■チート転生したらいろいろ壊れた話
完全無欠チート主人公になりたい。
例えば世界各国の言葉を自由自在に操れたり、例えば格闘術は軒並みマスターしてたり、例えばIQが世界的に権威ある学者レベルに高かったり、例えば容姿がモデル並みかそれ以上だったり・・・
例えばを上げればキリがないが、兎に角そんな主人公になりたかったのだ。
・・・まぁ上記には『前世は』という言葉が付け加えられるわけだが。
「完璧すぎて引く」
現在の自分は、前世で夢見た完全無欠チート主人公・・・その全ての要素を備えた男になっていた。
前世の行いが余程良かったのか、それとも神様の気まぐれなのかはわからない。とりあえず俺は完全無欠チートなのだ。主人公かはわからないけど。
完全無欠チートはその出生までチートだった。何だ●●財閥って、何だ世界トップクラスで政治的権力すらある家って。先祖に王族の血が入ってて?日本国籍だけど目や髪の色がちょっぴり特殊で?見る人が思わず息をのむようなイケメンで?あまりに影響力があるから表だけでなく裏の世界からも「あいつには手をだすな」的なことを囁かれてる?
・・・言うときりがないな。もうおなかいっぱいです。
ねぇ、設定盛り過ぎじゃない?人間の短い一生じゃその設定を使い切るのは無理だって。前世では大変憧れたけど、実際そうなると駄目だ。設定盛り盛り状態過ぎて眩暈がする。
そんな状態の俺だけれど、そんな状態の俺だからこそできることがある。
そう、救済である。原作で死ぬキャラを救済、それはチートキャラの役目みたいなところがある。
いや、別に誰かに頼まれたわけでもないし、原作キャラと知り合いというわけでもないから、そんなのしなくたっていいんだけど、しないと俺のチート設定の意味なくない?
原作で巻き起こる事件にかかわらずに生きると、マジで俺のチートが飾りだから!飾りってことは、イコール俺は不要!えー?こんなにチートなのに何もしないのぉ?組織解体しないのぉ?と言われるがオチだ!
・・・まぁ結局、原作に関わることでしか今の俺の生きる意味が見出せないのだ。努力を知らない、生きがいを知らない、楽しいと思えることがない、辛いこともなければ悲しいこともなく、かといって幸せでもなく・・・
ほんと、前世で何故あれほどチートを望んだのかわからない。俺、普通の男の子になりたいです!切実に!
「この爆弾はまだ解体が済んでいない。それなのに防護服を脱いで煙草まで吸い始めるなんて・・・信じられないな」
「ひ、避難してない一般人!?此処は危険だ!今すぐ避難しろ!」
突然現れた俺に驚き声を上げる萩原研二。俺はそれを押しのけ、何時爆発するかわからない爆発物へと近づき腰を下ろした。
爆発物処理班でもない癖に、ぱぱっとちゃちゃっと萩原研二が残した遠隔操作のシステムを解除する。あっという間の出来事に萩原研二が驚き固まっているのがわかる。
それを無視して立ち上がった俺は、その場を立ち去ろうとする。
「ま、待ってくれ!あんたは一体・・・」
「語ることはない」
会話を成立させるつもりはなく、呼び止めようとする萩原研二を置いてさっさとその場を立ち去る。
俺の目的は救済であって、キャラとの関りではない。そりゃ、原作に関わるためには多少原作キャラと知り合いにならないといけないが、本来死ぬはずだったキャラは大して関わる必要性も無い。救済すれば後はほっといても幸せになれるやつらだ。
・・・うん、自分で言ってて最低だな。アフターケアしろよってなるわ。
でも俺は、今世ではあまり他人と深く関わらないって決めたんだ。何故なら俺は、俺のチートさ故に周囲を不幸にする。
別に、影あるイケメン設定を追加したいわけではない。本当に、俺に関わるとろくなことが無いのだ。
何故なら俺は完璧過ぎる。故に、俺は俺のせいで自信喪失状態に追い込まれた人たちを知っている。
まるで呼吸をするように、努力をしてきた人たちの功績を俺の功績で上書きしてしまう。暇つぶし程度で描いた絵が国際的コンクールで賞を取ったり、暇つぶしで書いた小説が世界的ブームになったり・・・
ある有名画家が俺を褒めながら目の奥で絶望しているのを見た。チートのせいで読唇術も可能だったから、その絶望がありありとわかってしまった。
ある歌姫が何とか俺の実力に近づこうと過酷な練習を続けた結果、喉を壊してしまったらしいと聞いたことがある。
俺が何かをするたびに、誰かが傷つく。誰かが失う。
今回だって、俺があんなに鮮やかに爆弾を解除してしまったせいで、萩原研二は相当混乱したことだろう。これ以上言葉を交わすと、萩原研二の爆処人生を駄目にする可能性がある。これは俺なりの気遣いなのだ。
え?考えすぎ?
