「イルミ、ちょっと死んでみてくれないか」
「それは心臓をしばらく止めるって意味で?」
「違う違う。肉体と魂を分断するてきな意味で」
にこにこ笑顔のナマエと、無表情のイルミ。
どちらも同じ顔。
所謂、双子。
無表情のイルミとは違い、双子の兄のナマエは常に笑顔。
否、笑顔しか浮かべられない。別に楽しくない時でも、どんな時でも笑っている。
「何で?」
「んー、自分の死に顔がどんなのか見たくなったから」
「あぁ、そっか。俺たち、同じ顔だもんね」
無表情で納得したようにポンッと手をたたくイルミに、ナマエは笑顔で頷いた。
「ナマエが俺のこと嫌いになったかと思った」
「そんなわけないじゃないか。俺がイルミを嫌いになることなんて、ありえない」
ナマエとイルミはどちらともなく抱き締めあった。
笑顔のナマエと無表情のイルミ。
異様な光景だが、二人にとってはこれが“正常”。
「それもそうだね。俺の思いすぎだったみたいだ」
「じゃぁ死んでくれる?」
「それは無理。ナマエが死んでみると良いよ。俺も、自分の死に顔が見てみたくなってきた」
「やっぱり考えることは同じだね、イルミ」
「そうみたいだね」
まるで当然のように、二人は深く深く口づけをする。
ゆっくり離された口。
「けど、ナマエの死に顔は見たくないよ、俺」
「奇遇だね。俺も、イルミの死に顔は見たくない」
あくまで、見てみたいのは自分の死に顔。
お互いに「やっぱり俺たちって双子だ」と言う。
一人は笑顔で。一人は無表情で。
「それに、イルミが誰かに殺されるのは嫌だ」
「そうだね。俺も、ナマエが他のヤツの手で殺されるなんて嫌だ」
二人はそう言ってから「んー」と考える。
そして「あぁ、そっか」とお互いに顔を見合わせる。
「イルミは俺が殺すから」
「ナマエは俺が殺すから」
お互いにそう言って、再び深く口づけた。
サツジンフタゴ
すっごく深い兄弟愛。