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「荒井。ちょっと尻触っても良い?」




「と言いながら既に触ってるようですが」


「おっと、俺の右手が勝手に・・・」

「はぁっ・・・何ですか一体」


なでなでと自身の尻を撫で繰り回す名前の右手。




名前のセクハラは今に始まった時ではない。

出会い頭に「へい、タッチ!」と言いながら尻を触ってくることもあれば、背後から突然抱きついてきて「胸小さいねぇー」と胸を鷲掴んでくることだってある。


今更尻を撫でられてもあまり気にしないほど、荒井の感覚は日々のセクハラで麻痺していた。







「次の授業何だっけ」

今まさに尻を撫でている人間とは思えないほど、ナチュラルに荒井に問いかける。



「数学ですよ」

荒井も荒井で、尻を撫でられつつもしっかりと答えるあたり、やっぱり麻痺している。



「宿題あったよな。見せてくれよ」


「またやってないんですか?まったく――ん、ぅ・・・ちょっと、揉まないでください」

「手が勝手にさぁー」



その言葉に荒井の冷ややかな視線が名前に突き刺さる。

怖い怖い、と言いつつもやっぱり撫でる名前は、きっと精神がとても逞しいのだろう。図太いとも言う。








「毎日毎日、君も飽きませんね」

「飽きるもんか。こう・・・俺の手にジャストフィットするんだ」


左手をわしわしと動かして見せながらそういう名前に、何を馬鹿なことをと荒井は呆れる。





「別に良いだろ?触っても減るもんじゃないし」

「体積は減りませんが、僕の中の何かが失われている気がします」




荒井の言うとおりだ。

が、今でも名前の手がしっかりと荒井の尻を撫でている様子を見る限り、既に手遅れなレベルで荒井は失ってしまっているだろう。





「そもそも、男の身体なんか触ったって面白くないでしょう」

馬鹿みたいじゃないですか。と吐き捨てるように言う荒井に、名前は「んー」と考える素振りを見せる。




「面白い面白くないで触ってるわけじゃないからなぁー」

「じゃぁ、なんだって言うんですか」


訝しげに問いかける荒井に、名前はだってさと呟く。










「荒井が可愛いからさ、つい触りたくなるんだ」









にこりと、何処か爽やかさすら覚える笑みを荒井に向け言う名前。

荒井はそんな名前にじとりとした目をし・・・







「・・・笑顔で言えばなんでも許されるなんて思わないでください」



自分の内股に伸びかけていた手の甲を抓り上げた。









油断も隙もない!







(少しきゅんっときたなんて、言ってあげませんからね)




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