■教祖様には忘れられない人がいる
主人公はまだ教祖様が人間だった頃のお世話係。
教祖様の父親が複数の信者に手を出していて、その一人から生まれた、腹違いの弟。
髪色も目の色も黒だし、教祖様とは全然似てないけど、教祖様と同じで何時もにこにこしてた。
「○○は神様って信じる?極楽って信じる?」
「はい、信じます。兄上は違うのですか?」
「○○は馬鹿だなぁ。そんなの全て生きてる人間の妄想。本当はそんなものありはしないんだよ」
「兄上はそう思うのですね。なら、兄上にとってはそうなのでしょう」
極楽を信じるような馬鹿だったけれど、馬鹿の癖に全てを心得ているような態度が、教祖様はちょっぴり気に入らなかった。
「兄上、あの小鳥を見てください」
「あの小鳥がどうしたの?飼いたいの?」
「あの小鳥は、一年前に病で亡くなった信者の娘の生まれ変わりです。人は、魂を清められた後、再び別のものとして生を受けるのですよ」
教祖様は別の信者に頼んで、小鳥を駆除して貰った。
「兄上、天は全て見ておられますよ。私たちを見ておられるのです」
「見ているだけで何もしてくれないの?救ってくれないなら、やっぱり神様はいないじゃないか」
「それでも、見ていてくれているのです」
「・・・見てるだけなら誰にでも出来るよ?」
「平等に、見ておられるのですよ」
教祖様は少しむっとして、その日相談に来た信者に「神様が全部見ててくれている。きっとあの世でも幸せに暮らせる」と言って、信者を自死させた。
「兄上、知っていますか。噂では、世の中に『鬼』と呼ばれる存在が闊歩しているようなのです」
「知ってるよ。それがどうかした?」
「鬼は死なぬそうですが・・・それはとても悲しいことだと私は思います。人は、いずれは死に至るもの。その死を拒んでも、その先にあるのは破滅だけです」
「ふーん」
「兄上、兄上はどうか、人であってくださいね」
まるで念を押すように言うので、教祖様はその時だけ「わかったよ」と返事をした。
その夜、○○は信者の誰かに刺されて殺された。
あれ程真摯に神様を信じていた者とは思えない、呆気ない最期だった。
あれだけ信心深かった○○が無意味に殺されるのだから、やっぱり神様なんていない。極楽なんてものもない。
教祖様は「やっぱり○○は馬鹿だなぁ」と肩を落とし、その数日後に教祖様は鬼となった。
「兄上、やはり鬼になってしまったのですね」
「・・・○○?」
「はい、○○です。兄上、まさかそのお膝の上に載っているのは私の頭蓋骨でしょうか。まさか供養してくださらなかったとは・・・どおりで神様に門前払いを食らうはずです。おかげで浮遊霊となり、長い事彷徨うこととなりましたよ兄上」
数百年後、教祖様の目の前に昔失った愚かな弟そっくりな青年が現れました。
青年は鬼狩りと同じ服を身にまとい、その手には日輪刀を持っていました。
青年は笑います。
「兄上、どうか共に地獄へ落ちましょう。兄上の罪、死後の世界で共に背負わせていただきます」
「・・・相変わらず馬鹿だなぁ、○○は」
結末としては、弟が見事教祖様を討ち取ってもいいし、教祖様が弟を吸収しちゃってもいいし捕まえてもいい。
弟は無惨の血に適正はないようで、鬼化は出来ずそのまま死んじゃう。
どの結末でも、結局童磨は倒されて、死後の世界で弟と地獄の業火で焼かれて終わり。
教祖様の弟に対する感情?たぶん、愚かな弟の居場所は自分の隣しかないと思ってた。でも、弟は呆気なくいなくなってしまいました。
弟は教祖様のことは家族として普通に好きだけど、お互いいずれは自立して別々に生活するのが当然だと思ってた。
キメツ学園時空に突入するなら、たぶん童磨に対する罰として弟は弟として生まれない、もしくは全くの他人として生まれる。
弟はけして強くはない隊士だったけど、穏やかで優しくて親切で、同僚とも仲が良かった。
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