ある日目が覚めたら、俺はマリアになっていた。
家から出ると可愛らしい動物たちが沢山いて、川の水はキラキラと輝き・・・
「マリア・・・」
漫画の中でしか見たことがない男が目の前にいて・・・
「馴れ馴れしく呼ばないでちょうだい?自分の名前、嫌いになりたくないの」
ぶしゅぅぅぅうううう!!!!!!
笑顔でそういったら、男は面白いぐらい血を噴出した。
わぁ何これ面白い。ついつい口元に笑みが浮く。
面白い、面白い。何言ったらもっと面白い反応してくれるんだろう。
「ねぇシスター。シスターはどうしてそんなに変態でロリコンなの?それにどうして人みたいに呼吸をしているの?地球の酸素は無限大じゃないのよ?シスターみたいな人が呼吸なんてしたら空気がもったいないわ。無呼吸の練習をなさい?さぁ早く。出来ないの?ほんと・・・何にも出来ない人ね」
ブシュッ・・・ブシャァァァァァアアアアアアッ!!!!!!!
どさっと地面に倒れたシスターを見下ろしながら、俺は更に笑みを深くした。
嗚呼なんだろうこの爽快感。
俺はSだったの?いや、そうじゃないはずなのに・・・
シスターを見てると、なんだかすごく虐めたくなるんだ。
虐められて倒れるシスターが可愛くて可愛くて・・・
やべっ、何だか目覚めそう――
パチッ
「あ。夢か」
何と言う夢を見るんだ。欲求不満かよ。
俺はガシガシッと頭を掻きながら部屋から出ようと・・・
「え゛」
「おはよう名前。今日は早いんだな。何時もなら昼まで寝ているのに」
「ぇ、ぁ・・・え?」
「何だ名前。折角早く起きたんだ。クッキーを作るのを手伝え。今日はミサだぞ」
「・・・ぉ、おぅ」
な ん で ?
俺は顔を引き攣らせつつ・・・夢の中の住人だったはずのシスターとクッキーづくりにいそしんだ。
「な、なぁシスター」
「何だ名前」
「俺、何時からシスターの教会で暮らしてるんだっけ?」
「何をおかしなことを。お前は此処に住んではいないだろう」
「へ、そうだっけ・・・?」
「あぁ。今日はお前が泊まりに来ただけだ・・・というより、今日は寝起きが良いんだな。何時もなら寝起きは・・・」
ぽそっと小さくシスターが何か呟く。
だが、残念なことに俺はそれが聞こえた。
何時もなら寝起きは・・・――Sの化身なのに、って。
それってさ、漫画の中で・・・シスターがマリアさんのことそう呼んでなかったっけ?
さぁっと血の気が引いた俺は慌てて「悪い、ちょっと鏡借りる」と言ってその場を駆け出した。
バッとみる鏡。
何時もの俺の顔。
けど・・・
「か、髪の毛・・・ピンク色」
髪の毛は見事なマリアさんカラーに染まっていた。
「何故そんなに慌てている。何か問題でもあるのか?」
あぁ、まさかそんな・・・
「今日のお前は可笑しいぞ。何かあったのか――」
「・・・うっせぇよ」
「・・・・・・」
「俺が可笑しい?寝言は寝て言え。おかしいのはお前のその女装癖と存在だろ。地球に謝れ。お前が今まで踏み潰してしまったアリさんに土下座しろ」
ぶしゅぅぅぅううううッ!!!!!!
「・・・・・・」
やべ、快感。
どうやら俺は、マリアさんに成り代わったっぽいです。
最初にみたあの夢は、その予兆だったのかも・・・なんて。
ドSに目覚めた