泣き落とし
「燐!今度一緒にデートしよう!」
昼休み、燐の弁当のおかずを横から摘みながら、俺はそう言った。
「なッ!!!!と、突然なんだよ・・・!」
カァッと顔を赤くする燐に、俺はへらっと笑った。
「だって、恋人になってから一緒に出かけたことないじゃん」
「こここここ、恋人ッ///!?」
「え?違うの?俺と燐、恋人じゃないの?」
「〜〜〜ッ///!!!!!こ、恋人じゃないッ、わ、わけじゃ・・・なぃ」
「じゃ、恋人じゃん。やったね。俺幸せ」
笑いながら燐の頭をぐりぐり撫でれば、燐は真っ赤なまま押し黙った。
嗚呼、可愛い。
「それにしても、燐の弁当は何時も美味しいなぁ!」
「そ、そうか・・・?」
パァッと嬉しそうな顔をする燐に、俺は満面の笑みを浮かべて「おぅ」と返事をする。
「そ、そっか・・・///」
〜〜〜ッ!!!!!!!
かぁわぁいぃぃぃいいいいいいいいいいいッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!
照れたように顔を赤くしながら笑う燐が可愛すぎて仕方ない。
表情豊かな燐を見てると、こちらはとても楽しくなる。
嗚呼、本当に楽しいんだ。
「そうだ!燐、明日の俺の弁当、作ってきてよ!」
「は、はぁ!?な、何でだよっ!!!!」
「え?そりゃ、燐の弁当食べたいし」
それに、燐の弁当を何時も摘ませてもらってるけど、そのせいで自分が食べてるパンが物凄く貧相に感じてきたんだ。
「ゆ、雪男の分も作ってんだ。ぉ、お前の分作ってる余裕なんてねぇよ!」
「えぇー?」
雪男って言ったら、燐の弟だ。
まだ、片手で数える程度しか顔を合わせたことが無いが、しっかりした子だった気がする。
・・・むぅ、越えなければならない壁は弟君か!!!!!!!
しかし・・・燐に弁当を作ってもらえないのは、実に切ない。
「・・・燐は、俺なんかどうでも良いんだ・・・」
「は・・・?」
プランBだ!!!!!
「うぅっ・・・ぉれの弁当なんか、作りたくないんだ。そうなんだ・・・俺ッ、燐に嫌われたのかな・・・」
わざとらしくその場で体操座りをして、じめじめとした雰囲気を出す。
や。別に嫌われたって思ったわけじゃないけど、燐はこうやって泣きまねすると――
「ぅッ・・・べ、別に作りたくねぇわけじゃねぇよ!!!!!き、嫌ってなんかねぇし!!!!!」
慌ててそう言うんだ。
うん。単純なところも可愛いぞ、燐。
「マジ?やった!!!」
「うわ!?ぉ、お前、嘘泣き・・・!?」
「当ったり〜!単純で可愛いなぁ、燐!」
「○○ッ・・・!!!!!」
ガシッと髪の毛を掴んでくる燐。
ちょっ!
「痛い痛い痛いッ、燐、髪が抜ける!!!!」
「はげろ!」
「はげません!!!!!!」
この歳でハゲになるとか、マジ勘弁!!!!!!!!
「ごめんって、燐!けど、燐の弁当食べたいのは本気だから!!!!!!愛妻弁当万歳!!!!!!」
「ぁッ、愛妻ッ・・・///!?」
燐は一瞬にして真っ赤に顔を染め、俺の髪を掴んでいた手を緩める。
その隙に髪を整え、俺は「そう!愛妻弁当!」と笑った。
その後、ずっと燐が真っ赤で、面白かった。
泣き落とし
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