「カネキ」
「ぁっ・・・○○、どうかした?」
「・・・・・・」
読んでいた体術の本をぱたりと閉じる。
部屋の入口でじっと立っているのは、アオギリの樹に所属する○○。
あまり表情が浮かばない顔と、何処か拙い言葉遣いが印象的な青年だ。
そんな○○の来室に少しならず驚いているものの、それを表には出さず○○の言葉を待った。
じっと僕を見つめていた○○はゆっくりと口を開く。
「自称美食家から聞いた。カネキ、珈琲淹れられる」
「あ、うん。そうだけど・・・」
というか自称美食家とか、本人が聞いたらまた騒ぎそうだ。
○○は僕があんていくに居た頃を知らない。
月山さんの紹介で入ってきた時は多少の警戒もしたけれど、彼自身は特別悪いヤツでもない。良いヤツだと手放しで言えるようなヤツではないけれど。
あまり多くは喋らないし、喋ったとしても拙い言葉遣いで・・・
表情をあまり浮かべないその姿は人形のようで、傍にいて苦になる様な相手ではなかった。
だからだろう。僕は彼といる時少しだけ落ち着くし、彼の事を気に入っている。
「・・・カネキの、珈琲飲みたい」
こんなお願いを聞いてしまうぐらいには。
珈琲をキッチンで用意し始めて気づく。
他のメンバーはそれぞれ出掛けているのか、アジトにはいないようだ。
おそらく○○は、珈琲を飲みたかったが普段淹れてくれる相手が全員出払っていて、消去法で僕に頼みに来た・・・ということだろう。
けれどまぁ淹れ始めてしまった今ではもうどうだって良いことだ。
僕が珈琲を淹れる様子をまじまじと見ている○○に心が少し癒されるのを感じながらも珈琲は完成。
カップを渡せば、○○はふーふーと息を吹きかけてから一口飲んだ。
「・・・美味い」
「そう。良かった」
「カネキが淹れたから、とても美味しい」
少し驚く。
まさか○○からそんな言葉が出てくるとは思わなかった。
僕が淹れたから、なんて。
自然と、○○が僕の淹れた珈琲を飲み様子を見つめてしまう。
こくりこくりと・・・
小さく動く喉。視線は斜め下、カップへと注がれて・・・
「ぁ・・・」
ちらりと僕を見て、珈琲を飲み干した。
「美味しかった」
ぺろりと唇を舐め、普段無表情なその顔にほんのりと笑みを浮かべる。
ただでさえ珍しい言動に加え、珍し過ぎる表情。
「・・・また、飲みたい」
「うん。わかった」
口は自然と、そう返事をしていた。
かふぇかふぇ少年
・・・やっぱり、彼といると落ち着くなぁ。
口元に自然と浮かんでしまった笑みに、僕はしみじみと思った。
あとがき
東京喰種は最終巻以外持ってます。←
最終巻持ってないのに、reの一巻持ってます。←
白カネキ・・・なかなか難しいですね。まだまだ勉強が必要なようです(汗)