人生は一度きりだぞ!考えすぎなぐらいが丁度いいんだ!
えーっと、萩原研二の救済は済んだから、次は松田陣平?警察関係者はもちろん救済するとして、ヒロキくんとかキュラソーとか、死にそうな人は片っ端から救うつもりである。俺にはそれが出来るだけのチート設定がある。
もちろん、今までにも何人か救ってきた。権力最大限活用し、名前を変えて静かに生活して貰っている人たちが既に何人もいる状態だ。
知識もチートだったもんで、前世で軽く見た程度の原作知識も全て把握している。
普通に考えたら、何故前世の知識だからってキャラが死ぬ日時とか場所とかをそんなはっきり覚えてるんだって話だ。まぁ転生特典というなら仕方ないけれど。
「・・・次の事件までまた何年も待たなきゃいけないのか、地獄だな」
早く工藤新一がコナンくんになって事件どかどか起こらないかなぁ。
じゃないと俺は自分のチート具合に具合悪くして死にそう。何で参入する事業が全部大当たりするんだ、失敗を知らなすぎるだろ。俺っていつか世界を掌握しちゃうの?黒の組織を超える大組織を俺が立ち上げて、俺が最大の悪になっちゃう?むしろ実はそっちの方が俺のチート活かせる?
・・・いかんいかん。うっかりダークサイドに落ちるところだった。これ以上設定を増やしてたまるか。
とりあえずキャラ救済はもちろん、可能な限り殺人事件の被害者も救う所存である。全ては俺のために。
■チート主人公
完全無欠で最強チートな転生主としてDC世界に爆誕してしまったある意味悲劇の子。
短い人生じゃ自分のチート設定を一割も生かせない
チートなせいで努力しなくても全てが出来てしまうため、人としていろいろ欠如した生活を送ってきたせいでいろいろ壊れた。
救済をするのはキャラのためではなく、自分の生きる意味をなんとしてでも作りたいから。じゃないとチート転生はなんのために?ってなっちゃう。
文句の付け所がないイケメンだけど、唯一目が死んでる。
何でチート転生してしまったのかわからないけど、もし仮に前世の自分がチートを夢見たせいだとしたら全力で前世の自分を殴りたい。
■萩原研二
無事生存。目の前で行われた鮮やかな解体に正直吃驚。
目が完全に死んでる恩人の名前も知ることは出来なかったけど、いつか見つけてお礼を言いたいと思ってる。
防護服は着るようになった。
■松田陣平
萩原の命の恩人に感謝してるけど、もしかしたら死んでたかもしれない萩原のことを考えると爆弾の犯人絶許。原作通り観覧車へ。
萩原の言う命の恩人の特徴が『めっちゃ目が死んでるイケメン』で正直もっとちゃんとした特徴教えろよってなるけど、たぶん一目見て「あ、こいつだ」ってなる。
いろんな人をチート能力で自分の存在意義のために救い続ける自己中ヒーロー。
彼の人生の転機はこの爆弾事件から。
萩原&松田の爆処ペアにこれでもかと構われ、チート能力に関して「お前、多趣味なんだなぁ」と笑われ、まるで普通の友人のように飲みに誘われ、まるで大事な友人のように心配をされて・・・チート主人公は死んだ目をしながらもちょっとだけ笑えるようになりそう。
※以下小ネタ
「おい器用貧乏」
「松田、○○は器用富豪だ」
「んな言葉聞いたことねーぞ」
「○○○○、あれやって、世界各国の言葉でやるドラえ〇んのモノマネ」
「あれおもしれーか?俺はそれよりも無駄にすげぇ利き水道水やらしてーわ。水飲んだだけで何処の土地の水かわかるってやべーだろ。お前各地の水道水一度飲んだことあんのかよ、王子顔の癖にって思うとマジうける」
チート主人公のチート技も、宴会芸の一つみたいな扱いをして欲しい。宴会芸でチート技をいかんなく発揮して欲しい。
2019/2/25戻る