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その光景に、俺はぎりっと奥歯を噛みしめた。


少し離れた場所には黄色い声を上げながら何かに群がる数多の少女達。

その中心、群がられている人物こそ、俺の幼馴染でチャンピオンの○○だ。





今日はバレンタイン。少女達の手にはカラフルな包装が施された可愛らしい箱が握られている。

少女達が○○に群がる理由はただ一つ。その手にある可愛らしい箱、バレンタインチョコを渡すためだ。


少女の群れの中心で無表情ながらもしっかり対応してチョコを受け取っている○○に大きく舌打ちをする。が、それも少女達の黄色い声でかき消された。俺の舌打ちに気付く人間などきっと誰もいないだろう。





・・・確かに○○は格好良い。

必要以上に多くを語らないところはクールで格好良いし、そもそも○○は物凄い美形だし、まぁ人が寄りついてしまうのもわかる。



だが、こればっかりは頂けない。







「おい○○!!!」





耐え切れず、俺は大きな声で○○を呼ぶ。そのまま輪の中にずかずかと踏み込んで○○の腕を掴んだ。



「・・・グリーン」

「今日は俺のバトルに付き合うって約束しただろ!さっさと行くぞ!」


返事も聞かぬまま、周囲からの非難の目は無視して○○の腕を引いていく。



実際はバトルの約束なんてした覚えはない。

それを○○も分かっているはずなのに、何も言わない。俺に腕を引かれるまま無言で歩く。





少女達が見えなくなった辺りで足を止めれば、○○が「どうしたの?」などと聞いて来た。


どうしたの、だと?





「別に?ちやほやされてるお前が癪に障ったから邪魔してやっただけだ」



何時も無駄に無口で生活感無くて俺がいなきゃまともに生活出来ない癖に女にはとことんモテて・・・

このままいけば、コイツは俺じゃない誰かに世話されるようになって、そのまま俺とも・・・





「・・・お前はがちやほやされるのが気に入らない」

あの群がっていた少女達の中には、コイツの生活感の無さを全てカバーできるだけの技量を持った少女もきっといただろう。○○がそういう子を選んで、俺から離れて行ってしまうこともあるだろう。


それが酷く嫌で、だからただ黙って少女達に群がられているコイツがムカつくんだ。

○○は俺の言葉に瞬きをぱちぱち繰り返した後「あぁ」と何か納得したように頷いた。









「嫉妬、したの?」


「なっ!?なわけねぇだろ!自惚れんな!」

突然何を言い出すんだコイツ!




「べっ、別に俺は、お前みたいな生活感ない無気力野郎がモテて俺がモテないのが可笑しいって言いたいだけで・・・」

「うん。何時も有難う、グリーン」


「お、お礼を言ったら許してもらえるとか思うなよ!」





「ところで、今日はバレンタインデーなんだってね。さっきの子達に聞いた」

そう言って「ん」と手を出してくる○○に「は?」と声を上げる。





「あるんでしょ?チョコ」

「な、何言って・・・」



「だからこんなとこまで連れて来たんでしょ?」



真っ直ぐとした眼。普段は無表情の癖に、何だかほんのり笑ってるような・・・





「て、手前なんか知るか!バーカ!」


そう言いながらポケットに入っていた箱を投げつけ、逃げる様に走って行ってしまった俺はきっと情けない。







ビターよりミルクを






後日何とか落ち着きを取り戻した俺が○○の部屋に行けば、○○の部屋にあるはずのチョコの山がなかった。あるのは、昨日俺が投げつけたチョコの空き箱のみ。

「お前、チョコどうしたんだよ」



「返した」

「はぁ!?」



「今年から、本命からのチョコしか食べないことにしたから」


その言葉に俺はついあの空き箱に視線をやってしまった。

ふふっと○○が笑ったのが小さく聞こえる。俺は恥ずかしくなって部屋を飛び出した。



・・・格好悪い。



あとがき

まさかリクエストがバレンタインネタとは思いませんでした。
レッド成代り主は若干無口だけど普通にイケメンだと思います。
は、ハッピーバレンタイン!←



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