×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -





ぴたりと首に当てられているナイフに僕は動きを止めた。


目の前でにこにこと笑っているのは、仲の良いクラスメイト。





「名前っ、なんで・・・」


見れば名前の制服のシャツは赤く汚れていた。

きっと首に当てられているナイフも赤いのだろう。





足元に倒れているのは誰だ?


一瞬だけ見えた誰かは、僕や名前と同じ制服を着ていて、名前以上に真っ赤に染まっていた。






「あやちゃんには知られたくなかったなぁー」


にこにこと、まるでそれしか表情を持たないかのような名前に、僕はぞくりとするものを感じる。

目の前のこれは誰だろうか。本当に、僕の知っている名前だろうか。



クラスメイトの名前は良いヤツだ。

優しくて、僕がこの嗅覚のせいで具合が悪く鳴った時は何時だって手を差し伸べてくれる。



誰かが困っていれば見過ごすことが出来ない正義感もあって、クラスでも人気者で・・・なのに、僕を一番の友達だと言ってくれて・・・








今日の放課後のSHRの時だって、名前はいつも通りだった。

また明日。そう言って笑う名前に僕も笑い返したことを覚えてる。


けれど僕は先生に用事を頼まれ、今の今まで学校に残っていて・・・



さあ帰ろうとしたところで・・・全然知らない名前に出会った。







「まさか、あやちゃんがまだ学校に残ってるなんて知らなかった。日野っちも教えてくれないんだもん」

「名前、お前は・・・」


にこにこ、名前の感情の読めない笑みが消えることはない。






「あやちゃん」





僕の知るその声で、名前だけが呼ぶ僕の愛称を口にする。


「あやちゃんは何も悪くない。けど、運が悪かった。タイミングが悪かった。あやちゃん本人じゃどうしようもないぐらい、悪かったんだ」

すっと首のナイフが退けられる。



けどこれは、命が助かったわけじゃない。

にこにこ笑っている名前は怖い。


出来ればその笑みは止めて欲しい。

けれど今はそれより・・・





「名前、僕・・・」

可笑しなことに、僕は今の状況に混乱してはいなかった。


確かに怖いと思ったが、それは足元の死体だとか血濡れのナイフとかじゃなくて・・・

僕は僕の知らない名前がいたことが、怖かった。


僕が知ってる名前が全てじゃないことが怖くて、酷く寂しくて・・・





「・・・ばいばい、あやちゃん」


とすりと胸に感じた衝撃と、短い別れの言葉。

あっ、と小さな声しか上げられなかった僕が意識が消える寸前に見た名前は・・・






笑顔が完全に消えていた。







にこにこにこ








「名前、今日はお前が仕留めたか・・・ん?あぁ、こっちもお前が仕留めたのか」

「・・・酷いなぁー、日野っち。あやちゃんが残ってたの、教えてくれないなんて」


「別に良いだろう。・・・ん?お前、何で笑ってないんだ?クラブの時は何時も笑ってるだろう」

「・・・ほんと?笑えてない?おかしいなぁ・・・」




あとがき

綾小路だから“あやちゃん”

普段の彼⇒親しみやすい。正義感がある。優しい。人気者。
殺クラ中の彼⇒にこにこ笑顔。笑顔しか浮かべない。

殺クラ中だから躊躇なく友達も殺せちゃうけど、本当は殺クラ中の仮面が剥がれちゃうぐらいにはショック。
たぶんもう笑えない。




戻る