を上げた。



戻る