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僕の同級生に、霊幻新隆という子がいる。


同じクラス。席は遠い。話しかけたことはない。知り合いとも言い難い相手。

そんな相手が、何故か僕の弁当を凝視したまま固まっていた。



今日は運動会。周囲には体育服を着込んだ生徒とその親が和気藹々と昼食を取っている。


僕はと言えば一人普段より少し豪華な弁当を突いていた。

両親は共働きで運動会当日の今日も仕事だった。父親は元より僕に対して興味の欠片もなかったが、母親は少しだけ申し訳なさそうにしていたのを覚えてる。


僕は別に、一人でも構わない。

運動はあまり得意な方ではないし、見せ場なんてないし、どうせ僕が競技をしてたって仕事の電話に夢中になってるだろうし・・・

寂しいと言えば寂しい気持ちで弁当を突いていた僕のすぐ傍に出来た影。顔を上げてすぐに見えたのが、僕の弁当を凝視する霊幻君の姿だった。




無言のまま、じっと見つめられている。



「ど、どうしたの?霊幻君」

「・・・弁当ねぇ」


視線に耐え切れなくなって問いかければ、意外な言葉が返ってきた。

弁当が無い?運動会なのに?



「えっ?親は?」

「運動会だって伝え忘れた」


「・・・・・・」

馬鹿じゃん。すっごい馬鹿じゃん。


ぽかんとする僕の目の前についに霊幻君が座り込む。そのお腹から、ぐーっという音が・・・




「・・・仕方ないなぁ、半分上げるよ」

「は?くれんの?」


くれると言うまで退かないという雰囲気がありありと伝わってきていたのに、何をしらばっくれているのやら。

少し呆れながらも弁当と箸を渡す。



「良いよ。僕、元々小食だし」

「というかお前の親は?」


何の迷いもなく弁当を受け取った霊幻君はがつがつと箸を動かし始めた。全部食べそうな勢いだ。




「仕事で忙しくて来られなかったんだ」

「へー・・・お、うめぇ」


もちゃもちゃと口いっぱいにおかずを詰め込みながら言う霊幻君。

遠慮と言うものを知らないらしく「お茶」と飲み物を催促してきた。まぁ、別に良いけど。

水筒に入った麦茶をコップに注いで渡すと「ん。返す」と入れ替わりで弁当が差し出された。





「・・・わぁ」

返ってきた弁当はおかずだけが綺麗に食べつくされ、真っ白なご飯だけが残っていた。



「お前ん家のかーちゃん、料理うめぇな」

「まぁ、うん。というか遠慮ないよね、霊幻君」


「は?だってお前、半分くれるって言ったじゃねぇか」

確かに、弁当の半分を占めていたおかずは綺麗になくなっている。

さも自分は悪くないと言いたげな顔を見ながら、僕は思った。



この子、きっと碌な道を進まないだろうと。


それと同時に思った。

この子には・・・僕が付いててあげなくっちゃ、と。





「・・・うん、言ったね。まぁ良いよ。ふりかけあるし」

「はぁ!?ふりかけあるならあるって言えよな!もう半分よこせ!」

「はいはい、半分上げるから静かにね」


きっと霊幻君は将来いろんな人に迷惑をかけると思うから、僕がちょっとでもセーブしてあげられたら良いな。

そんなことを思いながらふりかけを白米にかけた。






お弁当を頂戴な







「名前〜、今月客来ねぇ。何か食わせろ」

「師匠、名前さんに食べさせて貰うのもう何回目かわかりませんよ」

「良いんだよモブ君。霊幻、ファミレスで良いなら今すぐ食べに行こうか。モブ君、良かったら君もおいで」




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