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「やぁ、イワン君」



笑顔で片手を上げ、近づいてきた人物にイワンは大きく目を見開いた。

それから慌てたように周囲をきょろきょろとし、ガッチガチに緊張しながら頭を下げる。




「っ!?ぇ、えと、ミョウジさん・・・お、お久しぶり、です・・・」

「そんなに畏まらなくたって良いよ。ナマエで良い」

ぽんっと肩に置かれた手に、イワンの身体が過剰なまでに震える。



「えっ!?そ、そんな、畏れ多い・・・」

「畏れ多いって・・・シルヴェスターから変な事でも吹き込まれたかい?私は別に、君を取って食ったりなんかしないよ」


「く、食うっ!?」

「あれ?何でそこで赤くなるのかな・・・」



顔を真っ赤に染め上げたイワンに首を傾げるナマエ。

すると大きな笑い声を上げたロシアのオフィサー、シルヴェスターが近づいてきた。



やぁシルヴェスター、と親しげに微笑むナマエは、彼にとって軍人時代から友人である。尤も、ナマエの方が随分と年下である。


「ナマエ、察してやれよ。お前はこういうのに好かれやすいんだ」


「意味がわからないなぁ、シルヴェスター。大方、君が良からぬことを吹き込んだんだろ?」

「それこそ濡れ衣ってもんだぜ、ナマエ」

なぁイワン?と肩を組めば、イワンは「ぁ、えとっ」と視線を漂わせるばかり。

そんなイワンをナマエは困った見て、そっと距離を詰めた。





「イワン君」

「は、はいっ!!!」


大きな返事をしたイワン。シルヴェスターがにやにやと双方を見守っている。





「私は君とも仲良くなりたいんだ。どうか、怖がらないでくれると有難い」


「こ、怖がってるわけじゃ・・・た、ただ、ちょっと・・・」

顔を赤く染めて視線を漂わせるイワンに、ナマエは眉を下げる。





「・・・それとも、私と仲良くなるのは嫌かい?」

「そんなわけないです!出来れば、物凄く仲良くなりた・・・ぁ」


「ふふっ、そうかい。じゃぁ、今晩食事にでも行くかい?」




食事と聞いた瞬間、イワンが固まった。

「ぇっ、あ、えと・・・」


「行って来いイワン。ナマエは金だけは持ってるからな。美味いもん食わして貰えるぞ」

「・・・本人目の前にしてその発言はないだろう。まぁ、イワン君が食べたいものを食べさせてあげるよ。今日の仕事終わりに迎えに来るからね」



ぽんっとイワンの頭を撫で、颯爽と去って行ったナマエ。







残されたイワンは・・・



「す、素敵・・・」


湯気が出そうな程顔を真っ赤に染め上げ、へにゃへにゃとその場に崩れ落ちた。






憧れのあの人






「お前、ナマエのこと大好きだな・・・」

「だ、だって、素敵じゃないですかっ!」


そんな会話がなされていたことを、ナマエは知る由もない。




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