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「#エロ」のBL小説を読む
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風間望は愛されることを望んでいる。あ、別に名前の望とかけた訳ではない。
風間望は万人に愛されたい。愛されたがり。
けど、風間望は万人を愛さない。周りなんてどうだって良い存在。
なのに愛されたい。自分を愛す人間には、自分だけを愛してほしい。
愛されたがりの癖に愛さない。自分勝手な傲慢野郎。
ボロクソ言ってはいるが、その風間望こそ俺が愛してしまった相手だ。
出会いはそう昔じゃない。高校に入学してから出会った風間は今とそう変わらない性格で、どちらかと言えばクラスのムードメーカーとして親しまれていた。
女子生徒とも仲が良いし、話術もあるから常に風間の周りには誰かがいた。
ちなみにその一方で一部の男子からは物凄く嫌われてたり一部の女子からは軽蔑されてたりと、何とも好き嫌いが分かれる性格の持ち主でもあった。
一目惚れというのは不思議なもので、本当に一目見た瞬間から俺は風間望という人間が好きになっていた。
通っている高校はマンモス校と呼べる規模の学校で、風間と同じクラスになる機会なんて殆どないかと思われたが、何の奇遇か二年三年と同じクラスになっていた。
一年の頃は廊下でたまに会話する程度だったが、同じクラスになれば話は変わる。
暇があれば風間と会話したり、他の奴等と混じって風間の話を聞いたりした。
当然その頃も風間のことを愛していたが、別にそれを風間に教えてやる気はなかった。
何故って?別に一目惚れしたから、惚れたから告白しなければならないというルールはない。愛した、ただそれだけ。恋人になりたいだとかそんな甘酸っぱい思考をした人間ではなかったのだ、俺は。
このまま風間にとってただの友人の一人で良い。俺はその立ち位置で満足していた。
しかし驚くことに、風間の方から俺に一つの問いかけをしてきたのだ。
放課後の事だ。
その時の状況はあまりよく覚えてはいないが、兎に角俺と風間は教室で二人きりだった。
机に座ってノートを広げていた俺と、そんな俺の正面に立って俺を見下ろす風間。
『君、僕のこと好きなの?』
状況は曖昧だが、そう尋ねてきた時の風間の顔は今でもよく覚えている。
期待に胸を膨らませて無意識のうちに目をキラキラとさせた風間。その言葉を肯定すれば『まぁ!わかりきってるけどね!』と言う風間の口元は喜びでにやにやしていた。
わかりやす過ぎるのだ。
愛されたい愛されたいという欲求がその表情でよくわかる。
俺が一度愛していることを肯定すれば風間は事ある事に俺に付き纏うようになった。
好きな相手が付き纏ってくることは別に構わない。だが、風間は決まってこう尋ねてくるのだ。今のように。
「名前は僕の事愛してるでしょ?」
目の前に立つ風間の目は期待でキラキラしている。
早く言ってよと催促されている気分にさせられる目だ。
俺は「あぁ」と返事をした。風間の顔が笑顔で埋め尽くされる。
「まぁ、名前が僕を愛してるのは知ってるけどね!」
自信満々に胸を張って行く風間。
愛してないと言ったら絶望したような顔をする癖に。
風間は俺の口から『愛してる』と言われることも、『あぁ』とそれを肯定されるのも大好きだ。
だがしかし、風間の方からは俺に『愛してる』だの『好き』だのと言ったことは無い。
上記でも述べたように、風間望は愛されたがりなのだ。自分は愛される人間で、愛すような人間ではないと思っている。
別に俺は自分の愛に対する見返りは求めていないが、意地悪したいと思ってしまう瞬間もあるのだ。
例えば『別に』と返事をしてみたこともある。
その時の風間の表情は印象的で、一瞬にしてその顔から表情を消したかと思えば顔色を真っ青にしながら「嘘だよね?」と尋ねて来たのだ。服をぎゅっと掴んできた手は震えていた。
もちろんすぐに「あぁ、嘘だ。愛してる」と返事をしたし、アフターケアを兼ねて何時もより多目に『愛してる』と言ってやった。
このことから分かる様に、風間は愛されないことを恐れている。
嫌われたくないとかそんなんじゃなくって、愛されないと言うことだけを恐れている。
「ねぇ名前、やっぱり名前は僕の事愛してるでしょ?」
「まぁな」
毎度毎度懲りずに同じことを聞くコイツは、きっと心のどこかでは不安なのかもしれない。
こんなにあっさり風間を愛してるなんて言うのは俺ぐらいだろうし、毎度毎度同じ質問をされても嫌な顔一つしないのは俺ぐらいだろう。
風間にとって俺は自分の欲求を満たす良い道具で、けれど俺は道具ではなく人間だともわかっているから何時か俺が心変わりをして自分を愛してるって言ってくれなくなるんじゃないかって不安なのだ。
何処までも自分中心の考えの傲慢野郎で非情に笑える。
しかし風間の心配は見当違いだ。
俺は風間を愛さなくなることなんて当分無いだろう。
何故ならこんなに面白いのだ。俺の一言でこれでもかという程喜びの表情を浮かべる風間をどうして突き放せようか。
愛を否定した時ですら面白い反応をするのだ。本当に、コイツは飽きない。
「風間」
ふとあることを思いつき、俺は風間の名を呼んだ。
何だいと返事をする風間は先程俺に愛していることを肯定されて心底満足そうだ。
けれど俺は知っているぞ。お前が俺に『僕のこと愛してる?』と尋ねる頻度が、少しずつだが高くなってきていることを。
満足している時間が短くなってきていて、もっともっと愛してほしいって思ってること、俺は知ってる。
だからこんな提案をするんだ。面白そうという理由だけで。
「俺に愛して欲しかったら、俺の事愛してみろよ。そしたらもっと、愛してやるから」
愛に飢えた人間がその言葉に食いつかないわけがない。
案の定目の奥に期待の色を宿しながらも「君を愛せって言うのかい?」と形ばかりの挑戦的な笑みを浮かべる。
風間の胸の内なんてわかりやすい。
俺は「あぁ」と短く返事をした。返事をした瞬間、唇が柔らかなもので塞がれた。
「僕からのキスだよ。嬉しい?」
にんまりと笑う風間。キスと言うには何とも幼稚な触れるばかりのキスだったが、風間にしては大きな進歩だった。
俺は「あぁ」とやっぱり短く返事をしながら風間を抱き締めてやった。そのままそっと背中を撫でて、髪を梳く様に撫でて、耳元で「愛してる」と囁けば風間は満足そうに「知ってる!」と笑うのだ。
風間から愛されることを望んでいたわけではないが、愛されたくないわけではない。仮にも自分が愛した相手からの愛情表現は嬉しいものだ。
嬉しいししかも面白いなんて、我ながら良い提案をしたものだ。
風間の腕が俺の背中に回ってきてぎゅーっとしがみ付かれるのを感じながら、俺はにやにやと笑った。
愛されたがり矯正方法
ただの愛されたがり傲慢野郎から卒業させてやるのも、面白そうだと思う。
もちろん風間のことは愛してる。じゃなきゃそんな面倒なことしないさ。
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