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※『残念なイケメン兄』続編



「お兄ちゃん、いい加減気持ち悪いよ」

「ぅッ!!!な、何故だ○○!」

「自覚してよ、お兄ちゃん」



とか、散々口にしてはいるけれど・・・

まぁ別にシリウスお兄ちゃんを嫌っているわけではないわけで。


鬱陶しいけれど愛されている自覚はある。時にその深すぎる愛に悪態を吐きたくなることもあるけれど、まぁ一応は僕も相手を愛しているわけで・・・






「・・・よし」

今僕はキッチンにいる。


傍らにはハラハラした顔をしている屋敷しもべ達。僕が包丁を動かすためにその甲高い声で悲鳴を上げている。正直煩いが、心配してくれているのだから文句は言えない。


僕の手にあるのは昆布っていう海藻。あと、鍋には黒い豆、ボウルの中には少し酸っぱい匂いがするご飯。



僕は今、おせち料理というものを作っている。




よく公園で遊ぶ友達の一人に、片親が日本人の子がいる。

その子の家ではニューイヤーになると毎年おせちというものを食べるらしい。


初めて聞く食べ物に興味を持っていると、その子は親切におせちというものについて細かく教えてくれた。

次の日には作り方のレシピまで用意してくれたのだから、持つべきものは友達である。



そのレシピを屋敷しもべ妖精に渡すだけでも良かったのだが、その時僕は閃いた。

この作ったことも無い難しそうな料理を一人で作ったら、兄はどう思うだろう・・・と。



一人でこれだけ立派な料理を作れたのだ。僕が成長しているということを兄も理解することだろう。


日々兄に付きまとわれている身としては、兄の弟離れの助けになるならばと俄然おせち料理作りにやる気が出る。






当然のことながらシリウスお兄ちゃんには内緒。作ってる途中にお兄ちゃんがやってこないよう、レギュラスお兄ちゃんに足止めをお願いしている。

足止めをお願いした時の嫌そうな表情は忘れられない。嫌そうな顔なのに「・・・可愛い○○のためだし、頑張るよ」と言ってくれたレギュラスお兄ちゃんは普通に良いお兄ちゃんだ。



レギュラスお兄ちゃんのためにも美味しいおせちを作ってあげよう。断じてシリウスお兄ちゃんのためではない。断じて。







「クリーチャー、昆布切ったんだけど、これで良いかな」

キーキー言ってない比較的静かな屋敷しもべのクリーチャーに昆布を見せれば「○○坊ちゃんは何をやってもお上手です」と返された。


レギュラスお兄ちゃんお気に入りのクリーチャーは僕にも優しいけど、アドバイスを貰うにはちょっとなぁ・・・

取りあえず褒められたから「有難う」と言いながら切った昆布を四角いお弁当箱のようなものに詰める。予備があるからと貸してくれた友達には、後日何かお礼をしようと思っている。








「よーし、出来た」

おせちも、ちらし寿司というヤツも出来た。

後は兄さん達を呼んで振る舞うだけ。




「クリーチャー、運ぶの手伝って」

「もちろんに御座います」


恭しく頭を下げるクリーチャーと一緒に料理を運ぶ。

その最中「離せレギュラスぅぅううッ!!!!」と叫ぶシリウスお兄ちゃんの声が聴こえたけど無視した。ごめんね、レギュラスお兄ちゃん。









食卓に並んだおせち料理。

それを見ながら目を瞬かせるシリウスお兄ちゃん。その隣でげっそりしてるレギュラスお兄ちゃん。・・・ほんとごめんね、レギュラスお兄ちゃん。



「おせちっていう日本のニューイヤー料理を作ったんだ。食べてよ」



「○○!まさかお前、包丁を持ったのか!?危ないだろう、言ってくれたら俺が――」

「お兄ちゃん、ちょっと黙って」

黙って食べてよと言えば、お兄ちゃんは「ぅうっ」と声を上げながらフォークをおせち料理へと向けた。


本当は箸っていうものを使うらしいけど、流石に素人には出来ない芸当だから普通にフォークとスプーンを用意した。

フォークに刺さった料理をぱくりと口に入れるお兄ちゃん二人。





「わぁ、美味しいよ○○」

レギュラスお兄ちゃんが微笑みながら言ってくれる。さて、肝心のシリウスお兄ちゃんは・・・




「・・・○○」

「なぁに、お兄ちゃん」



「見直した」

その言葉に内心よし!と拳を握る。このまま、弟離れを――








「まさか○○が俺の為に此処までしてくれるなんて!ますます大好きになったぞ、○○!!!!」







「・・・はい?」


「・・・○○、後は部屋で食べさせて貰うよ」

別の皿におせちを移しながらそう言うとクリーチャーを連れさっさと退室するレギュラスお兄ちゃん。


僕の目の前にはハァハァと息を荒くしてシリウスお兄ちゃん。





「えっと・・・シリウス、お兄ちゃん」

「○○が俺のためにっ・・・あぁ、何て良い弟なんだ!」


何か凄い興奮してる。何かヤバイ。





「○○!やっぱりお前を何より愛して――」

「永遠に黙ってよお兄ちゃん」



僕はデザート用に用意していたお汁粉をお兄ちゃんの顔面にぶっ掛けた。







残念過ぎるイケメン兄







「あっづぅぅうううッ!!!!!」

床を転げ回る兄へ、僕は精一杯の蔑みの視線を送った。



あとがき

『残念なイケメン兄』、とても懐かしかったです。
今回はレギュラスも登場させてみました。ブラコンで変態でストーカーの兄に心底引いてます。

鼻炎もちはやっぱり大変ですよね!
お互い、防寒対策をしっかりしていきましょう!



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