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「あ・・・」
俺は間の抜けた声を上げた。
さっきまで目の前にいた家族が、誰一人いない。
此処は俺の部屋のようだ。
何もない、薄暗い部屋。
俺、何してたんだっけ?
あぁそうだ、エースを助けないと・・・
あれ?エースは何処だ?
エース・・・
「・・・リヒトっ」
背後から声がして、俺はばっと振り返る。
そこには、日記を抱えて泣くエースがいた。
あぁ、どうして・・・どうして泣くんだ・・・
俺、エースには生きて幸せになって貰いたいのに。
「リヒトっ、俺を置いてかないでくれよぉ・・・」
は?と声を上げそうになる。
置いてくのはエースの方だ。
エースは何時だって、俺の手の中をすり抜けて逝ってしまうんだ。
「俺だけ生きてたって・・・リヒトがいなきゃ、意味ねぇだろぉ・・・」
薄暗い部屋の中、一人泣いているエース。
エースは俺が見えていないのだろうか。
ぼんやりとエースを眺めてる。
エース・・・
なぁ、エース――
「死なないでっ、リヒト・・・」
日記を抱き締めて泣くエースは、まるで俺のようだった。
例えば今この世界が、俺がエースを守れてエースが生き残った世界だとするのなら・・・
俺の命を持って生き残ることが出来たエースは、こんな風に泣いているのだろうか。→戻る