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ちょっとした不注意だ。
燦々と輝く太陽の光に目がくらんで、少し足がもつれた。
よろけた先は、海の方。
ぐらっと傾く身体に、落ちる!と思い目を瞑った。
だが、浮遊感から一変。突然ぐいっと後ろに引っ張られた。
きっと甲板に出てた誰かだろう。
礼を言おうと振り返るとそこには・・・
「なっ・・・」
「・・・・・・」
俺の事を嫌う、俺も嫌いなあいつがいた。
ほんの一瞬、俺はそいつが誰だかわからなかった。
何故ならそいつは、普段のキチガイな笑みを浮かべず、ただ真っ直ぐと俺を見つめていたから。
「・・・ひひっ、なぁにやってんだぁ?お前」
だがすぐに、そいつの顔は何時ものキチガイ面に戻った。
「お前がどんくさいからこうなるんだろぉ?さっさと船を降りちまえよぉ」
「っ、離せ!!!」
俺の肩を掴んでいたその手を振り払い、そいつを睨みつける。
「すぐ死にそうな雑魚が俺の目の前でちょろちょろされっと邪魔なんだよなぁ?あー、邪魔邪魔」
ニタニタニヤニヤ、ムカツク笑み。
「そんなヘマして死にそうになるぐらいじゃぁ、此処にはいらねぇよ。とっとと船を降りちまえよ」
そいつはニタニタ笑いながら言う。
我慢ならずに炎を出せば、ソイツは「おー、怖い怖い」と笑いながら消えてった。
・・・そんなに俺を見るのが嫌なら、手前が俺の前から消えちまえよ。
「はぁっ、はぁっ・・・よ、かった・・・」
エース、お前は何でそんなに死にそうになるの?
部屋の隅っこでがくがく震えながら涙を流す彼の姿など、きっとあの子は知らないのだ。→戻る