消えてしまえばいいのに
全てを諦めていた。
病室の窓の外の世界は色とりどりなのに、俺がいる病室は白が犇く、実に味気ない世界だった。
ただただ自分の無力さに失望して・・・
周りの人間はそんな俺を見て、皆『頑張って』『大丈夫だから』というんだ。
これ以上、どう頑張れというんだ。
何がどう大丈夫なんだ。
それがわからなかった。
ただただ、自分より幸せそうな人間を見るのが辛くて辛くて仕方なかった。
こんな俺は醜いだろうか?あぁ、きっと醜いのだろう。
「○○・・・」
「リーマス、か」
俺しかいないはずの病室に響いたもう一人の声に、俺はそっと名を呟く。
何時頃からだったか、その少年は俺の病室にやってくるようになった。
何度も何度も薬を飲んで、それでも治る事が無かったこの病気に、俺は毎日絶望していた。
何時死んでも可笑しくないこの身体。
だから、このリーマスという少年の気配に気付いた俺はその少年こそ“死神”だと思った。
今だって、もしかすると・・・と思ってしまうときがある。
けれど、そんなのどうでも良いのとだ。
俺はいずれ死ぬ。
そう遠くない未来に、息絶えるんだ。
相手が死神だろうがそうじゃなかろうが、どうでも良いんだ。
相手が自分はリーマスだと名乗って、俺はその名を気まぐれに呼んでいる。
ただただ静か過ぎるその病室に、毎晩のようにやってくるリーマスは、俺の唯一の話し相手と言っても良いだろう。
けれども、俺の心にあるポッカリとした穴は埋まらない。
ただただ淋しいばかりで・・・
こんな俺なんて・・・
「消えてしまえばいいのに」
どうせ、邪魔なだけな命なんだから。
ギュッ
「・・・?」
俺の呟きを聞いたリーマスが、突然俺の腕を掴んでくる。
その顔は酷く悲しそうで・・・
「消えないでッ・・・」
切なるその声に、俺は何も返事はしなかった。
返事の言葉が見つからなかった。
お前は死神なのか?
そう思っていた相手に、消えないで欲しいと言われる。
その可笑しな状況下で、俺は・・・
「・・・無理な話だよ」
「・・・ッ」
それだけ言って、顔を背けた。
もう無理なんだ。
俺は・・・
きっと、何時消えても可笑しくない。
だったら、せめて・・・
これ以上、俺の心が、幸せな人間に対して膨れ上がる嫉妬で穢れないうちに、消えてしまいたいんだ。
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