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僕は超能力者。

超能力者って言っても、物を浮かせたり透視したりとかそういった特別なことが出来るわけじゃない。



僕が出来るのはただ一つ。

相手を『僕と同じ気持ちにする』ことだけ。


例えば僕が楽しいと感じていたら、それを相手にも感じさせることが出来る。

例えば僕が悲しいと感じていたら、それを相手にも感じさせることが出来る。


考えていることを伝えるテレパシーとは違う、ただただ『気持ち』を伝えるだけの能力の使い道は殆どないし、超能力者だなんてバレることも殆どない。

・・・いや、バレてしまったから僕は今此処『霊とか相談所』にて時給300円で働いているわけだけど。



同じく時給300円のモブ君は僕と同じ中学校の同級生で、バレた原因は実はモブ君にある。まさか超能力者は同じ超能力者が見分けられるなんて知らなかった。僕はそんな特殊能力ないし。

バレたが最後。すぐにその話は此処の所長である新隆さんの耳に入り、半ば強制的にこの事務所のメンバー入りを果たした。まぁ、僕の仕事は雑用だけど。だってモブ君みたいな規格外の能力持ってないし。








「ねぇ名前」


新隆さんに剥くのを頼まれたリンゴにナイフを滑らせながら「なぁに」と隣に座っているモブ君に返事をする。

皮剥きなんて、モブ君に頼んだら一発なのに。そうだ、リンゴを全部うさぎさんにしちゃおう。




「名前の気持ちを教えて」

「いいよ、モブ君」


僕が超能力者であることとその能力を知ったモブ君は、時折こうやってお願いしてくる。

リンゴを兎の形にしながら能力を使えば、モブ君が「わぁ」と小さく声を上げた。




「凄いね、何だか胸のあたりがぽかぽかする」

「モブ君と一緒にいるから、嬉しいんだ」


「そうなんだ」

「うん」



よし、リンゴ全部剥けた。

どうせだから一つずつ僕とモブ君も貰っちゃおうかなと思った時、背後からにゅっと腕が伸びてきた。




「おいおい、俺と一緒は含まれねぇのかよ」


「新隆さんは来る度に雑用押し付けてくるからなー」

伸びてきた腕の持ち主である新隆さんはうさぎさんのリンゴを手にニヤニヤと笑っている。



「うさぎかぁー、器用だな名前」

「誰だって出来ますよ」


しゃくっとリンゴを齧る新隆さんを尻目にリンゴを一つ手に取りモブ君の口に近付けた。素直に口を開けて食べるモブ君可愛い。



「モブに頼んだら普通に剥くからな。名前に剥いて貰った方が面白い」

「新隆さん、モブ君に失礼ですよ」

「なんだよ、俺には冷てーなぁ」


とか言いつつ、その顔から笑みを絶やすことは無い新隆さんは「まぁ、お前等の仲が良い証拠だけどな」と僕とモブ君の頭を雑に撫でて自分の席へと戻り新聞を読み始めた。





「僕と名前・・・仲、良いって」

「そうだね」


「今の気持ち教えて」

「いいよ」


モブ君がお返しにと口に運んできてくれたリンゴを咀嚼しつつ能力で僕の気持ちを伝えると、モブ君の顔にほんのりと笑みが浮かんだ。




「嬉しいね」

「うん、嬉しい」


「名前と同じ感情を持てて、嬉しい」


「・・・ふふっ、そっか」

モブ君は僕の能力を好いてくれている。

僕と同じ感情を共有出来るから。


でもね、モブ君・・・




“僕と同じ感情を共有できるから嬉しい”っていうのは、それは僕の感情じゃなくってモブ君自身の感情なんだよ。

まぁ、気付いてないのはモブ君だけだろうけど。








きみのきもち






モブ君の気持ちをモブ君以上に理解している新隆さんは、新聞を読むフリをしてニヤニヤ笑っていた。



あとがき

余談ですが、この主人公の能力は応用次第では結構使えると思うんです。
例えば主人公が『戦いたくない』って思ってたら、その『気持ち』を伝えられるし、例えば主人公が相手に『敵意』を持っていたら、その敵意を他の人にも伝えて相手を一斉攻撃出来ちゃうし・・・
パワーアップさえすれば相手の気持ちを自由自在に操れちゃいそうな、実は怖い能力の持ち主。

主人公もモブ君もそんなことには気づいてないけど、たぶん霊幻あたりは気付いてる。テル君あたりも気付きそう。




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