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「アンタ、めっちゃヤバイ霊に取り憑かれてるぞ」
突然スーツ姿の知らん男にそう言われた。
コンビニで買ったアイスバーの最後の一口を咀嚼し、もぐもぐと口を動かしていた俺に、男は笑顔で近づいてくる。
ゴミをコンビニ袋に押し込みつつ、無視してその場を去ろうとすれば「まぁ、待て」と男が俺の目の前までやってきた。
「・・・あー、変な勧誘だったらお断りなんすけど」
ぽりぽりと頬を掻きながら言えば、男は「勧誘じゃないぞ」と笑顔のままで首を振る。
「俺はこの近くにある霊とか相談所ってとこの霊能者だ。俺が見た所、アンタに滅茶苦茶ヤバイ霊が取り憑いている!」
「あの、帰って良いですか」
自称霊能者は笑顔で「まぁまぁ、落ち着け」と言う。
もう落ち着いてる。だから帰らせて欲しい。
「俺が暇そうに見えたからって、変なものに勧誘しないでください」
男を押しのけて帰路に着こうとする。
が・・・
「待て!俺が除霊してやる!特別に半額でどうだ!」
物凄く邪魔してくる。
手まで掴まれてしまった。
・・・面倒なのに絡まれてしまったな。
「いや、特に自覚症状とかもないんで・・・」
胡散臭さがはんぱない。
変な宗教への勧誘だったらどうしよう・・・
近所の人とかも、つい最近まで変な宗教に入ってたって噂だし、怖いなぁ。なんでも、最近では更なる宗教に入ったって言うし。
「そう言わずに!俺が手取り足取り・・・」
握られた手に指が絡められて少しぞっとする。
慌てて手を振り払うも、今度は俺の腕を抱きつくように捕えるその男。
「相当ヤバイ霊憑いてる!絶対除霊した方が良い!」
「あの、マジで止めてください・・・」
「いいから!!!除霊しよう!な!?」
なんて押しの強い・・・!
「除霊しないなら、せめてマッサージしてやるから!全身マッサージ!好みのプレイがあればそれも!」
「もうプレイってはっきり言ってるじゃないすか!全身マッサージが怪し過ぎる!!!!」
「じゃぁヤろう!!!」
「開き直って直球・・・!?」
さり気なく自分の腰を俺に摺り寄せてくるところを見ると、相手は冗談ではなくマジだ。
やばい。変な宗教への勧誘とかそんな可愛いもんじゃなくって、まさかの貞操の危機だった。
「なぁ、俺の身体滅茶苦茶にして良いからさ、一発だけお試しでやってみろよ!きっと癖になるから!」
「いやいや、ヤらないですから!!!!」
「安心しろ!性病とか持ってないから!!!だから生で!!!!」
「路上で何言ってんすか!!!」
あまり人通りのない場所と言えど、誰か来たら確実に俺が勘違いされる!!!!
「事務所の方にいろいろ揃えてるから、どんなプレイだって出来るぞ・・・はっ!まさか、俺がまだ知らない新たなプレイとかが御所望か!?仕方ない・・・途中でアダルトグッズ買いに行くか」
「勝手に話を進めないでくれませんか!?」
俺がまるで変な趣味もった変態みたいじゃないか!
「というか何で俺なんすか!」
「俺好みだったからだ!顔も声もドストライクだ。滅茶苦茶にしてくれ」
「おまわりさーん!!!!」
叫ぼうとも男が離れてくれる様子はない。
それどころか更に密着してくる。
「なぁ・・・良いだろ?」
「ま、マジで止めてください」
顔が近い。今にも唇が触れ合いそうだ。
がくがくと震える俺に、男はにやりと笑って・・・
「・・・かーわいいv」
喰われる!!!と本気で恐怖した。
「さ、行こうぜ」
「ご・・・」
「ご?」
「ごめんなさいぃぃぃいいいいいっ!!!!!!」
「あっ!おい!!!!」
男を突き飛ばして俺は全力疾走で逃げた。
あぁっ・・・
もうあんな人に会いませんように!!!
神様は彼の願いを爆笑しながら却下しました
「・・・へぇ・・・名前君、か」
俺はその時気付かなかった。
まさかあの場に・・・免許証の入った財布を落としてしまっていたなんて。
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