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麦わらの一味に所属している俺のお気に入りは、毎日美味しいメシを作ってくれるコックだ。




「サンジちゃぁーん。おなかすいた〜」


腑抜けているとゾロに言われるへらっとした顔でサンジちゃんのいる船のキッチンに顔を出せば、サンジちゃんはあからさまに顔をしかめた。




「・・・海水でも飲んでろ」

「辛辣!ナミちゃん達には優しいのに、あんまりだ!」



「手前とナミさんを一緒にすんじゃねぇよ」


相変わらず、女の子大好きだよねぇ、サンジちゃんは。




逆に、男の俺に対してはすっごい辛辣。

こんなに好きなのにねー。笑っちゃう。








「あ。今作ってるケーキって誰の?」


美味しそうなケーキ。

サンジちゃんの綺麗な手から作り出される可愛らしいケーキに、俺は笑みを浮かべる。





「ナミさんのだ。お前のじゃねぇ」

素っ気無く返された言葉。


まぁ、予想はしてたけど。






「ぇー?酷いなぁ。俺もおなか空いてるのにぃ」

わざとらしく肩を落として見せて、サンジちゃんの背後に回り、ギュッと抱きついてみる。


相変わらず細いなぁーとか、変態っぽいこと思いつつ、ぐりぐりっとサンジちゃんの頭に頬擦りした。






「くっつくな。鬱陶しい」


今にも蹴られそうな勢い。けど、離れないのは俺の意地。






「さっきから酷いよぉー。俺のガラスのハートが粉々になりそうだよー」

「寝言は寝て言いやがれ。ほら、とっとと退――」



「やーだ」



俺はそっとサンジちゃんの腰に触れる。

ビクッと震えるサンジちゃんに、ついつい笑ってしまう。




「ッ・・・何処触ってやがる」

「んー?サンジちゃんの細い腰ー」


「離しやがれッ・・・野朗に触られる趣味なんてねぇよ」


サンジちゃんの手が震え、今まで一寸の狂いもなく飾り付けられていたケーキの苺が、少し歪んだ。

ぁーあ。と言う俺と、グッと奥歯を噛み締め俺をにらみ付けるサンジちゃん。






「手前のせいで失敗したじゃねぇか」

「ナミちゃんだったら、それぐらい許してくれると思うけど?ほんのちょっと苺が歪んだ程度だ」



「ナミさんには、俺の完璧を食って貰いたいんだっ!」



「じゃぁ、俺はサンジちゃんの不完全な部分を全部受け入れてあげる」



俺はひょいっとケーキに手を伸ばし、指で真っ白な生クリームを掬って、ぺろっと嘗める。

甘い甘い生クリームの味。






「うん。美味しい」

「何勝手に食ってやがる」


ベシッと頭を叩かれた。





「ははっ。どうせ、作り直すつもりだったろ?」




「・・・うっせぇ」

図星だったからなのか、サンジちゃんは小さく舌打ちした。


その様子に俺はへらへらと笑いつつ、








「他の奴等の前では、いくらでも完璧になれば良い。完璧なサンジちゃんを周りに見せてやれば良い。けど・・・俺の前でだけは、不完全な部分を晒してくれても良いんだよ?サンジちゃん」


甘酸っぱい苺をパクリッと食べて、俺はやっぱり笑う。

サンジちゃんがジッと押し黙るのを感じた。






「・・・馬鹿野朗が」


再びベシッと俺の頭を叩いたサンジちゃんは「そのケーキ・・・残したら殺すからな」と言ってから俺から離れ、再び新しいケーキを作る準備を始めた。



その顔が赤いのは見てみぬフリをしつつ、俺は笑顔で「はぁーい」と返事をして、その甘くて美味しいケーキを口にした。







うん。

甘くて美味しい。





不完全な甘さ






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