素敵に無敵じゃなくて、素敵に無能だよね。
気付いたことがある。
「○○君っ、ぁ、あの・・・此処、教えてもらっても良い?」
「えー?今、リヴァイに教えてる最中だから、また今度にしてくれよー」
「ぇ、ぇと・・・○○君っ!次の演習、一緒に組まない?」
「リヴァイと組むから無理」
コイツはモテる。
変人だ変人だと言われているコイツが何故こうもモテるのか。
確かにルックスは良い方だろう。知識も力もある。
だが変人だ。
変人という部分がコイツの全てを潰している。
それでも女にモテるなんて・・・女の感性なんてわからねぇが、女にはコイツが輝いて見えるのだろう。
コイツがモテることは俺にとってどうでも良い。
だが・・・
「手前・・・俺の名を断る理由に使うな」
ガッとアイツの頬をつねって引っ張る。
「痛い痛いッ!?リヴァイっ!ほっぺの肉が千切れる!!!!」
「そのまま千切れろ」
ギューッと引っ張ればアイツの目が次第に涙目になる。
俺はチッとため息を吐いて頬から手を離した。
赤くなった頬を抑えながら「突然酷いぞー」と言うコイツ。・・・今度は本気で引きちぎってやろうか。
「そもそも、何でお前は俺に付きまとう」
「え?だって、リヴァイと一緒にいるの楽しいし」
・・・特に楽しいことをした記憶はない。
殆どはコイツが勝手に馬鹿なこと喋って俺が無視して・・・
「・・・やっぱお前変人だ」
「よく言われる」
へらへら笑って、何が楽しいんだか俺には理解できねぇ。
コイツは周りに変人だのなんだの言われても全く気にしないだろう。
それどころか、コイツが他の奴等のことをきちんと覚えているかも曖昧だ。
「それに、ほら」
突然、にっと笑って胸を張るソイツを「あ?」と見る。
「俺、リヴァイの恋人だし。非公認だけど」
「死ね」
「痛い!」
思いっきり腹を蹴ったはずだが、コイツは何とか持ちこたえた。
・・・チッ。無駄に丈夫な身体しやがって。
「リヴァイ酷い〜、どんどんリヴァイが俺に対して暴力的になってる気がするー」
「手前が馬鹿なことばっか言うからだろう。少しはその口をどうにかしろ。縫うぞ」
「わぁ・・・リヴァイの目がマジだ。俺、口を縫われちゃう感じ?」
ささっと口を隠すソイツに舌打ちをする。
「まぁ、俺が何も言わなくても俺が言いたいことをリヴァイが理解してくれたら、俺はもう喋る必要がないし、縫っても良いけどさ」
「・・・おい手前、俺以外と一生喋らない気か」
「ん?だって必要ないだろ?」
「・・・お前、変人通り越して奇人だ」
そもそもコイツと喋ってまともな会話が成立するとは、きっと此処にいる訓練兵たちの誰も思ってはいないだろう。
コイツと喋ると疲れる。
何故ならコイツは変人で馬鹿で、会話なんて成立させる気さえないのだから。
以前俺に、一人の訓練兵がこういった。
『リヴァイは凄いよなぁ・・・あんな変人、喋ってるだけでこっちの気が滅入る。下手したら、気でも狂いそうだ』
気が狂いそうとまでは思わないが、気が滅入るのは俺だって同じだ。
まったく・・・
「リヴァイのその眉間のしわ、何本か気になるなぁー。数えて良い?」
「止めろ」
こっちに伸ばされてきた指を逆方向に曲げれば、○○は瞬時に「すみません」と謝ってきた。
やっぱりコイツは馬鹿だ。
「・・・もう少し自分を見直したらどうだ、馬鹿」
「俺の名前は馬鹿じゃないぞ〜」
そう言いながら「んー」と考え出す○○は、しばらくして「あ!」と手を叩いた。
「そんなの簡単だ、リヴァイ!」
「・・・言ってみろ」
「うん。俺ってさ――」
ソイツの次の言葉を待つ。
まぁ、どうせ・・・碌な事言わないだろうがな。
「素敵に無敵じゃなくて、素敵に無能だよね」
「・・・よく自分のことがわかってるじゃねぇか」
俺の言葉にアイツはパッと明るい笑みを浮かべて・・・
「自己分析は得意な方なんだ」
そんな馬鹿丸出しの言葉を口にした。
(彼は麗人でした)
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