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「な、んで・・・だよ」
何でだよ何でだよ。
お前、俺のこと嫌いだろう?
死んでくれた方が清々するだろう?
そのはずだろう?
なのに、何で・・・
「何で俺を庇ってんだよぉお!!!!」
突然あいつが俺と赤犬の間に飛び込んできて、気付けばあいつの腹に大きな穴が開いていて・・・
「エース・・・」
船じゃ、一度だって俺の名前を呼んだことが無い癖に。
まるでずっと呼び続けて慣れ親しんだかのように俺の名を呼ぶ。
「生きるんだよ。今度は死んじゃだめだ。下手なことをしないで、真っ直ぐと親父のところへお帰り。振り向いちゃ駄目だ。あぁ、でも足元には気を付けるんだ、あと、それと――」
そいつの口の端から血が零れた。
こんなヤツ知らない。
俺のことを愛おしそうに見るこいつは誰だ?
俺のことを心配そうに見るこいつは誰だ?
俺のことをこんな、こんな・・・
「愛してるよ、可愛い弟」
なぁ、
「リヒトっ!!!!!」
俺も、初めて名前を呼んだ。
初めて呼んだはずなのに、妙にその呼び方が口にしっくり馴染んだ。→戻る