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僕の好きな子には取り巻きってヤツが沢山いる。


知人の由花子ちゃんほどじゃないけど、出来ることならあの周りにいる取り巻きを一掃したいなぁって・・・

っと、駄目駄目。そもそもあの子は僕の存在すら知らないじゃないか。


僕は何時も見ているだけ。そう、見てるだけで十分なんだ。


あの子は人気者。僕はそうじゃない。





「・・・ふぅ」

僕は小さく息を吐き、さっきまであの子を見ていた窓から離れて、カウンターへと向かう。

そして分厚い本を開き、本の世界に没頭するんだ。




僕はしがない図書委員。

目立ちもしない、ただ図書館で本を読むばかりの男。


そんな僕とあの子が釣り合うわけもないし、そもそも僕と彼は違いすぎる。



こんな話を由花子ちゃんにしたら、物凄い剣幕で怒鳴られるんだろうなぁ・・・

この間なんて「好きなら行動しなさい!!!!」と怒鳴られて、見えない何かで首を絞められかけたし。



ガラガラッ

「お。誰もいない」


僕はぴくりと肩を揺らす。





な、何故?

何故あの子が此処にいるんだ?


あの子と此処には全く持って接点はないし、あの子は本を読まないはずだし、それにそれに・・・!!!!






「あ、やっぱりいた」

僕に話しかけてくるわけ――





「あんた、俺のこと、此処の窓からずーっと見てたでしょ」



「ぁ、えと・・・」

分厚い本から顔を上げれば、笑顔のその子が僕の目の前に立っていた。



「こっ、こんにちはっ、そ、その・・・ほ、本の返却ですかっ?ぁ、そ、それとも貸出?と、図書カードは僕にっ」

「あははっ、すっげぇキョドってる」


楽しげに笑ったその子は何を思ったのかカウンターに身を乗り出して僕の手にある本を見る。

必然的に近くなる距離にどきりとした。




「うげぇ・・・すっげぇ分厚い本。あんたすげぇなぁ、俺には真似できねぇや」


「仗助君には仗助君の良いところがあるんだから、真似する必要なんてないよ」

くすっと笑いながら思ったことが口から出る。



「あれ?俺の名前・・・」

そのでハッとする。



「ぇ、ぇとっ・・・き、君は有名だからねっ。ほ、ほら、君って取り巻きの女の子たちが沢山いるだろぉ?」

「ぁー・・・そうだなぁ」


頬をぽりぽりと掻く彼に苦し紛れの笑みを向け、僕は「で、ぇっと・・・何の御用で?」と問いかける。





「あんたのこと気になって」

「・・・・・・」




「窓からいっつも見つめてると思えば、すぐに部屋の中に戻っちまうから、なかなか声かけられなかったんだ。俺に何かようでもあるんだろ?」



用事ならあります。





――君のことが好きです。





・・・そんなの、言えるわけありませんけど。




「いえいえ。ただ、女の子たちが大騒ぎしているので、ちょっと見てみたくなっただけですから」

とってつけたような言い訳をする。



彼と僕はこんなに違う。

今こうやって会話できているのは、本当にラッキーなことだけど・・・


それを長続きさせたいなんて願っては駄目だ。


僕なんかがこの子と関わって良いわけ――






「あんたって、何かすっげぇ整った顔してるよな。モテるだろ」

「ぇっ・・・ぁ、そ、そんなことないです。僕、暗いし・・・」



「えー?じゃぁその前髪とか切っちゃえば良いじゃないか」


「わっ、じょ、仗助君っ」


僕の前髪をサイドに退かせてしまったかと思えば「うん。やっぱりこっちのが良い」と笑って見せた彼に・・・




「・・・です」


「ん?」





「・・・好き、です」





僕の口は、僕の無意識のうちに本音を漏らしていた。

すると彼はきょとんとしたあと・・・








「あ、やっぱり?」







そんな、悪戯っぽい顔をするんだ。

え?という僕の声など気にせずに「だってさぁ」と頬を掻く彼。



「あんなに情熱的な目で見られちゃ、気付かねぇほうが可笑しいって」

「じょ、情熱的・・・でした?」



「そりゃもう、グレートな程!」


僕の顔に徐々に熱が溜まってくる。




仗助君はそんな僕にニカッと笑いかけると、



「また図書館くるからさ、俺でも読めそうな本探しといてくれよ、名前」



「ぁ、はい。・・・ぁれ?」



「じゃぁな!」

「は、はい・・・」



何故・・・


あの子、僕の名前知ってたんでしょうか。

けど・・・嬉しいから良いか。





図書館から見える目



(やっべぇ・・・まさか告白されるなんて思わなかったぜっ。けど・・・あんな情熱的な目をされちゃ、断れるわけねぇよなぁっ・・・なんて、ははっ、やべぇ、嬉しい・・・)





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