幸せって何色かな
僕の好きになった人は、とても儚い人だった。
夜中になって、僕はそっとホグワーツの寮を抜け出す。
ホグワーツから一番違いマグルの街には、大きな病院があるんだ。
ジェームズに透明マントを借りて、箒や煙突飛行を使ってそこへ行く僕。
たどり着いたその病院に侵入するのはあまりに簡単で・・・
「・・・・・・」
さっと、好きな人がいる病室まで歩く。
もう何回もそこに足を踏み入れた。
だからこそ、こんなにスムーズに足が進む。
明かりがほとんど消されている病室の中で、小さく聞こえる音。
その音のする病室を、そっと覗きこんだ。
薄暗い、一人用の病室。
そんな淋しい部屋の中にいる一人のマグルに、僕は恋してた。
「ゴホッ・・・」
酷く苦しそうな咳が聞こえた僕は、たまらなくなって「○○・・・」と姿を表す。
「あぁ、今日も来たんだね、リーマス」
「・・・ぅん」
彼は僕がこうやって毎晩やってくることを知ってる。
けれど、僕が何処からやってくるのかは知らない。
「○○・・・体調は、平気・・・?」
「さぁ・・・どうだろうね」
前よりも顔色が悪くなった彼に、僕の胸がツキンッと痛くなる。
ホグワーツでの休日。・・・ジェームズたちと一緒に、マグルの街を探検しようということになった時、偶然窓から外をボーッと眺めている彼を見つけた僕は、どうしても彼を忘れられなかった。
最初の何日かはただただそっと眺めて、
そしてある時、彼は僕の存在に気付いた。
――死神?もう、俺を迎えに来たの?
とても儚げな声でいう彼に、僕はいてもたってもいられなくなって・・・
違うよ。僕は死神じゃないよ。
そういいながら姿を現した。
あの時の彼は「そう・・・」とだけ言って、僕が本当は何者かということを問いただすことは無かった。
今だってそう。
僕はこの病院に黙って侵入してる。
それを彼は全然不思議そうにしない。
ただただ、真っ暗な病室で苦しそうに咳をしているだけ。
それがとても苦しげで、悲しげで・・・
「○○・・・ぁのね」
「リーマス」
「・・・?」
何か言葉がかけられないかと模索していた僕の名前を、○○が呼ぶ。
儚げな笑みを浮かべた彼は、そっと僕に尋ねるんだ。
「幸せって何色かな」
真っ暗な部屋の中での呟きは、
まるで自分は幸せの色なんて一生わからないとでも言いたいかのようで・・・
僕はとたんに苦しくなった。
「・・・わからないよ、僕には」
そう答えることしか出来ない僕は・・・
どうしようもない愚か者なのかな。
苦しいよ。
苦しんでいる彼を、助けられないことが苦しいよ。
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