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表に出ろ。俺は出ないが。




出たこともなかった。

出ようとも思わなかった。


王都の地下は無法地帯だったが、別に俺は生きていけた。



別に大きな夢を抱いていたわけでもない。

別に地下でこの一生を終わらせたって特に気にしない。


そう思っていた俺だったが・・・



突如として転機が訪れた。





ある日、俺が出会ったエルヴィンとかいう調査兵団の人間。






『調査兵団に入らないか』






物好きな男だと思った。

男の言葉には何度も断ったが、全く持って外に興味がなかったわけではない俺を奴は言葉巧みに説得した。


半ば強引に地下から出た俺は、一番最初に目に入った物に驚いた。




俺は初めて青空を見た。




空はこんなに綺麗なのかと驚いた。

それと同時に、自分の外見が実に汚れているのかを思い知った。


きたねぇ・・・と、そう呟く俺にエルヴィンは笑って『じゃぁ風呂にでも入れば良い』と言った。




地下から出たからと言って、すぐに調査兵団に入れるわけではないらしく、俺は訓練兵として三年間学ぶことになった。

最低限の読み書きをエルヴィンから学んだが、まだまだ完璧ではない。



訓練兵には俺と同世代の人間が沢山いた。


どいつもこいつも、地下に居た奴等よりもずっと恵まれた見てくれをしていた。


そんな奴等の中じゃ、俺は随分と小さく貧相だったのだろう。







「おい、チビ」

「おいおい、止めてやれよ」

「お前、リヴァイっつったっけ?そんな小せぇ身体で、訓練付いてこれんのかよ」



ギャハハハハッと下品に笑う餓鬼共。

こんな奴等、相手にするだけ無駄だな。


俺はソイツ等を無視して、立体機動について書かれた本を読み始める。





「ッ!この野郎・・・」

それが相手の癇に障ったのだろう。


俺が座っていた椅子を考えなしに蹴りやがったソイツのせいで、俺はさっと椅子から降りる。




「貧相で弱そうな癖に、無視してんじゃねぇぞ!」



所詮は餓鬼の癇癪程度。

こちらを睨みつけてくる餓鬼共。


エルヴィンからはあまり問題を起こすなと言われているが・・・





ちょっと躾が必要なようだな。











「――なぁ」




突然俺の背後から声が聴こえた。



「!」


驚いた。

気配も全くしなかった。


俺が驚いていると、俺に絡んでいた奴等も心底驚いた顔をしていた。






「げッ・・・“変人○○”だ」


変人○○?



俺が見た○○とかいうヤツは俺よりもずっと身長の高い・・・けれどひょろっとしたヤツだった。




「お前等、今俺の事馬鹿にしたろ」

何の前触れもなく、突然そう言った男に俺は内心「・・・はぁ?」と思う。





「し、してねぇよ!」

「何勘違いしてるんだよ!」


餓鬼共がゆっくりと後ずさる。




「いや、絶対したね。お前等、俺のことを『貧相で弱そう』って言っただろ」

「それはお前じゃな――」



「いいや!俺に言ったんだ!絶対にそうだ!そうとしか考えられない!!!!」


まるで安い役者のように高らかにそういった奴に餓鬼共だけではなく俺もドン引きした。





何なんだコイツ。

突然現れて、場の空気を完全に壊しやがった。




「よし。馬鹿にされたら男としてすることは一つだ」


ソイツは着ていたカーディガンをバサッ!!!と脱ぎ捨てて言った――










表に出ろ。俺は出ないが










・・・その場の空気が大分シラケた。

こちらの様子を何事かと伺っていた野次馬共も、今の奴の台詞でシラケたのか、その場を離れていく。


餓鬼共も顔を引き攣らせながら「やっぱアイツ変人だ」と言いながら去って行った。





「ん?何だ何だ、突然静かになったな」

ソイツはへらへら笑いながら「何でだろー」と言っている。


コイツは変人と呼ばれているらしい。確かにコイツは変人だ。

けれどそれより・・・






「ん?お前は誰だ?」



あぁ、なるほど・・・




「手前が馬鹿か」

「よくわかったな」


キリッとした顔で言うソイツは俺に手を差し出す。



「俺は○○。お前は?」

「・・・リヴァイだ」


一応、自己紹介だけはしておこうと自分の名を口にし、ソイツの手を握らずにその場を去った。





(彼は変人でした)




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