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僕が悪の根元なら、全てが綺麗に治まるの




「ねぇ、ちょっとお話しようか」





僕が笑顔で声をかけたのは、姫乃という女子生徒だった。


「ひっ、な、なぁに?」

弱弱しい声でそう返事をする彼女と、彼女を守るように立つ彼等。


彼等には正直用事もないから、僕は笑みを浮かべたまま彼女を見た。

彼女は「わ、わかった」と頷き、席を立つ。




「おい姫乃!俺達も一緒に――」

「い、いいのっ、私、○○君と仲直りしたいから」


僕は笑みを浮かべて「じゃぁ、屋上に行こうか」と言った。





僕が先を歩くと、彼女がついて来る。

屋上に出れば、空は綺麗な青に染まっていた。





「・・・ちょっと、突然呼び出して、どういうつもり?」


突然、彼女の口から先ほどとは別人のような言葉が飛び出した。

弱弱しそうだった彼女は、不機嫌そうな顔で僕を睨みつけてくる。


ふむ、どうやらこれが彼女の本性なのだろう。

女の子は二面性を持った方がモテるというが、僕には正直わからない。


モブちゃんの方がずっと可愛いし。






「うーん、まぁ、僕が話したいことなんだけどさ」

僕は笑顔で・・・



「っ!?」

彼女の首を掴んだ。



慌てて逃げようとする彼女を押す。

そのまま彼女の背中が肩網にガシャンッと当たり、彼女の口から「ひッ」という声が漏れる。

さて・・・




「取りあえず、どうしてこんなことをしたのか、聞いても良いかな」


何でこうなったのかが全くわからない僕としては、取りあえずは聞いておくべきだと思った。

僕に何かするのは別に構わなかったんだけど、モブちゃんに手を出したのはいけないなぁ・・・



あぁ、腸が煮えたぎりそうだ。

いっそ、この掴んだ首をそのままへし折ってあげようか。


少しギュッと力を入れれば、彼女が「ぅ、ぐっ」と苦しげな声を上げる。

おやおや、これだけで苦しそうにするなんて・・・






「・・・早く話してくれないかな?」


もしかして苦しくて喋れない?

仕方ないなぁ、放してあげよう。


そう思って首から手を離してやる。

手を離すと彼女はゴホゴホッと急き込んだ。




「っ、この・・・」

しばらくはがたがたと震えていた彼女だったけど、突然僕をぎろっと睨んだ。


その顔は、僕を暴行する彼等の言うような可愛らしい顔ではなかった。

どちらかと言えば、般若のような・・・なんというか、恐ろしい形相だった。


これで愛されてるなんて、なんて言う冗談だろうか。






「っ・・・アンタが全部悪いのよ!!!!私が愛されるためのストーリーだったのに、アンタみたいなのがしゃしゃり出てるせいで私がなかなか愛してもらえない!!!!!愛されるのは私!アンタじゃないのよ!何のために、私はこの世界にトリップしたと思ってるの?!折角愛され設定も付けてもらったのに、ちゃんと愛されなきゃ意味じゃないじゃない!!!!!奪おうとしたアンタが悪いのよ、私は全然悪くないのよ!そうよ、悪いのはアンタ。私は違う。だから、死ぬべきなのはアンタで、私じゃな――」

「あぁ、うん。もう良いよ、わかったから」



彼女の話を止める。


話を聞いて、何となくわかった。

なるほどなるほど、わかったわかった。

霊幻も言っていたじゃないか・・・








「――さよなら、悪霊さん」







僕はにっこり笑って、彼女を強く押した。

錆びた柵はガシャリッと音を立てて、彼女の身体を外へと出す。


柵の向こう側へ落ちていく彼女。





「――ッ!!!!!!」

恨みがましい目でこちらを見つめながら何かを叫んだ彼女は、真っ逆さまに下へと落ちていく。


けれど、地面にぶち当たるその前に・・・消えた。




そう、消えちゃったんだ。

死体もなにもない、跡形もなく。


あぁ、やっぱり悪霊だったか。

そう思いながらクスッと笑う。



さて、除霊は出来たし、もう此処に用はな――










「○○っ!!!!」

突然、屋上に声が響く。


振り返ってみれば、何人かの生徒が息を切らせながらそこに立っていた。




「すまないっ、俺達は今までお前にとんでもないことを・・・」

「頼むッ、また部活に戻ってきてくれ!」

「俺達にとってお前は必要なんだ!」

「許してくれ――」



土下座の勢いでそういう彼等。



「ぇーっと・・・」

んー、何と言えば良いのか・・・











「――君達、誰?」












「ッ!?!!!?!??」

驚いた顔をする彼等。


そんな顔をされても困る。



「そんなっ・・・」

「へ、変な事言うなよ○○っ!!!!」

「許してくれよっ、また一緒に部活やろうぜ!」

「また一緒に試合してくださいよ、先輩っ!」

「何でそんなこと言うんだよぉっ!!!」


そう言って泣き叫ぶ彼等にドン引きする。



何やってんだろ、この人達。

そう思いながら、僕は「何でも良いけど、僕もう行くよ」と言って屋上を後にした。





ふーむ・・・

それにしても、変な人たちだったなぁ。


突然騒ぎ出して泣き出すなんて。演劇部か何かかな?

あ、そう言えばもう放課後じゃないか。そろそろモブちゃん達のところに行こう。


僕は“帰宅部”だし、こうやって放課後のんびりできるって良いよねぇ。





「んー。お菓子でも買って行こうかな」

そうすればモブちゃんも霊幻も喜ぶだろうし。


綺麗な青空の下で商店街を歩くのは、さぞ心地良かろう。



僕は鼻歌交じりに、昇降口へと歩いて行った。



(要らないことは本気で忘れちゃうの)



END
あとがき




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