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「・・・変態」

「・・・え?」


世界が停止した、気がする。




というか、え?変態?僕のこと?

目の前には何処か拗ねたような顔をしている風間君。




「た、ただ『髪質綺麗だね』って言っただけだよ?へ、変態ってそんな・・・」

「綺麗だねって言いながら髪触ったし、触り方がエロかった。この変態め」

「な、何で・・・」


触り方とか一々気にしたことも無い。

だが風間君がじとっとした眼で僕を見てくる。


髪を褒めて触っただけの僕は別に悪くないはずなのに、何だか居た堪れない・・・





「服とか顔とか、何時もは全然褒めてくれない癖に、突然髪の毛褒めるとか・・・もしかしてフェチ?そういうフェチなのかい?」

「いやいやいや、何でそうなるの!?」


確かに風間君の顔は良いし、常々綺麗な顔だとは思ってる。

服装だって、一緒に出掛ける度に違う服装してて、そのどれもこれもが似合うなって思ってる。

会う度に思ってるし、特に口に出す必要性はないと思ってた。



けど、髪は新たな発見だった。

何時も見てたはずの風間君の髪がちらりと目に入った瞬間、何かとても新鮮な気持ちになった。


だからつい、その発見に感動して「綺麗だね」って言葉を発したんだ。

・・・それなのに「変態」なんて、落ち込みそうだ。





「もっと褒めてよね。髪以外にも、もっとあるでしょ」

「だ、だってそれじゃ、毎日褒めることになるじゃないか」


「どうしてさ!」

だって・・・






「毎日綺麗だって思ってるのに、それを口に出したら大変じゃないか」






僕がそう言った瞬間、風間君の動きが止まった。

そしてそのまま下を向き、ぷるぷると身を震わす。


まさか更に怒らせてしまっただろうかと軽く身構えれば、風間君は小さく何かを呟いた。

え?と聞き返すと・・・




「・・・変態」

「えっ!?」


「むっつり」

「むっつり!?」



・・・むっつりが追加された。

変態とむっつりという不名誉な称号に本気で落ち込みそうになる僕だが、ふと風間君を見て気付いた。


こちらを変わらずじとっとした目で見ている風間君の顔が何時もよりほんのり赤い気がする、と。




「風間君、なんか・・・」

「何だい。人の顔をじっと見て、変な想像でもしてるのかい?」


「それは濡れ衣にも程があるって!」

「君がそんなむっつり助平の変態野郎だとは思わなかったよ」

助平まで追加された。一体、この会話の中で僕は幾つ不名誉な称号を与えられるのだろう。




「そこまで言わなくても・・・ただ風間君の顔が赤いから、もしかして熱でもあるんじゃないかと心配しただけなのに・・・」

「だ、誰の顔が赤いって!?ば、馬鹿じゃないのかい!?僕の顔が赤いなんて、まるで僕が君の言葉に照れてるみたいじゃないか!」




「えっ、照れてたの?」

「・・・・・・」



ばっと顔を隠しながら声を上げる風間君にぽかんとした瞬間、風間君に無言で頭を叩かれた。理不尽だ。







乙女心が分からない







しばらく拗ねていた風間君だったけど、ご機嫌取りに喫茶店まで連れて行けばすぐに機嫌を治してくれた。



「まぁ、僕の髪が綺麗なのは当然だけどね。なんたって、この間からちょっと良いトリートメントに変えて――」

「え?トリートメントなんて何でも一緒じゃないの?」


「・・・・・・」

「痛いっ!?」

何故だかまた機嫌を悪くした風間君に今度はグーで殴られた。




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