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「真司、今日は名前が帰ってくるから、早く帰ってらっしゃいね」





僕の顔に、堪え切れない笑みが浮かんだ。



その言葉を僕がどれほど待っていたか!

学校に登校して、けれど放課後のことが楽しみで楽しみで・・・


ついそわそわしていると、徳川にどうしたんだと尋ねられた。

昔馴染みで親友の徳川は“あの人”のことも知っている。




「今日、名前兄さんが帰ってくるんだ」


つい笑みが浮かぶ。徳川が僕の言葉に驚いたような顔をして「本当か?」と言う。あぁそうか、徳川も名前兄さんのことを慕っていたな。




「今朝お母さんが言ってたから間違いない。帰ってくるんだ・・・この時を、どれほど待ったか!」

嬉しくて仕方ない。今日は早く帰るんだ。兄さんに早く会いたい。




「そうか・・・なら、今日のところは俺に任せてお前は帰ると良い」


「あぁ!すまないな徳川!」

徳川ならそう言ってくれると信じていた。






僕はその日最後の授業もHRも終わると、すぐに鞄を引っ掴んで走り出した。


兄さんに会える!兄さんに会える!

何度かこけそうになりつつも、脚は確実に自宅へと近づく。


そうして、玄関の扉を勢い良く開いて「名前兄さん!」と声を上げた。






「あらあら、真司。そんなに慌ててどうしたの?」

「お母さん!名前兄さんは!?まだ来てないの!?」






「 真司 」






どきりと心臓が跳ねる。


たまの電話でしか聞けない優しい声が、直接耳に響く。

どきどきしながらお母さんの向こう側の人影を凝視した。


人影は僕に近づいてきて、その優しげな顔ににっこりとした笑みを浮かべて・・・!






「ただいま、真司」

「兄さん!」


鞄を放り出して兄さんに抱き付く。お母さんが何か言っていても気にしない。





「兄さん兄さん!会いたかった兄さん!」

「あははっ、真司は甘えただなぁ」



「半年以上も会って無いんだから、あたりまえじゃないか!」



ぐりぐりと兄さんの胸のあたりに顔を摺り寄せれば名前兄さんが声を上げて笑った。




「あははっ!お前みたいな兄想いな弟がいて嬉しいよ。それに比べて、卓哉の出迎えは冷たかったなぁ。まさか『おかえり』しか言ってくれないとは思ってもみなかった」



兄さんが「なぁ?」と後ろに向かって声をかける。

部屋から出てきた卓哉兄さんが眼鏡のフレームを指で押し上げ「ふんっ」とそっぽを向くのがちらりと見えた。





「兄さんっ!僕、兄さんが帰ってきてくれてとても嬉しいです!」

「あははっ!ほら見ろ!真司はとっても良い子だ」


ぎゅぅっと抱き締め返されて顔に笑みが浮かぶ。












名前兄さんが来ている時は、卓哉兄さんは僕に対して何か言うことは無い。お母さんも、お父さんも。

名前兄さんが来ると、何もかもが穏やかになるんだ。


それはきっと、完璧な兄さんが帰ってきて、家族もほっとするからだと思う。



名前兄さんは凄い人だ。昔から何でも出来る人だった。まるで呼吸するようにいろんな物事を覚えて、まるで当たり前のようにどんなスポーツでも出来て、まるで当然のように友達が沢山いて・・・

まさに神室家の“完璧”を体現したような人だった。



完璧なのはその能力だけじゃない。すらっと高い身長に、整った顔立ちはまるで芸能人のよう。見た目だって、兄さんは完璧だった。

そんな兄さんは滅多にこの家に帰ってこない。都会の大手企業に就職して、一人暮らしをしているからだ。



兄さんの仕事は忙しい。寂しいと思っても、電話は滅多に出来ない。

でも今はどうだ?すぐ傍に兄さんがいる。僕を抱き締めて、良い子良い子と頭を撫でて、話しかければすぐに「何だ、真司」と笑ってくれる。


ずっと待ってた。次は何時兄さんは帰ってくるんだろう。今度はどんな風に僕を可愛がってくれるんだろうと。






歳の離れた兄さんは、本当に僕を可愛がってくれる。

お父さんとお母さんが呆れたような声を上げる程、僕を可愛がってくれて、いろんなものから守ってくれるんだ。


そんな兄さんが大好きになるのは当たり前。僕を否定しない、僕の全てを受け入れてくれる兄さんが、僕は大好き。







「真司、荷物を部屋に置いておいで。リビングで待ってるから」

「うん!兄さん」


ぱっと兄さんから離れて放り出されたままだった鞄を引っ掴み部屋に走る。



がちゃん!と部屋の扉を開けて、積んであるゴミ袋の山目がけて鞄を投げて扉を閉める。

中からばふんっという音がしたから、ゴミ袋が上手く鞄を受け止めてくれたことだろう。



すぐにリビングへと走る。

名前兄さん!と声を上げながらリビングに入れば、ソファに座っていた兄さんが「おいで」と手招きをしてくれた。


喜々として隣に座れば、兄さんが「さ!真司の話を聞かせてくれ」と笑う。その言葉にここ半年以上の出来事を話せば、兄さんは「そうかそうか」と笑って頷いてくれる。






「そういえば、徳川が兄さんに会いたがってた。口では言わないけど、アイツも兄さんが大好きだから」

「あぁ、徳川君か。俺も会うのを楽しみにしてると伝えておいてくれ」


「わかった!ねぇ兄さん、えっと・・・」

話したいことはいくらでもある。沢山話したい。けど・・・





「兄さんの話も、聞きたい」

「・・・真司、お前は本当に良い子だ」


兄さんは嬉しそうに笑って、僕の頭を撫でてくれた。

あぁ、やっぱり兄さんが一番好きだ。







きみはよいこ






「今日は一緒に寝ようか、真司」


「名前兄さん!真司は受験生なんだぞ、4時間以上眠るなんて・・・」

「俺が受験生の時は、普通に寝てたけどなぁ。寝不足だとイライラするし、頭がぼんやりして勉強しても頭に入ってこない。そしたらもっとイライラする。たまには、息抜きが必要なんだよ卓哉」


卓哉兄さんの言葉に名前兄さんは困ったように笑いながら言った。




「今日ぐらいは、ゆっくりしよう。なぁ?真司」

おいでと手を差し伸べながら言う兄さんに、僕は笑いながら「うん!」と返事をした。



あとがき

何だか、生徒会長が可愛く見えて仕方ないです。不思議です。
徳川さんと神室さんのコンビが好きです。




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