「エレン、ちょっと買い出しに行くぞ」
「はい!○○さん!」
元気良く返事をする後輩のエレンに心を和ませながら「よし行こう」と扉に手を掛けた時、“ヤツ”は来た。
「おい○○」
後ろから聞こえたその声を無視するのは容易い。が、相手は仮にも上司だ。無視するわけにはいくまい。
渋々振り返れば、案の定いたのはヤツ――リヴァイ兵長だった。
エレンは慌てて敬礼をするが、俺はしない。ある意味無言の抵抗だ。
エレンはそんな俺に「信じられない!」と言いたげな目線を送っているが、俺にだって理由があるのだ。
「○○、俺が言いたいことはわかるか」
「いえ、わかりません」
「・・・ふぅっ、お前は何時も俺を困らせるな」
大きくため息を吐きながら首を振るその姿に内心いらっとしつつも我慢。何せ今はエレンが見ている。
が、俺は次の言葉でプッツンした。
「妻である俺に無断で他の野郎と出掛けるとは、どういうことだ」
「いや、結婚してねぇよ!!!!何時から手前は俺の妻になった!」
ほら始まった!だから嫌なんだよ、コイツの相手は!!!!
何の嫌がらせなのか、目の前の男は俺に会う度に頭が可笑しいんじゃないか?と疑いたくなるような発言ばかりをする。
元々ハンジ分隊長のもとで働いていたのに無理やりこの班へ引っ張り込まれてからは、更にその頻度が上がった。
「何だ○○、忘れたのか?あれは月が綺麗な夜のこと――」
「いやいやいや、全然覚えねぇよ!何『仕方ねぇな』って顔して語り始めてるんだよ!記憶捏造しようとしてんじゃねぇよ!!!!」
エレンが「えっ、そうだったんですか!?」と声を上げているが、断じて違うからな!
「俺に嫉妬させたいのは十分わかる。安心しろ、俺が愛してるのはお前ただ一人だ」
「勘違いしてんじゃねぇよ、この野郎。というか言った後照れたみたいに顔赤くするのやめろ、キモイにも程がある」
「お前がS属性なのはわかっている。大丈夫だ、お前のためなら俺はドMにすらなれる!」
「人をサド扱いしてんじゃねぇよ!純粋にお前がキモイから言ってんだよ!!!!」
相手が上司だとか、もうそういうのは関係ない。暴言を吐いてでも、この馬鹿兵長の阿呆発言を止めたいのだ。
しかし俺の暴言に反応したのは、兵長ではなくエレンの方だった。
くいくいと引っ張られる服の裾。見ればエレンは顔を真っ青にさせて震えていた。
「あ、あの、○○さん、兵長相手にそんな暴言・・・」
「エレン、ちょっと黙ってろ、今この馬鹿を黙らせて――」
「・・・ほぉ、妻の前で堂々と浮気か。エレン、俺の夫を誑かそうなんて、手前もやるようになったじゃねぇか。オーケイ、わかった。手前を駆逐してやる」
標的はエレンへと移ってしまったらしい。
え!?と声を上げながら兵長を見るエレン。ブレードを向けられていることに気付きさっきより更に顔を青褪めさせたエレンがこちらに助けを求めるような視線を送ってくる・・・が、俺はさっと目を逸らした。
すまないな、エレン!俺はこの馬鹿に絡まれないなら、後輩だって簡単に売るような薄情な男だ!罵ってくれたって構わない!
「覚悟しろ、エレン」
「ち、違います兵長!俺、ただ○○さんと買い出しに・・・」
「ほぉ?○○と二人きりでラブラブな買い物デートか、良い身分になったな、エレン」
「何でそうなるんですかぁぁぁぁあああっ!!?!?!!?!??」
すぐ横に感じる風。兵長がブレードを振るったようだ。
顔すれすれをブレードが霞めたのだろう。兵長の本気を感じ取ったエレンは悲鳴を上げながら外へ逃げて行った。当然、兵長はその後を追う。
「・・・ラッキー」
エレンのおかげで兵長がいなくなった。偶然だが、俺にとっては幸運だ。
「オルオでも誘って買い出し行こーっと」
オルオも良い感じで囮になるからな、と俺はオルオを探しに歩いて行った。
オトリ募集中
「・・・よぉし、オルオ。良い度胸だ、そこに直れ」
「だから嫌だったんだよぉ!お前と買い物なんて!」
「手っ前!俺に一人で買い出し行けって言うのかよ!」
「兵長と行けよ!」
「嫌に決まってんだろ!あの人、すぐに腕絡めたりホテルに連れてこうとするんだからな!」
「憧れの人のそんな姿知りたくなかった!!!!――ぎゃぁぁぁあああッ!!!!!!」
兵長に追いかけられ悲鳴を上げているオルオに合唱をしつつ、俺は無事に終えた買い出しにほっと息を吐いた。
あとがき
リクエストは【強引なリヴァイさんとツッコミスキルのある夢主のほのぼのギャグ】でしたね。
・・・おや?ほのぼのは?←
ギャグと【エレンや他の仲間に嫉妬するリヴァイさんの描写】に集中するあまり、ほのぼのが迷子になってしまいました。本当に申し訳ないですっ!(汗)
こんな駄文ですが、どうぞ貰ってください・・・!