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- ナノ -
「な、ナイスおっぱい」
初めてナマエがジョセフを見た時の言葉だ。
ナマエは優秀な男だ。
手術を無事に済ませ、訓練にも真面目に取り組み、その実力はみるみる高め・・・
そんな彼はある日、一人の女性と共に歩いていた。
同じく手術を受けていた女性で、純朴で優しい女性だった。
そんなナマエと女性は、正面から歩いてくる“彼”をその眼で捉えた。
ジョセフ・G・ニュートン。ランキング1位の男である。
ナマエが冒頭の馬鹿な言葉を口にするその横で、一つの変化が起こっていた。
隣にいた女性――ナマエにとっては最愛の婚約者がジョセフのことを好きになってしまったのだ。
その日のうちに婚約は解消。ナマエは一瞬にして愛する人を失った。
けれど、ナマエはジョセフを恨まなかった。
恨んでも良い相手だったはずだ。
愛する人の心を奪われてしまったのだ。恨みの一つや二つ、あっても良かったはず。
元々、常人より少し頭のネジが緩い子だったそうだ。
柔軟な考えと言えば聞こえは良いが、何処か抜けたようなことばかり口にするのが彼だった。
「この馬鹿!!!」
「うわっと!?」
彼の唯一無二の友人であるミッシェルはそんなナマエの頭をしばいた。
思いっきりしばかれたナマエはくらくらする頭を抑えつつもその口元に笑みを浮かべる。
「あははっ、仕方ないよぉ。あんな良い男なら、誰だって惚れちゃうって」
「馬鹿!何故お前は悔しがらない!!!盗られたんだぞ!?」
「別にジョセフさんは何もしてないって。彼女が一目惚れしちゃっただけ」
「じゃぁ女の方を責めろ!その日のうちに婚約解消?お前がどれだけあの女に尽くしてきたと思ってる!!!!」
ミッシェルは知っている。ナマエが婚約者だった女性のためにこれまで何をしてたかを。
ナマエは誠実で、これまで婚約者を悲しませるようなことは一切なく、限りなく彼女に尽くしていた。悪いのは、誰が見ても婚約者の方。
けれどナマエは・・・彼女の裏切りを笑顔で受け入れる。
「確かに彼女とは長い付き合いだったけど、彼女の人生なんだから、好きにさせてあげないとー」
「お前の人生でもあっただろう!後少しで結婚・・・もう家も買ってあったんだろう?」
自分の事のように怒ってくれるミッシェルが嬉しかったのだろう。ナマエはぽんっとミッシェルの頭に手を置いた。
「心配しなくたって、また次があるよ」
「・・・お前、楽天家なのか抜けてるのかわからんな」
「ミッシェルが真面目だからねぇ。僕は、ちょっと抜けてるぐらいが丁度良い」
「・・・お前はちょっとどころじゃなくて大分抜けてるぞ」
その言葉に「手厳しい!」と笑い、ナマエは酒を煽った。喉がかっと熱くなる酒は、ミッシェルがナマエのために買ってやった高い酒だった。
「それに、彼女の気持ち、すっごくわかるし」
「・・・お前、まさかとは思うが――」
「いやぁ、素敵な人だったね、ジョセフさん」
ミッシェルは一瞬にして顔を青くした。
「お、おい、冗談だと言ってくれ・・・ナマエ、お前は人の斜め上の考えを持つヤツだと常々思っていた。けど、今それを発揮しなくて良いんだぞ!?冗談だろ!?冗談なんだろうっ!?」
ナマエの両肩を掴んでがくんがくんと揺するミッシェルに、ナマエは「あはははは」と笑うばかり。
「吃驚したよ、あの筋肉。つい『ナイスおっぱい』なんて言っちゃった。あ、もちろんミッシェルのおっぱいも良いと思うよ」
「・・・・・・」
普通の男であれば殺されていたであろう台詞も、ナマエならば話が別だ。
何も考えず、空っぽのままに口に出された台詞に一々怒っていたらきりがない。長い付き合いの中で、ミッシェルはそれを重々理解していた。
「・・・仮にお前がアイツのことをそういう目で見ても、アイツは生粋の女好きだぞ」
「へぇ、そうなんだ。うんうん、モテる顔つきしてるもんね。ミッシェルもジョセフさんのこと好きなの?」
「っなわけあるか!馬鹿!!!」
ゴッ!!!!とナマエの頭に拳骨が落ちる。
痛い痛いと頭を押さえるナマエにため息を吐き、ミッシェルは「まぁ・・・」と眉を下げる。
「お前がそれで良いなら、私も尊重するがな・・・」
「ありがと、ミッシェル」
痛みで目に涙を滲ませつつそう言って笑うナマエに、ミッシェルも小さく笑った。
そして・・・
「ジョセフさーん!おっぱい触らせてくださーい!」
「えっ!?ちょ、何なんだい君は――って、ちょっと!?」
「あはははっ!凄い良い触り心地〜!癖になりそう」
「ひっ!?ちょっ、ほんと止めてって――」
その日、ランキング1位の悲鳴が轟いた。
抜けてるで済まされるか?
一番の被害者は、ジョセフなのかもしれない。
あとがき
初めてジョセフさんを漫画で見た時「え、何この雄っぱい」って思いました。ホント何なんですかアレ。←
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