原稿用紙10枚分のラブレター
「んー・・・」
「どうしたんだよ、○○」
燐の美味しい弁当を食べ終え、二人でのんびりとしていた俺は、唐突に唸る。
そんな俺に不思議そうな目を向ける燐に、俺は軽く笑った。
「んー?ぁー、いや。この間、国語の宿題で作文出ただろ?」
「は?」
「え?」
俺と燐の間で、変な沈黙が出来る。
「・・・もしかして燐、作文の存在、忘れてたのか?」
「そそそそそそそそそ、そんなんじゃねッ――」
「はいはい。忘れてたんだな」
明らかに動揺している燐に苦笑しつつ「大丈夫。提出は来週だから」と言う。
一週間もあれば、作文は出来るだろう。きっと。うん、多分。
「そ、そっか」
やっと安心した顔をする燐は「それで、その作文がどうしたんだよ」と聞いてくる。
俺は「いやぁ・・・」と頭を掻きながら、視線を漂わせた。
「俺、作文苦手なんだよなぁ。何書けば良いのかわかんねぇし、書きたいものじゃないと、全然手が進まねぇんだ」
「へぇー」
「やっぱり、作文と言えば、読書感想文とかかなーって思うけど、生憎俺は、あんまり本読まないからなぁ」
「ぁっ!わかるわかる」
笑いながら頷く燐を見ながら、俺は一つ思いつく。
「あ。燐へのラブレターなら、いくらでもかけるぞ?」
「なッ!?!!!?!??!!!?!?ぃ、いきなり何言ってんだよッ!!!!!!!」
顔を真っ赤にして声を上げる燐を見ながらケラケラと笑う。
毎回のことながら、反応が面白い。
「か、からかうんじゃねぇよ・・・」
少しむすっとした顔をする燐に「本心だからさぁ」と笑いかければ、もっと赤くなった。
「そうだ。作文、燐へのラブレター書こうか?」
「ばッ、馬鹿じゃねぇの!?」
「ハハッ。俺、燐へのラブレターなら、軽く10枚は提出できるな。いや、それ以上かも」
「〜〜〜ッ、ば、馬鹿○○っ!」
腕をバシバシッと叩かれる。
「じ、地味に痛いぞ、燐」
「わっ、わりぃ」
慌てて謝る燐に「いや、謝るほどじゃないって」と首を振る。
「今度、燐にラブレター書こうか?」
「や、止めろよっ・・・は、恥ずかしいし・・・」
語尾を小さくして軽く下を向く燐。
耳まで真っ赤だ。
「可愛いなぁ、燐は」
「か、可愛いとか言うんじゃねぇよ!!!!!!!」
「・・・マジで作文、燐へのラブレターにしようかな・・・」
「・・・本気で止めろよ」
軽く本気で考えてしまった俺に、燐は珍しく真剣な顔で言い放つ。
「ははっ!!!!!!じゃぁ、作文は適当に環境問題についてでも書こうかな」
「最初からそうしろよ!」
「ハハッ!!!!燐は反応が面白いから、楽しいよ」
「ぅーっ・・・馬鹿○○」
燐は終始真っ赤になりっぱなしだ。
嗚呼、楽しい。
「俺、燐といるときが一番楽しいからさ」
「!・・・ぉおお、俺、もっ」
「ありがと、燐」
「ぉ、おぅ!」
パァッと嬉しそうな顔で返事をする燐があまりにも可愛くて、
ついついその頬にキスをした。
・・・瞬間、恥ずかしさのあまり燐が俺の腹を殴ったことを、追記しておこう。
原稿用紙10枚分のラブレター
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