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「主ってさ、不細工だよね」

「突然失礼だな、加州」

近侍の思わぬ言葉に書類をまとめていた手が止まる。


じとっとした目で加州を見れば、加州は俺の視線など気にせず俺がまとめた書類にカチッとホッチキス留めをした。





「だってさ、控えめに言っても主って不細工でしょ?」

「控えめに言ってそれか」


「じゃぁ、崩れてる?」

「泣いても良いか?」


「何で?別に悪い意味じゃないよ?」

「何処がだよ」

本当に何処がだよ。



確かに俺は彼等刀剣男子と比べたら随分見劣りする顔をしているだろう。


しかしながら言わせて貰うが、彼等の顔面偏差値が高すぎるだけで俺の顔は至って平均的だ。平均的だと思いたい。

もし仮に俺が不細工だとしても、それをはっきり言いやがるこの近侍は鬼か。鬼畜の所業か。




「俺は好きだなぁ、主の顔」

「成程、B専ってヤツか」


「びーせん?」

「不細工専門。不細工が好きなヤツのこと」

「なにそれー!俺、別にB専じゃないし」

「俺が不細工ってんなら、それが好きなお前は間違いなくB専だ」


「違うし!俺、不細工は不細工でも主の不細工顔が好きなんだし!」

「可笑しいなぁ、好きだって言われてんのに全然嬉しくねぇんだ」


「えぇー、何でぇー!?」

何でじゃねぇよ。

自分の言動を振り返ってみろ、俺が喜ぶ要素なんて何一つねぇぞ。





「何でってお前・・・逆に、自分が不細工って言われたらどうよ」

「は?俺不細工じゃないし」


真顔で返されてちょっとビビった。お前、人に散々不細工と言っといて、反応ソレかよ。



「あー、はいはい。お前は不細工じゃないよ。もしもの話だよ」

「もしもでも主に不細工って言われたくない!」

「お前面倒臭い!」

「酷い!」




書類をまとめていた手はお互い完全に止まっているし、これは今日の執務は確実に長引くな。あまりにも長引くようなら長谷部にでも助っ人を頼もう。

というか、この会話は続けるべきなのか?何が悲しくて苦楽を共にしてきた近侍に不細工を連呼されなきゃなんないんだよ・・・


頭を抱える俺を何故かうっとりした顔で見つめている加州。






「あのね主、俺、主の顔全然好みじゃないけど、すっごい好きなの」

「ふーん」


やっぱりB専じゃねぇのか、コイツ。



「信じてないでしょ!・・・たぶんさ、主だからだと思うんだよね。上手く言えないけどさ、俺、ほんとに主のこと大好きだし。というか、愛してる」

「・・・へー」


「・・・もぉ、何でそんな適当な反応なわけ?俺、傷つくんだけど・・・」

自分の言動を振り返れば理由なんてわかるだろうに、一人勝手にしょんぼりした顔をする加州にため息を一つ。





「さっき不細工不細工連呼された俺の気持ちになってみろよ・・・けどまぁ、ありがとな加州」

「ん・・・」


若干不本意ながらもお礼を言えば加州はこくっと頷いた。頬がほんのり赤く色づき、期待した視線が俺に向けられる。





「ねぇ、主は?」

「・・・・・・」


「主は俺のこと、好き?」

その問いかけに一瞬言葉が詰まる。





「そりゃお前、嫌いなわけないだろ」

「そうじゃなくってさ・・・俺の事、愛してる?」

「・・・・・・」


「言ってよ、主」

お願い、と言いながら加州が俺を見つめ続けている。

答えなければこの時間は終わらない。


俺は大きく深呼吸をし、ゆっくり口を開く。





「・・・愛してる・・・かも」


「ちょっとぉ!かもって何!?」

「うっせぇ!人のこと散々不細工連呼する相手に対して堂々と愛してるなんて言えるわけねぇだろ!」


「主酷い!」

「酷いのはお前だろ!」




結局、加州が「主の馬鹿ぁー!」と泣き出すまでこの言い合いは続いた。








そんな貴方が好き






『かも』とは言ったが、あれだけ不細工を連呼されても加州を嫌えない辺り、やっぱり俺も加州のことを嫌ってはいないのだろう。

ただあれだけ不細工を連呼されて大人しく愛してるなんて言うのは癪だからはっきりとは言わないけど。



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