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※添える程度のブラック本丸ネタ。


見習いの乗っ取りってあるじゃん?そうそう、結構前から話題に上がってるやつ。

真っ当な審神者からしたらたまったもんじゃないよね、そういうのってさ。

でもさ、刀剣たちからすれば『自分達好みの主』を選べるってんで結構見習いが来るのを楽しみにしてる奴もいんのよ。え?そんなことない?いやいや、絶対とは言い切れないじゃん?それに、好みじゃなければ引き続き今の主につけば良いんだから、刀剣に不利益はないわけだし。

えー?審神者には不利益ありまくり?いーじゃん別に、自分を選ばないような刀剣を傍に置くより、新たに良い感じの刀剣呼べば良いじゃん。運の良いことに、鍛刀して刀作っても顕現させるかは審神者の自由!ストックを用意しとけば良いんだよ。

え?ブラック?その考えはブラックだって?

いやだなー、じゃぁ何で政府は審神者の日々のお勤めとして鍛刀を上げてると思ってんの?そういう任務ないとさ、審神者が自然な流れで鍛刀出来ないじゃん。任務ないのに鍛刀すれば「え?主なんで鍛刀するの?もしかして自分達だけじゃ不満なの?」ってなっちゃうじゃん。そうならないように政府側も配慮してんの!やっさしーね政府!惚れちゃうね!


でさ、見習いの話に戻るんだけどさ、俺思うんだよね。乗っ取るのは別に見習いじゃなくたって良いんだって。

刀剣たちもそう思うんじゃないかな?新米よりもベテラン、若年より壮年ってね。見習いはどうあがいたって見習いなわけだし、審神者業に成れてる熟練を主にしたいなら猶更。

えー?何が言いたいのか?君さっきから凄く不機嫌そうな顔してるね。良いじゃん良いじゃん、ちょっとぐらいおじさんとのお喋りに花を咲かせてくれたってさ。え?花なんてない?あっはっはっ、まぁこんなおじさんに花を感じるようじゃ君の今後が不安でしかないんだけどね。

まぁ君が本気でキレて刀を振り回す前にとっとと言っちゃおうかな。それに此処は運よく敵が少ないけど何時敵が集まってくるかわかんないんだし。



「へし切長谷部、およびその隊の諸君。私に本丸を乗っ取られてみないかい」



キメ顔でそう言いながら敵の打刀の首を切り落とした。え?おっさんのキメ顔全然格好良くない?むしろキモい?言うねー、乱ちゃん。

君たち言ってたじゃん。うちの主は若い女性だって。しかも極度の面食いでレア贔屓だって。え?そんな風には言ってない?大丈夫大丈夫!俺って察しの良い子だから!君たちの練度や表情から大体のことは察せるよ!

そんな君たちに朗報だ!なんとなんと俺が配属された本丸には、世間でいうレアが揃いに揃っている。面食いのお若い女性なら、喉から手が出るくらい欲しいであろうメンツは全て揃っている。しかも、練度もほぼマックスだ。

何故そんな高レベルな本丸を手放したいのかって?実はその本丸、ブラック引き継ぎの面倒くさい本丸なんだ。あ、ブラックにもいろいろあってね。わかりやすいのが過剰出陣と夜伽なんだけど、そのうちの過剰出陣が原因でブラック認定された本丸なんだよね、うちの本丸。

で、前任が逮捕された後に配属されたのがこのおっさんね。相手は高レベルの刀剣だし、新人には荷が重すぎるってんで、ある程度の武術の心得も経験もあるおっさんに白羽の矢が立ったわけなんだけど、ここでまさかの大誤算!

どうやら俺の前の審神者が俺と同じぐらいの年代のこれまた俺と同じ男の審神者だったらしくってね。トラウマ刺激されまくりっつーの?もう一目見ただけで臨戦状態になるわけよ。

お前のせいであの頃の地獄が忘れられないとかお前が憎くてたまらないとか、そんなの知らんがなー、おっさんには関係ないやんかーって感じ。え?下手な関西弁はやめろ?関西人に謝れ?いやー、手厳しいね長谷部くんやい。

お前のために刀を振るいたくないとか完全なる職務怠慢を披露してくれちゃったもんで、こっちも困る困る。歴史修正のために呼ばれた刀剣が刀振るいたくないとかウケるーマジ片腹痛しーって感じ。

でも上はこっちの事情なんて正直どうだって良い感じだから、ノルマは減ってくれないしノルマ達成されなければ給料カットされちゃうしー。困るんだよねー給料カット。今でさえ資源とか必要なものとかを自腹してんのに給料カットとか、おじさんここ最近ぱっさぱさの栄養補助食品しか食べてないよ。栄養補助されても心は満たされないね!あー寂しい!


ま、そういう冗談は置いておこうかな。兎に角、戦果を挙げなければ評価はされない。評価がなければ報酬はない。世知辛いけれど、それが世の常。働かざる者食うべからず。働くのが嫌なら、さっさと本霊に還ればいい。・・・ま、これを言えば世間様はぎゃーぎゃー騒ぐんだろうけどねぇ。あーあ、おじさんの味方は何処にもいないよ。ほんとにね。

君たちの中途半端な練度を見ればわかる。君たちは刀を振るいたい、けれど面食いで中途半端に安全志向な現在の主の元だとそれが出来ない。一方おじさんは働く気のある刀が欲しい。ほら、利害は一致している。

主を裏切ることになる?そんなの、刀を刀として使ってない時点で、主は既に君たちを裏切ってるじゃないか。歯には歯を、目には目を、裏切りには裏切りを!それにさ、別にただ裏切るだけじゃない。君たちの主にはイケメンだらけの楽園を与え、俺の本丸の刀たちには前任とは似ても似つかない新しい主が与えられる。きっと彼等は裏切られたとすら思わないんじゃないか?むしろ感謝される気しかしない!


