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綾小路のスキンシップが激しくなったのはつい最近だ。

あの大川とかいうヤツが転入してきて、それから。


元々はただのクラスメイトで、少し仲が良い友人同士で・・・





「名前・・・辛い、辛いんだ・・・」

「うん。そうだな、辛いよな」


俺に正面から抱きついてぐすぐすと泣いている綾小路に、俺は内心大分困っていた。



休みの日、何の連絡も無しに俺の家を訪ねてきた綾小路は、俺が部屋に通すなりこの有様となった。

前々から綾小路は「名前は良い香りがするから落ち着く」と言って俺の傍に来ていたが、これほどまでではなかったと思う。というか、今の状態は友人同士としては些かやりすぎだ。



けど、泣いてる人間を無理に引きはがす程、俺も鬼ではない。

綾小路が置かれている今の状況も理解しているつもりだし、それを考えると優しくしておくのが一番良いだろう。






「大川がっ、あの悪魔が・・・」

「よしよし・・・大丈夫。此処には大川はいないからな」


大川、ついに悪魔とまで言われるようになったか。

まぁアイツが臭いのは本当だからな。ニオイに敏感な綾小路からすれば、あの汚臭の塊はまさに“悪魔”なのだろう。



泣きながら震えている綾小路の背中をぽんぽんと叩いてやれば、綾小路は更に強い力で俺に抱きついて来た。・・・お前、そんなに大川が嫌いか。まぁ、俺も好きじゃないけど。





「俺が大川に言いに行こう――」

「駄目だ!!!」


突然凄い剣幕でそう言った綾小路に俺は硬直する。

その眼は真剣というか、覇気すら感じるというか・・・






「大川に近づいたら・・・名前に大川の悪臭が付いてしまうっ」

「・・・あぁ、わかった。大川には近づかない」


「名前っ・・・もっと抱き締めて、他の臭いを嗅ぎたくない・・・名前だけが良いっ」



俺の胸に顔を埋めながらそういう綾小路に顔が引きつる。





「名前名前名前名前名前名前名前名前・・・」

「・・・参ってるな、綾小路」


じゃなきゃ、今この状況は可笑し過ぎるだろう。




ちょっと前までは本当に普通の、ごく普通の友人同士だったんだ。

これじゃまるで、恋人同士か何かのようじゃないか。





「名前・・・一生名前の匂いを嗅いで生きていきたい」

「わぁお・・・それはなかなか奇抜な発想だな」




「冗談じゃない。本気だ」




「・・・目が怖いぞ、綾小路」

真っ直ぐと俺を見てくる綾小路に気押されしてしまう。




「朝は一緒のベッドで目を覚まして、一緒に顔を洗って歯磨きして、一緒の朝食を食べて・・・昼間は二人っきりでのんびりと過ごして、夜は一緒にお風呂に入って晩御飯を食べたらソファに並んで座ってテレビを見て・・・寝るときももちろん一緒だ。抱き合いながら寝るんだ」

「・・・わかった。わかったから、その怖い目を止めろ。大丈夫か綾小路。病んでるぞ・・・」



「・・・名前と一緒に大川の存在しない世界に行きたい」




何故俺なんだと言いたいが、言える雰囲気ではない。

綾小路の顔は本気だと物語っているし、下手に質問しちゃいけない気がする。





「名前、名前・・・」

すんすんと綾小路が俺のニオイを嗅いでいるのが分かる。


ぁー、俺はどうすれば良いんだ。






「名前、キスして」

「・・・ん?」


「キスして、お願い」



首にするっと回された腕。物凄く至近距離にある綾小路の顔。

ご丁寧に普段着けているマスクまで外している。





待て、キスって何だ。


口と口とくっつけるアレだろ?

何故俺と綾小路がソレをするんだ?可笑しくないか?





「名前っ」

「わ、ちょっ――」



小さな衝撃と共に綾小路の唇が俺の唇に合わさる。

あまりの衝撃に硬直してしまう俺の口の中に綾小路の舌が侵入してきてるとか、何か綾小路の腰が揺れてるとか、そういうのが頭に入ってくるまで時間がかかった。






「あ、綾小路!?」

「名前・・・好き、好きだよ、名前」


「え、あ、えと、えぇっ!?」


「名前っ、中も全部、名前の匂いで埋め尽くして・・・」

「はっ、ちょっ、わぁッ!?」




一気にその場に押し倒された俺は、あまりの現実を理解できなかった。








きっと君は参ってる








理解できたのは、全てが終わった後だった。

俺は俺の腕を枕に幸せそうな顔で眠っている綾小路とその場の惨状を見て、空いている手で頭を抱えた。




・・・とりあえず、綾小路とは後でしっかり話をする必要があると思う。




あとがき

綾小路君は精神的に追い詰められると突拍子もないことをやらかす子だと思う。
・・・主はきっと、押しに弱いタイプ。←




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