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■女審神者が復讐のためにブラック本丸を作る話。/女主



方法⇒太刀などの目の前で縁のある短刀や脇差を折り続ける(フリ)。幻覚で本当に折れているように見せている。

※短刀や脇差は何だかんだで審神者を慕っているから協力的。実際、彼等に被害は無い。


ブラック本丸完成⇒政府に匿名でブラック本丸があると通報⇒女審神者は短刀と脇差を連れて逃げる⇒次の審神者が来る⇒実はその審神者がターゲットで、刀剣たちの呪いは全てその審神者に行くよう仕向ける⇒復讐完了。



ブラック本丸を作る経緯↓
一時帰省が許され、現世に帰る⇒父が倒れる。
間に合うはずだったのに、その後に来た娘の父親が「貧乏人は後に回せ!」金で自分を優先させる。

半ば心神喪失状態で本丸へと戻ったある日、演習で娘を見つける。
女審神者の本丸は娘より刀剣が揃ってる⇒娘、羨ましがる⇒「貧乏人のところで働くなんてかわいそー」⇒娘の台詞で娘の父親の台詞を思い出し、ぷっつん。復讐スタート。




※表現注意。



「・・・呪ってやる」

自分の声とは到底思えないぐらいの低い声が私の口から出てきて、そんな声でぽつりと呟いた言葉は私の全身を駆け巡った。

他人を本気で呪いたいと思う日が来るなんて思わなかった。

腐っても審神者という神聖な職業に就いているのに、私の中身はどんどんどんどん黒く黒くどす黒くなって・・・

あぁ、思考まで黒に染まって行く。駄目だ、ちゃんと意識を保って――ちゃんと呪わないと。





「あ゛あぁアあぁぁぁぁああ゛あアァああああぁぁぁぁあッ!!!!!もうっ、もう止めてくださいッ!!!!!折らないでっ、弟たちを折らないでくださいぃッ、あぁぁ゛あぁぁアアあぁぁぁぁあアあァッ!!!!!!」

「お前は何本目なんだっ!?何本目なんだよッ!!!止めろよ、こっちに来るなよ・・・ひッ、い、あ゛あッ!!!!」





「お?大将お帰り」

「お帰りなさい主ぃー」

薬研を筆頭に短刀や脇差たちが口々にお帰りと言ってくれる。彼等の言葉で、私は少しだけ肩の力を抜いた。

「今日も一段と凄い悲鳴だったな、大将」

「そりゃねぇ・・・目の前で兄弟たちをボッキボッキ折られて、自分はそれを一振りたりとも守れないんだから、叫びたくもなるよ」

茶でも飲むか?と尋ねてくる薬研に頷き、畳の上に腰かける。すると傍にやってきた小さな虎たちの頭を、私は順に撫でてやった。

「今日も、部屋の中で失神してるいち兄を布団に寝かせとけば良いんだろ?」

「うん、よろしく」

任せとけって、と笑う薬研に私は少しだけ目を伏せた。

「・・・ごめんね、こんなことさせて」

その言葉に薬研がきょとんとする。彼だけじゃない。この部屋にいる刀剣全てがそんな顔をしていた。





「まともに動けない兼さんを全力でお世話出来るなんて、夢みたいです」

どこかうっとりとした様子で言う彼も大概狂ってると思う。ちなみに彼は正真正銘の一本目。一度だって折れてはいない。

他の子達だってそう。誰一人として折れてはいないし、傷一つない。





全て幻覚。

極度のストレスと私の言葉と少々の術で見せている悪夢。

目の前で兄弟たちが、大事な相棒が、それらが折られていく悪夢。

助けて助けてと手を伸ばされ、けれど助けられない悪夢。

そんな悪夢が常に彼等を付き纏い、彼等の心を蝕んで彼等を壊す。刀は美しいままに、その心を腐らせる。





「・・・絶対に、呪ってやる」

小さな呟きに薬研が苦笑した。

「わかってる。大将の思うようにやれば良い」

自分の兄である一度一振が今まさに心を壊されているはずなのに、彼の笑顔は吃驚するぐらい清々しく輝いていた。

他の子達だってそう。皆にこにこ笑ってて、私を否定するような言葉は誰も口にしなくって・・・

「早く、思いが遂げられれば良いですね」

五虎退が微笑みながら言って、皆も「頑張って主!」と笑って言った。皆みんな、心からの笑顔だった。

・・・あぁ、私の本丸は狂ってる。







「乱は、悲しくない?兄があんな目に遭って」

「だって、主が泣いちゃいそうな顔してるから」



「皆みーんな、主様の味方です!」




〜中略〜




「あぁ、出来た」

真っ黒に染まった彼等の神気。いや、もはや怨念とでも言うべきか。

私は通信機器を手に取り、ピッという軽い音と共にそこへと連絡する。

「・・・あのすみません。この間演習で見かけた本丸なんですが・・・何だかブラックっぽいんです。調べてみてはもらえませんか」


さぁ・・・

後は政府の役人が来るのを待つばかり。

ほっと息を吐く私に、刀剣たちは「もうちょっとだね!」と笑った。







「・・・じゃぁ、逃げようか皆」


「何処に行く?大将」

「当てなんてない・・・けど、皆で楽しく過ごせる場所が良い」




ブラック本丸として認定された。

人間を信じられない荒御霊となった刀剣たち。しかし彼等の練度は高く、政府としてはただ刀解するには惜しい。

そんな政府がすることなんてわかりきってる。きっと彼等は次の審神者をあの本丸に送り込むだろう。




私は一つ、小細工をした。

政府の人間が調査に入ると同時に発動する、小さな小細工。




〜中略〜




「弟達がっ、折れた弟たちがそこら中に散らばって・・・」

「え?散らばってるのって、ただの“紙切れ”じゃ――」

彼女はその時理解するでしょう。己の失言を。

「かみ、きれ?今、貴女は何と・・・私の大事な弟、たちを・・・紙切れ、と?」


叫んだってもう遅い。

逃げたってもう遅い。

だってその本丸にいる荒御霊は一体だけではないのだから。



「あいつは・・・あいつは、一体何度・・・何度折られた、折られて折られ、て折られて折られ、折られ、折ら・・・」

「小夜・・・あぁ小夜が、小夜が息をしていない・・・小夜、どうして、あぁ小夜・・・!」



守るべき相手がいる者は強い。

けれど同時に、それを失えば一瞬にしてその心が折れてしまう。

折れてしまえば、その傷口にどろどろと真っ黒な毒を塗り付けて、外側からも内側からも真っ黒に染めあげてしまえば良い。

彼等は見事に真っ黒け。もう誰も救えない。

生きた呪いと化した彼等は目の前の“審神者”を敵とみなす。憎い憎い存在とみなす。

理性なんて欠片もない。そんな存在が、女の命乞いなど聞く筈がないのだ。





「ぎゃッ――」

短く汚い悲鳴が、その部屋だけに響いた。



2016/3/6




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