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俺には実は“異世界人”の知り合いがいる。


変な話かもしれないが、これがマジで本当の話なんだぜ?




ソイツと出会ったのは餓鬼の頃で、ソイツは最初、路地裏で倒れていた。


死体か?と思ったが、ソイツの腹がぐーっとなっているのに気付いた俺は、何となくソイツに食べかけのリンゴをやった。


正直その時は俺も腹減ってたし、やりたくはなかったけどさ・・・

何かソイツが気になっちまったんだ。







リンゴをかじったソイツはガバッと起き上がって「美味しい!」と叫んだ。


ただのリンゴに大袈裟だな・・・と思ったが、後から聞けばソイツにしてみればその一口が約1ヵ月ぶりの食事だったらしい。・・・俺なら1ヵ月も食わないなんて、普通に死んでる。



ソイツは律儀なヤツで、たったちょっとのリンゴだけで「命の恩人!」とか「一生をかけて恩返しする!」とまで言って・・・







見た感じは俺よりも年上だったけど、そんな感じに俺を敬うのが面白くて、俺の子分にしてやった。

・・・まぁ、今思い出してみれば子分というよりは普通に俺の保護者みたいにアイツは振る舞ってたけどな。




アイツは俺よりもずーっと強くて、不思議な術を使ってた。


忍術っていうヤツらしい。ぇーっと・・・ちゃくら?とか何とかを使って戦うんだってさ。

他にもいろいろ教えてくれたけど、正直あんま理解できなかったなぁー・・・





よくわからなかったが、餓鬼の頃の俺は、単純に強い名前に憧れてた。


俺が海賊になったら、俺が船長でお前が副船長な!と約束するぐらい。





けど、その約束は達成されなかった。






アイツ・・・


消えたんだよな。元の世界に帰ったんだ。帰れてしまったんだ。

消える前のアイツは酷く困惑したように「え、エース!また会いに来る!絶対!」と言って消えたけど・・・















「・・・もう無理っぽい、名前」



俺、今から処刑されるんだ。

お前が会いに来る前に、俺死んじまうよ・・・







「・・・最後にもう一度、会いたかったなぁ・・・」

ついつい口元に苦笑が浮かぶ。


餓鬼ながらに、アイツの顔が結構整ってるのは気付いてたし、きっと大きくなったアイツはより一層格好良くなってるんだろうなぁ。





あーあ、見れないなんて残念だなぁ。


あぁー・・・










ザシュンッ!!!!!!!


「・・・ぇ?」









俺を拘束していた海楼石が粉々に砕け散る。

周囲の海兵たちが一瞬騒ぎ始めたが、その場はすぐに静かになった。



何故なら、俺の目の前に突然一人の男が現れたせいで、皆唖然としていたからだ。






男は変な格好をしていた。

けど、俺は変な格好だとは思わなかった。


だって、その格好は俺が幼い頃に見慣れていたし・・・


その男は口元を布で覆っていたけど、目は優しげに細められていて・・・








「名前・・・?」


「会いに来たよ・・・エース」








気付けば俺は・・・あの頃よりもずっと大きく成長していた名前に抱き上げられていた。


声を上げる暇もなく、名前は普通じゃありえない勢いで地を掛けていく。







「エース!」

「お、親父ぃ!!!!」



一瞬にして親父たちの目の前まで連れて来られた俺は、自分を抱き上げたままの名前を見た。





「手前・・・何もんだ」

「・・・・・・」


他の奴等から睨まれる名前だが、名前は俺を見つめてにこにこするばかり。



仕舞いには俺の頭を一撫でして、再び戦場へと飛び出した。







・・・圧倒的だった。

海兵を一瞬にして気絶させ、時には・・・まきもの?ってヤツで変な生き物を呼び出して戦う名前は、あの時よりも明らかに強くなっていた。


一通り海兵を片付けるとバッ!!!!とこっちを見た。







「今すぐに船を出せ!!!!!私が援護する!!!!!!」

「グララララッ!!!!誰だかわからねぇが、恩に着る!」


親父の指示で船が動き始める。




海軍の大砲とかいろいろ飛んでくるのに、名前の援護のおかげで俺達には何の被害もない。





凄い、強い・・・

俺はまるで舞うように戦う名前に見惚れていた。














――・・・




「名前――!!!!」


「エース!大きくなったなぁ!」

「お、お前こそ!」



無事に海に出ることが出来た所で、俺は名前に抱きついた。


名前は楽しげに笑いながら俺を抱き上げてくるくると甲板を回る。ちょっ、それはちょっと恥ずいッ!






「グララララッ!エース、コイツは誰だ」


「お、俺の知り合いの異世界人!すっげぇ強いんだ!」




俺の言葉に親父は再び笑って「そうかそうか」と頷いた。

マルコとか他の奴等は「いやいや、異世界人!?」とか言ってるけど、親父が気にしてない風だから別に良い!






「俺の息子を助けてくれて礼を言うぞ、異世界人」


「名前です。いや、私はただエースを助けたかっただけです。折角再びこちらの世界に来る術を作ったと言うのに・・・エースが処刑されるなんて、驚きました。ほんと、助けられて良かったよ、エース」



にこにこと笑った名前。





「な、なぁ!こ、これからはずっとこっちにいるのか?」

「んー・・・定期的にあっちには帰るけど、基本こっちに居ようと思ってるんだ」


「じゃ、じゃぁ、名前も親父の息子になれよ!」




「・・・んー、息子?」

ドキドキしながら返答を待つ。


けどきっと、名前なら・・・








「嫌だなぁ」


「えっ!?」




い、嫌なのか!?とちょっとショックを受ける。

まさか断られるなんて思わなかった。


名前はずっと俺と一緒にいてくれると思ったのに・・・

何がダメなんだろう。どうやったら、ずっと一緒に――






「兄弟じゃなくて、夫なら良いよ、エース」



「えっ・・・!?」

お、夫?


突然のことで俺は唖然とするしかない。






「私が夫で、君が妻だよ、エース」

「ぇっ、ぇ・・・えぇ!?」


「嫌?」



「いいいいいいいい、嫌とかじゃない!け、けど・・・」


口をもごもごとさせる俺を無視して、名前は突然親父の目の前に土下座した。






「・・・親父さん、息子さんを私に下さい!」


「やらん!」

「そこをなんとか!」


「エースを貰うなら、お前が婿養子になれ!そして俺の息子になれ!」

「婿養子・・・それでエースがいただけるなら!」


「なら認める!」

「有難うございます!!!」






えぇぇぇぇえええええっ!!!!!!!!






「グララララララッ!!!!!!今日は宴だぁ!エース救出祝いと、婚約祝いだぁ!!!!!!」

親父が勝手に話を進める中、俺はおろおろしているしかない。


名前が「エース」と言って俺を抱き締める。




ぶわっと赤くなる俺に、名前はにっこり笑って言った。






「幸せにするね」

「・・・ぁ、あぁっ!」


こくこくっと頷いた俺は、つい泣いてしまった。





異世界人的求婚事情




あとがき

混合はいろいろ楽しくって好きです。←
忍主さんのデフォルト名はムジナとか考えてみる。



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