もぐもぐっ
ハンバーガーを食べながら目の前の光景を眺める。
目の前にあるのは、簡単に言えば死体。
それも、血をほとんど失って干からびたミイラのような死体。
自分の雇い主であるDIO様の食糧となった女たちの残りかす。
それらはその部屋の冷たい床の上に無造作に横たえられていた。
そんなものを目にしながらもソファーに座ってハンバーガーを食べるのを止めない僕に、DIO様は呆れたような目を向けた。
「お前の図太さには何時も驚かされる」
もぐもぐっ
ごくっ
「三大欲求には食欲があります。僕はよく食べてよく寝ていられれば特に文句もなく過ごせます」
残りのハンバーガーをガモッと口に押し込んで、ごくりと飲み込んだ。
するとDIO様がこっちに近づいてきて、僕の手を掴んだ。
ぺろっと舐めたのは僕の指についていたケチャップ。
「お腹すいてるんですか。それは血じゃないですよ」
「そんなの知っている」
ふっと笑ったDIO様は僕の耳元にそっと唇を寄せた。
「お前が欲求に忠実なのはよくわかった」
まるで麻薬を含むような甘ったるいその声を気にせず、僕はハンバーガーを買った時に付いていたコーラをズズズッと飲んだ。
テレンスとかアイスが近くにいたら、きっと『DIO様の前で何て失礼なことを!!!!』と怒鳴っていたことだろうけど、今はその二人もいない。
好きかってしている僕を怪訝に思うどころか至極楽しそうにしているDIO様はふいに僕の足の間に膝を置いた。
まるで媚びる女のように僕の腰を撫でるDIO様は、やっぱり甘ったるい声で言うんだ。
「お前の言う欲求は食欲と睡眠欲だったな。では・・・最後の一つは?」
ゾクゾクするようなその声。
僕はすっと目を細めてその声を聞く。
「お前は欲に忠実な男だ。もちろん・・・――“色欲”にも忠実なのだろう?」
「さぁ。どう思います?」
差し込まれた膝がするっと動かされる。
ぴくりと反応した僕に、DIO様は赤い舌で唇を嘗めると、僕の首に腕を回して抱きついて来る。
まるで恋人同士のように唇を合わせてキスをする。
「DIO様も欲求に正直な方ですね」
「お前ほどでもないさ」
死体が沢山転がっているこの部屋で行われようとしていることは、実に不釣り合い。
けれど僕の中にある欲は『別に部屋などどうでも良い』と言い、僕の理性でさえ『それで良い』と言っているのだ。
「このDIOをイかせてみせろ」
「では失礼」
ハンバーガーを食べるときと同じぐらいあっさりとDIO様の身体に手を伸ばした僕に・・・
やはりDIO様は至極楽しそうにしていた。