真夜中の電話
〜♪
最近携帯に入れたばかりの音楽が鳴り響き『あぁ電話か』と俺は手を止める。
燐のことだから、明日も宿題忘れてるだろうなぁ・・・とか思いつつやっていた宿題は、残り僅か。
シャーペンを置いてから携帯を手に取ると、表示されているのは恋人の名前。
時計をちらりと見れば、結構遅い時間だと気付く。
こんな時間に燐がメールではなく電話をしてくるなんて珍しい。
「もしもし?」
《ぁっ!ぇ、ぇと、お、奥村燐だけど・・・》
慌ててフルネームを口にする燐に小さく笑いつつ「うん。こんばんは」と声を出す。
《ぉ、おぅ。あ、あのさ・・・》
「ん?どうした?」
《ぃっ、今忙しかったか?》
あぁ。なんだ、そんなことか。
「大丈夫。宿題やってただけ」
《宿題?》
素っ頓狂な声を上げた燐。
「クスクスッ。燐、また宿題の存在忘れてただろ?」
《わわわわわわわ、忘れてねぇよ!!!!!》
いやいや。その慌てようは、明らかに忘れてたな。
「終わりそう?」
《ぅっ・・・》
「まぁ、とりあえずは自分の力でやって、出来なかったところは、明日俺が学校で見せてやるから」
《さ、サンキューな!○○!!!》
パァッと目を輝かせている燐が簡単に想像できた。
喜怒哀楽がわかりやすい燐だからこそ、鮮明に想像できる。
「で?何か用事でもあったのか?」
《ぇっ!ぇと・・・》
こんな夜中に電話してきたのだから、何か理由でもあったのだろうけど・・・
《そ、その・・・ぇと・・・》
焦ったような燐を急かさず、黙って聞く。
《こ・・・》
「こ?」
耳を澄ませる。
《声・・・聞きたくて・・・》
ピシャァァァアアアンッ!!!!!!!!!
俺の脳天に雷が落ちたような衝撃!
「か、可愛い!!!!!!」
《っ!?か、可愛いとか言うんじゃねぇよ!!!!!》
「いやいやいや。可愛いって!何なの燐!可愛すぎる!!!!!」
ダンダンッ!!!!と机を叩きそうになるのを押さえつつ、緩みきった口元をキュッと戻す。
「俺も、燐の声聞けて嬉しいよ」
《〜〜〜っ・・・そ、そっか》
へへっと燐が小さく笑うのが聞こえた。
《――》
「ん?」
《ぁ、やべっ!雪男だ。じゃぁな、○○!》
どうやら、弟君がやってきたらしい。
むぅ・・・やはり、壁は弟君か!
燐が慌てているのが、電話越しのガタンッとかバタンッとかいう音でわかる。
燐・・・慌て過ぎだろ。
軽く俺は苦笑を浮かべつつ、
「ん。おやすみ、燐」
《ぉ、おやすみ!》
電話越しだけど、燐が嬉しそうに笑っているのが目に浮んだ。
ピッと切った電話。
「さて・・・」
残った宿題を終わらせるために、俺は再びシャーペンを手に取った。
真夜中の電話
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