ん?本丸の主を入れ替える方法だって?おぉ青江くん、詳しい話を聞いてくれる気になったか。おじさん嬉しくて泣いちゃいそう。

簡単なことさ。俺がそっちの本丸に行き、そっちの主さんと話す。で、円満に本丸の中身を交換させてもらう。他所の本丸は通常こちらは干渉できない。行き来するには特別な申請がいるし、情報交換にも政府が多少なり監視をしているのさ。が、政府の用意した移動装置を使わずに出陣している刀剣と一緒に門をくぐれば、なんとかバレない・・・かもしれない。そこは適当なのかよって?仕方ないよー、おじさん君たちを見てこの案を思いついたんだし。

まぁほら、俺は君たちに一目ぼれしたんだよ。もっと戦いたい、こんな戦場じゃ満足できない、血に飢えた獣の目。獣なんて失礼?いいじゃないか、刀は斬ってなんぼなんだから。

悪い話じゃない。誰も損はしない。裏なんてないさ、俺は単純に戦果を挙げて報酬が欲しいだけ。守銭奴?がめつい?おいおい、無償の愛なんてもの、聖人でもないおじさんが持ち合わせてると思う?何事も、資金がなくちゃ始まらないんだよ。長く戦うためには蓄えもいる。戦争を早く終わらせるためには、それこそ莫大な金がいるんだ。それがカットされちゃ、おじさんはもうこの戦争に勝利出来ない。

俺には戦う意思がある。この戦争を終結させようという意思だ。目の前の敵はどんなものであれ叩き潰す。本来身内であるはずの刀剣が戦うことを放棄したなら、それは謀反だ。謀反を起こすならそいつは敵だ。敵は潰す。が、潰せば戦力が減るから、手っ取り早く別の戦力と入れ替えたい。・・・な?わかるだろう?おじさんは現実的な話をしているんだ。いつか刀剣が心を入れ替える?いつか君たちの主も今が戦争中であることを理解してくれる?ないない!あったとしても、それを待つのは時間の無駄だ。



「時間は有限だなんだ。さぁ、選んでくれ。今の主のもとで平和に暮らすか、俺のもとで戦争に身を投じるか」



字面だけなら普通は前者を選ぶだろうけどね。けれど君たちは知っているだろう?満足に振るわれない刀の辛さは。ま、おじさんは人間だから君たちの気持ちなんてミリ単位も理解できていないかもしれないけれど。

っと、吃驚したな。突然おじさんの胸倉を掴むもんじゃないよへし切長谷部。おじさんの心臓が飛び出たらどうするんだい。

・・・ははっ、あと一押しって顔をしているけど、大丈夫?口車に乗せようとしているおじさんが言うのもなんだけれど。

おじさんは嘘はあまり好きじゃないんだけどな。それで君たちが安心してくれるなら、あえて言おう。



「大丈夫。君たちのそれは裏切りではないよ」



戦争のための、効率的な選択をしただけさ。

・・・さて、それじゃあそろそろ君たちの本丸に行こうか。君たちの気が変わらないうちにね。






よく喋る男





「この度はこちらの刀剣の皆さんに救護していただき有難う御座いました。いやはや、ゲートの故障で戦場にはじき出されてしまった時はもう今日が自分の命日かと思いました。そことを偶然通りかかってくれた彼等には感謝の言葉もありません。とはいえ、突然女性の本丸に上がり込むのは不届きなことと理解していますよ、えぇ。宜しければここから私の本丸にゲートをつなげてはいただけないでしょうか。本当ですか?有難う御座います。では早速・・・おっと、いけないいけない、命を助けていただいたお礼をこんなおざなりに済ませてしまえば、私の先祖もさぞお怒りになることでしょう。どうでしょう、此処は審神者らしいお礼ということで・・・」

ぺらりぺらりとよく回る舌で女審神者に語り掛ける男。

最初は胡散臭そうにしていた女審神者も、彼の本丸に揃っている刀剣の名を聞けば、次第に喜色の色を浮かべている。

命を助けて貰ったお礼。練度もほぼ上げ切ってしまい、どの刀剣も近頃闘志が薄くなってしまったとのこと。もちろん女審神者にとっては刀剣男士に闘志があろうとなかろうと関係ない。

目の前の審神者が「私も近頃は己の戦力に慢心してしまい、このような事故に巻き込まれる始末。どうでしょう、此処は一つ、しばらくの間お互いの刀剣を交換してみるのは。もしその間に気に入った刀剣がいれば、貴女に差し上げましょう」と笑えば、女審神者は思わずそれに応じてしまう。

一定期間の刀剣交換。男の本丸の刀剣は、前任を全く感じさせない女審神者の訪れに安堵した。女審神者に気に入られようと、努力をした。女審神者もその様子に気をよくした。

そうして交換の期間が終わるころ、女審神者が言うのだ。

「貴方さえよければ、私の本丸と貴方の本丸の刀を、全て交換したい」

男は困惑したような顔を作り上げ、そしてしばらくして「わかりました。私も、彼等となら初心にかえれるのではと思っていたところです」と返事をした。



満足する女審神者と男の元刀剣たち。

どちらにとっても損はない。まさに利害の一致。

男はその顔に満面の笑みを浮かべ、彼等にわからない位置で女審神者の元刀剣たち、これから自分の刀剣となる彼等にピースサインをした。


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