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都心から離れた場所。

美しい桜が咲き誇る静かなその場所に、小吉はいた。



「ティン・・・来たぞ」


花束を手にした小吉は小さく微笑みを浮かべながら片手を上げた。


小吉の目の前にあるのは墓石。中身なんて無い、気持ちだけのそれ。

その墓石に刻まれているのは、彼にとって親友であり戦友である者の名。大事な大事な仲間の名。

小吉はその墓石に向かって自身の近状などを語り始める。





「・・・将来、また火星に行くことになると思う」

ぽつりと呟くような言葉が漏れ出る。

これは必要な事なんだ、とまるで自分に言い聞かせる様に言う小吉は、困ったように笑っていた。




「今、ちょっとずつメンバーを集めてるんだ。一郎はさ、何か国のお偉いさん目指してるみたいなんだぜ・・・」


その場にしゃがみ、そっと墓石の前に花束を置く。

そして真剣な目で、まるで懇願するように「ティン」と親友の名を呼んだ。




「待っててくれ・・・何時か、お前に胸を張って報告出来る様に頑張るから・・・どうか見守っててくれ、ティン」

風がふわりと吹けば、桜の花びらが舞った。


















「・・・・・・」

『行かないのかい、ティン』


「・・・いや、行き辛過ぎるだろ」




一方、墓石の傍の桜の木に隠れる影が二つ。

一方は墓石に刻まれた名前の本人であるティン。もう一方はその恋人で宇宙人のナマエ。



ティンの療養期間が終わり、二人はつい先ほどナマエの母星から地球までやってきた。どうせだから一番に親友に会いたいというティンのお願いから此処に来たのだが・・・

どう見たって出て行き辛い雰囲気だ。





『あの地球人、石に向かってティンの名前を呼んでいるけど・・・あれ、地球でいう墓かい?』

「あぁ、どう見たってオレの墓だな・・・嬉しいけど、虚しい」


肩を落とすティンの背を労わる様に撫でつつ、ナマエは何かを思いついたように『あっ』と小さく声を上げた。





『いっそ、ドッキリ感覚で背後から声をかけるとかどう?』

「吃驚し過ぎて小吉がパニック起こしたらどうする」


『逆に、吃驚しない出方ってあるの?』

「いや、そりゃ・・・そうだけど」


迷って迷った挙句、ティンは普通に出て行くことにした。

出来る限りさり気なく且つ冷静に・・・








「・・・しょ、小吉」

「!?」


名を呼び、そっと桜の木から姿を現す。

その姿を見た小吉は大きく目を見開く。




「ティン・・・」

「よ、よぉ」



「――の、ご兄弟か何かか?」



ティンは「えっ」と固まる。そう来たか。





「瓜二つだから驚いた。まるで、ティンが蘇ったみたいだ・・・」

眉を下げながら泣きそうな顔で笑う小吉に居た堪れなくなるティン。

どうやって説明したら良いのだろうと悩み始めた時『ティン、何を黙っているんだい?』と声を上げながらナマエが出てきた。





『地球に帰ったら最初に親友に会いたいと言ったのはティンじゃないか。次はイチロウクンという子に会いに行くんだから、早くしないと』

「せ、急かさないでくれナマエ!こういうのは大分気を使うっていうか、デリケートな話なんだよ」


『折角会えたのに間誤付いているだけなんて、勿体ないよ』

「だから、こういうデリケートな話にはいろいろ段取りが――」







「・・・ティン?」

自分の名を呼ばれ、ハッとしたティンが小吉の方を見れば、小吉は驚いたような眼差しをティンへと向けていた。




「ティン、なのか?」

「・・・久しぶり、親友」


どうやらティンとナマエの会話で気付いて貰えたのだろうが、どうにも恰好がつかない。




「悪い・・・何か、ぐだぐだになっちまって、その・・・」

「ティン!」


がしっと小吉がティンに抱きつく。

耳元で聞こえるのは鼻をすする音。見れば、小吉が顔面をぐっちゃぐちゃにして泣いていた。






「お゛、お゛がえ゛り゛ぃッ!!!!」

「・・・おぅ、ただいま」


もっと沢山言いたいことはあったのだが、取りあえず今はこの言葉だけで十分だろう。









宇宙からのおかえり







「・・・で、えーっと・・・彼は誰だ?」


『始めまして、ティンの恋人で宇宙人のナマエです』

「オレを治療して、地球まで連れてきてくれたんだ」



「・・・ん?」



『これから地球にティンと一緒に住むから、いろいろとよろしくね、小吉君』

「あ、別に小吉で良いけど・・・けど、ん?恋人?宇宙人?」


「・・・それについてはゆっくり話す」

その後会いに行った一郎も、小吉と同様に「・・・ん?恋人?宇宙人?」と首を傾げた。



あとがき

今回は『質問』の
【宇宙規模の一目惚れの続編お願いします!】
【テラフォーマーズの宇宙人×ティンの続き書いてください…っ!お願いします!】
を実行しました。

宇宙人主が意外と好評だったようで吃驚しています。
宇宙人にとって地球人はまだまだ謎が多い生き物で、たまに常識からズレてて空気が読めなかったりしますが、悪気は全然ありません。むしろ真面目です。




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