「人識は外国に行ったのかぁ・・・いいなぁ、外国・・・俺も行きたいなぁ」
零崎の兄である零崎黒識は、いーちゃんことぼくの目の前でぼーっとしながらそういった。
零崎の行方を知らないか、と尋ねてきた黒識さんは、ぼくよりも少し年上。
何でも「この間貸したCD返して貰って無い」というあまりに平和的な理由で零崎を探しに来たのだ。
・・・まぁ、戯言だけど。
「外国ってすごいよね。俺、外国に憧れるなぁ・・・外国といえば、外国にはマフィアとかがいるでしょ?俺、そいつ等と一戦交えてみたいなぁ・・・」
「止めといたらどうですか?きっと、マフィアが壊滅しますから」
零崎との会話にも、ちらっと黒識さんの話が出てきた。
――兄貴を怒らせるなよ。怒らせたら最後・・・地球が終わるからな。
まさかの地球滅亡ときた。
目の前で楽しそうに声を上げている黒識さんは、やっぱり殺人鬼なのだろうと、零崎の話でわかる。
「赤色に頼んで、外国に連れてって貰おうかなぁ・・・あ、潤って、零崎が嫌いだったっけ?」
「本人はそう言ってましたよ」
「そっか、残念」
ちょっと肩を落とす黒識さん。
「いーちゃんは、外国に行ったことがあるんだよね?」
「まぁ・・・そうですけど」
「今度、外国について話してよ!俺、いーちゃんの話が聞きたいなぁ」
ふにゃふにゃと笑っている黒識さん。
・・・本当に殺人鬼?
「いいですよ」
まぁ、暇潰しに。
僕がそういうと、黒識さんは「本当に?」と言った。
「・・・いーちゃんは優しいなぁ。俺、ちょっと惚れそう」
へにゃっと笑った黒識さんは、本当に殺人鬼なのか疑わしくなってくる。
しかも、格好良いから、キュンッときてしまった。
・・・惚れそうなのは、こっちですよ。と小さく呟いた。
「ん?何か言った?」
「いえ。何でもありません」
ぼくは視線をそらしてそういった。
嗚呼・・・
さっきの発言は訂正。
もう惚れてる。
戯言・・・だよ?
ほのぼのお兄様