おやすみ、また明日
昨夜の電話での言葉通り、○○が学校に来ていた。
周りの人間が「おぉ!復活じゃん!」と言っている中、○○も笑顔で「おぅ」と返事をしていた。
沢山の友人に囲まれている○○が、僕を見て近付いてこようとしたけれども、それも周りの友人によって阻まれてしまっていた。
まるでアイドルか何かのように周りから声を受ける○○の口に浮んでいる苦笑。
そういえば、此処最近・・・
僕は電話でしか○○に言葉を貰ってない。
結局、今日の学校ではまともに会話も出来なかった。
ただ一言・・・
――『ただいま』
○○が僕の近くを通り過ぎるときに、小さく言ってくれた言葉が、胸に沁みこんだ。
プルルルルルルッ
真夜中、電話がかかる。
もう、緊張しなかった。
ガチャッ
「もしもし」
《・・・・・・・・・》
「・・・?」
電話の向こうからは、何の声もしなかった。
間違い電話?悪戯電話?
そんなことを思って受話器を置こうと耳から離しかけた時に・・・
《俺だけど・・・》
やっと声がした。
慌てて耳に受話器を戻す。
《・・・・・・・・・》
「・・・何なんだ?」
普段とは打って変わって、全然喋らない○○に、僕はどうすれば良いのかわからない。
「学校に来ていたな」
《・・・・・・・・・》
「周りが喜んでいたぞ」
《・・・・・・・・・》
「風邪が治ったからと言って、はしゃぎすぎるなよ。またぶり返したら厄介だからな」
《・・・・・・・・・》
喋らない○○の代わりに僕が喋る。
けど、返事は無い。
虚しくなっていくばかり。
「・・・何とか言ったらどうだ」
《・・・・・・・・・》
「悪戯電話のつもりなのか?」
普段の活発そうな声が聞こえない。
どんどん不安になってきた。
「な、にか・・・喋ってくれ」
そうじゃないと、この沈黙が辛すぎる。
《言いたいこと、あるんだ・・・》
「・・・?」
言いたいこと?
《その、さ・・・》
電話越しの○○が、小さく咳払いした。
《俺、此処何日か・・・ずっとセブルスに電話かけてた、じゃん・・・?》
「・・・そうだな」
《ぁー・・・迷惑だったか?》
迷惑?
そんなわけがない。
《その、何と言うか・・・》
「早く、言ってくれ」
そういいつつ、僕の心臓はドキドキッと煩かった。
次の言葉が、僕の望む言葉でありますように・・・
あまり信じているわけでもない神様に願った。
《セブルスのこと・・・好きなんだ》
好きが、電話越しに伝わった。
言葉が出ない僕。言葉を発しない○○。
電話の中の沈黙が、とても長く感じた。
《め、迷惑・・・だった?》
「めっ、迷惑じゃ、ないッ・・・そ、その・・・」
《そっか・・・良かった・・・》
電話越しに、○○がほっと息をついた。
《電話ぐらいだから。俺がセブルスとまともに話せるの》
嬉しそうな声。
《けど、今度からは・・・学校でも、もっと話したいよ。セブルスと》
「ぁあ・・・」
嬉しくて、胸をギュッと押さえる。
《おやすみ、また明日》
「・・・あぁ」
ゆっくりと受話器を置く。
「・・・っ///」
明日・・・
学校で、まともに○○としゃべれるか、ちょっと不安だった。
END
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