立ち寄った島にあるジュエリーショップで、綺麗なペアリングを見つけた。
一目見て、自分の恋人が頭に浮かんだ。
けれどすぐに頭を振ってかき消す。
だって俺の恋人のクロコダイルには、左手は無いんだ。もちろん、薬指も。
こんなもの買ったところで、つけてはもらえないし、下手をすればクロコダイルに対して失礼だろう。
俺は小さく息をついて、別の場所をちらっと見た。
「ぁ・・・」
ソレを見た瞬間、俺はペアリングを見たときよりも心が明るくなるのを感じた。
「これを売ってくれ」
「かしこまりました」
即決購入。高くても問題ない。
綺麗な箱に入ったそれを手に、俺はクロコダイルのいるところへ戻った。
「遅いじゃねぇか。今まで何してやがった」
「ん。これ買いに言ってた」
クロコダイルに見せたのは、指輪が入っているような小さな箱。
それを見て、クロコダイルは軽く眉を寄せた。
「ソレは誰にやるつもりだ」
「クロコダイル」
「指輪か?それなら、手前の望むような場所にはつけてやれねぇぞ」
案の定、クロコダイルは苛立ったような顔をしたから、俺は慌てて首を振る。
「違う違う。指輪じゃない」
「・・・?」
俺が口元に笑みを浮かべ、そっとその場に傅いた。
「どうぞこれを受け取ってください」
まるでプロポーズのように言う俺から、クロコダイルはそっと箱を受け取る。
ぱかっと開けられた箱。
「ピアス・・・?」
中身を見たクロコダイルが小さく呟いた。
「っそ。これなら、クロコダイルも付けられる。片一方をクロコダイルにやるから、もう片一方を俺にくれよ」
笑顔で言えば、クロコダイルがフッと笑った気がした。
「つけろ」
「はいはい」
ゆっくり立ち上がり、ピアスの片一方をクロコダイルの耳に付けてやる。
「うん。やっぱり似合ってる」
満足そうに言う俺の耳に、クロコダイルがもう片一方のピアスを付けた。
俺が「おそろいだな」と笑えば、クロコダイルは「っは。そうだな」と言う。
「愛してるよー、クロコダイル」
「・・・フンッ・・・俺も、と言ってほしいのか?」
「さぁ?それはクロコダイルに任せるさ」
へらっと笑いながら言えば、クロコダイルにグイッと胸ぐらをつかまれ、引き寄せられた。
「・・・愛してる」
「ん。ありがと」
耳元で囁かれた言葉に、俺は満足そうに笑った。
ラブペア