※テキーラ娘ネタ
「チッ・・・流石はドイツ軍人だぜ」
手にテキーラを持った巨体の女性・・・否、ジョセフはそういって肩をすくめた。
ジョセフのあまりに強烈な女装に軍人たちが「お前みたいなデカくて筋肉質な女がいるか!」と叫ぶ。
「おい、お前たち!何をしている!」
「ヒッ!?ナマエ大尉!!!!」
そこへ軍服をピシッと着こなした小奇麗な男が一人やってきた。
少し厳しげな眼差しを寄越したナマエ。
「まったく、何を騒いでいるのかと思え、ば・・・」
・・・ナマエの視線は女装姿のジョセフで止まった。
ズキュゥゥゥゥゥウウウウウンッ!!!!!!!
妙な効果音が一つした。
「・・・お前たち」
「も、申し訳ありません、ナマエ大尉!すぐにこの怪しいヤツを片付け――」
「何を失礼なことを言っている!!!!!こんな可憐な女性に向かって怪しいなど、それでも貴様らはドイツ軍人かぁぁああッ!!!!!!!!」
「「えぇッ!?」」
ナマエはさっとジョセフに近づくとにっこりとした笑みを浮かべ「お嬢さん」と声を上げた。
「私の部下が失礼をした。お嬢さん、お怪我は?」
「い、いいえぇっ、ないわよぉ」
「それは良かった。ところでお嬢さん、何の御用で?」
「テキーラを持ってきましたのぉ」
ジョセフの言葉に微笑みを浮かべたナマエは「それは有難い」と言って受け取ったテキーラを傍で唖然としていた部下に寄越した。
「貴女のような可憐なお嬢さんがこのあたりをうろつくのは危険だ。近くまで送ろう」
「あらぁ、親切なのねぇ」
「軍人たる者、一般市民を蔑ろには出来ない。特に、お嬢さんのように美しい人は」
ほんのり照れたような表情をするナマエに、何だかジョセフまで照れてしまいそうになる。
「や、やっだぁー、美しいだなんて、軍人さんったらお上手〜」
バシッと背中を叩かれたナマエは「本心だ」と笑う。・・・実は叩かれた背中が痛かったようだが、そこは軍人。華麗に我慢してみせた。
「ねぇ、軍人さぁん、私、この中に入りたいの。入れてくださらない?」
「中に?何用で?」
「テキーラを届けに来たんだけど、中も見学したくてぇん」
「女性の貴女には面白くもない場所だ。それに、少々危険。猶更入れるわけにはいかない」
「あぁーら、危なくなっても・・・貴方が守ってくれるでしょぉ?」
くねっと体をくねらせたジョセフを見ていた人たりがウゲェッとした顔をした。ナマエ以外。
ナマエは「も、もちろん守ろう」と頷く。ほんのり顔が赤い。
気を良くしたジョセフは・・・
「お願ぁい、ナマエvV」
「!・・・少しだけだ。本当に少しだけ許可しよう」
見事色仕掛けに成功した。
・・・が、もちろん話がこれだけで終わるはずもない。
トイレに行くと言ってナマエから離れたジョセフはそばを通りかかった軍人を伸して軍服をうばい、そのままスピードワゴンが囚われているという研究室まで侵入。
その時復活した柱の男の一人を、シュトロハイムという犠牲の元倒したのだ、が・・・
「・・・お、じょうさん?」
騒ぎの中ジョセフを逃がそうと周囲を探し回っていたナマエは、明らかに男なジョセフを発見した。
ジョセフは「ぁ、ぁー、ぇーっと」と視線を漂わせる。
ナマエは大きく目を見開いたまま、動かない。
「ぇ、ぇーっとぉ、ナマエ?わ、悪かったなぁ、騙して。俺、ジョセフって言うんだ。ゆ、ゆるしてちょ――」
極度の放心状態だったナマエに、ジョセフは声をかけた。
ナマエはピクッと肩を揺らしジョセフを見る。
「・・・い」
「へ?」
ガシッとジョセフの手が掴まれる。
「男でも構わない!誇り高きドイツ軍人はそう簡単に己の志を変えない!!!!!」
「は!?」
「お嬢さん・・・いや、ジョセフ!私はお前が男であろうと全身全霊で愛している!」
真っ直ぐとした眼とその声の勢いにジョセフは慌てる。
「おおおおおお、落ち着け!落ち着けよナマエ!!!」
「愛しているジョセフ!」
大きな声で叫ぶように言ったナマエに、ジョセフは軽く・・・いや、大分慌てた。
「君のことをもっと知りたい。是非ともこの私に君という存在を教えて欲しい」
「ナマエ・・・」
するっと腰に回される手。
ジョセフは「ひっ」と身を固くした。
「そそそそそそ、そうだ!す、スピードワゴンのところにいかなくちゃなぁ!」
なんとかそういってナマエの腕から逃れて走って行ったジョセフは「ぁー、危ない危ない」と声を上げる。
「あんな真っ直ぐな眼でずっと見つめられちゃ、そのうち本当に流されそうだぜ・・・」
「ジョセフー!!!!!また君に会えるのを待ち望んでいる!」
遠くから聞こえた声に、ジョセフは軽く片手を上げた。
テキーラ娘と軍人さんたぶん次に会うのはシュトロハイム復活時。←