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■鱗滝さんの育てのお父さんはモノホンの天狗



古くから、それこそ人間が鬼にされるなんてこともなかった時代から森で楽しく暮らしていた天狗が森に捨てられてた赤ん坊を拾って育てる話。

昔は人間をからかって遊んでたけど、ある時から鬼だ鬼だと言って問答無用で攻撃してくるもんだから、拗ねて遊ばなくなった。


ある日森で捨てられた赤ん坊を発見。獣に食われそうなところをあわあわしながら救出。他の妖の助けも得ながら、子育てスタート。

重湯を飲ませたり人里にこっそり行き赤ん坊のいる女性の乳を飲ませたり(代金は山の幸)、どうにかこうにか育てる。

何とか成長はするけど、人間なんて育てたことないからいろいろ滅茶苦茶。

天狗や妖基準で考えて育てるから、そのうち鱗滝の身体能力がバリ高になる。鱗滝自身も途中まで自分のことを天狗だと思ってたから、自分の身体能力の高さになかなか気付かなかった(天狗の中では運動神経が悪い方だから、むしろ自分は弱いと思ってた)。


ある日森に迷い込んできた鬼殺隊士が原因で自分が天狗ではなく人間だと知り、同時に自分が拾われっ子であることに気付いてしまう。ついでに鬼の存在も知る。

血がつながってないことにショックは受けたものの、育ててくれたことには変わらないと何とか持ち直す。でもいつまでも父親の脛を齧りたくない!と身体能力を生かせる鬼殺隊に入隊し家を出ることを決意。←育ての親の号泣。行かないで行かないで攻撃で仕事の合間に帰省することを約束させられた。

入隊後、顔立ちが優し過ぎて鬼に馬鹿にされ続け、それを帰省中に育ての親に愚痴ったらお面を貰った。なんと育ての親の手作りで、定期的に新しいのが送られてくる。天狗は手先も器用だった。


何時の間にやら育ての親の見た目年齢を超えたが、何時まで経っても育ての親は鱗滝を小さな小さな赤ん坊のように甘やかそうとする。

鱗滝が年齢を理由に柱を引退すると言えば嬉しそうに山に家を建て、家族の時間が作れると喜んだ。鱗滝に弟子がいれば隠れていたが、たまにこっそり悪戯をしたりして楽しそうに笑う父が、鱗滝は言葉には出さないが大好きだった。

しかし悲しいこともあった。鱗滝の弟子はなぜかことごとく死んでいく。生き残ってくれた弟子も、任務中で死んでしまった。

耐え切れず育ての親に相談した時も、花が似合う可愛らしい弟子の少女がいた。彼女は自分によく懐いてくれていて、本当は最終選別に行かせたくなかった。本当は、どの弟子も行かせたくはなかった。

泣きながら訴える鱗滝に育ての親は「わかった」と笑った。その年の最終選別では、弟子は生きて帰ってきた。ぽかんとした様子で「天狗に抱っこされたまま七日間を過ごしました」と言う弟子に、鱗滝は頭を抱えた。育ての親には文句を言ったが、文句を言い終えた後で小さく「ありがとう」とお礼を言った。


花の似合う弟子、真菰の次に弟子が二人出来た。育ての親が二人にこっそり悪戯をしていると、二人が鱗滝に「誰か知らない人がいる!」と訴え、仕方なく育ての親を紹介することに。
初めて弟子の前にちゃんと姿を現した育ての親は、元来人間が好きだったらしくそれはもう二人の弟子を可愛がった。悪戯しまくったとも言う。

二人の最終選別の時、育ての親は花の似合う弟子の時と同じようについて行ったのだろう。
最終選別から帰ってきた弟子二人は酷い有様だった。弟子の一人は泣きじゃくり、もう一人は「あの天狗は許さない!」と怒っていた。

聞けば、鱗滝の弟子を執拗に狙っていた鬼の首を切ろうとした時、育ての親が現れてあっという間に弟子を攫ってしまったという。

怒鳴っても暴れても言うことを聞かず、あっという間に七日間が過ぎ・・・
最終日になってようやく弟子はもう一人の弟子の前に落とされたらしい。
それまで兄弟弟子が戻ってこず絶望していた弟子は泣いて喜んだそうだが、攫われていた弟子の方はそうもいかない。

「出てこい天狗!」と怒鳴る弟子。けれど鱗滝はそんな弟子ともう一人の弟子を抱きしめて泣いた。鱗滝が泣き、兄弟弟子も更に泣く姿に困惑した弟子は、しばらくして漸く自分が死にかけていたのだと知った。

天狗に攫われてからは鞘に納めっぱなしだった刀は、鞘の中でぽっきり折れてしまっていたから。・・・きっとあのまま使っていれば、刀は折れて、あっという間に鬼に殺されてしまっていただろう。


泣いている息子とその弟子を屋根の上からのんびり見下ろしていた天狗は、けらけらと笑う。息子が喜んでいるなら親である自分も嬉しい。

もうちょっと早く手を貸してやればよかったのに、と呆れる知人の煙々羅に天狗は笑う。

「人の世のことに、妖が無暗矢鱈に手を出すもんじゃなかろーよ」

それなのに手を出したのは、人間の中でも唯一親として愛した息子の願いがあってこそ。息子がいうなら、きっと天狗はかの鬼の首領でさえ討ち取ってみせるだろう。けれど息子も親を愛しているから、そんな危険なことはさせないはずだ。



2019.12.22




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