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ぱちりと目を開けるとそこは川でした。




「つ、冷たい・・・!?」


何時の間に僕は入水していたのだろう。というか、何時川に来た?



少し目線を上げれば大きな橋も見えた。

入水自殺をしようとした記憶もない。じゃぁ何故僕は此処にいる。


取りあえず川の外に出なければ。そう思いながら身体を――






「おい、そこで何をしてるんだ」




「・・・ぇ」

背後から人の声。



バッと振り返れば、金髪の美しい綺麗な女の子がいた。




「ぁ、ぇっと・・・」


どうしよう。

こんな綺麗な女の子に見つかるとは。



何をしてる?何もしてません。


・・・どうしよう、僕って今凄い変人?








「お前も荒川の主を捕りに来たのか」








あ、違った。

変人はこの子だった。






「ぇっと、違うよ。ちょっと川から出ようとしてるんだ」


「そうか」



愛想笑いもそこそこにジャブジャブと音を立てて川の外に出る。




「・・・な、何此処・・・」


川の外に出ると、何だか家っぽいのがちらほら見えました。

なんか教会っぽいのもあるし・・・









「というか・・・――僕って誰だっけ?」






ヤバイ。これが俗に言う記憶喪失というやつなのか。


自分が学生だということや、男だということや、そういう基礎的なことはわかる。

けれど、僕は何処の学校に通っていたのかとか、自分は何処に住んでいたのかとか・・・



自分自身のことが何一つ思い出せない。



全身はびしょ濡れだし、もうどうしたら良いのか・・・






「取りあえず、さっきの女の子に此処が何処なのか聞こ――」



・・・いない。




期待を込めて振り返った自分が馬鹿みたいだ。

僕は大きくため息をつき、じゃぁあの教会っぽいところにしようと決める。



ガチャッ


「あの、すみません――」




バンバンバンッ!!!!!!


「ほわっ!?」




扉を開けた瞬間、頬を何かがかすめた。

頬にピリッとした痛み。


目の前には・・・







「貴様、何者だ」






もはやブラザーと言う言葉が似合う、何故かシスターの格好をした大きな男がいました。



「ぇっ、ぇと、僕は・・・」

「不審な行動をとればすぐ撃つ」



額に当てられているのは拳銃だ。




え?此処は日本ですらないの?銃刀法違反という言葉は通じないの?




「シスター!何一般人に銃を向けてるんですか!」

また背後から声が聞こえた。


下手に動けない僕はわからないけど、声からしてきっと男だ。




シスターと呼ばれた人は「リク、しかし・・・」と言いながらも拳銃を下ろしてくれた。

ほっとした僕は「ぁの、道を尋ねようと思って・・・」と呟く。




「敵かと思った」

「生憎武術の心得はありません・・・」



たぶん。


だって記憶ないからわからないし。






「貴方も有難う。僕、あのまま死んでたかもしれない・・・」


「!久々の常識的な会話・・・ぁ、いえ。偶然通りかかっただけですから」


振り返って見てみたら、そこには普通に格好良い男の子がいた。

そういえばシスターと呼ばれた人も美形の分類に入る。


僕は軽く笑みを浮かべながら「取りあえず、此処は何処?」と尋ねた。






「え?荒川の河川敷、ですけど・・・」


「・・・そっか。荒川か」

「ぁの・・・」

相手が若干不審そうに僕を見たのに気付く。





「ぁ、ごめん。いや、教えてくれて有難う。じゃぁ僕は退散――」



カチャッ


「待て」


「ぇ」

後頭部にあてがわれたのは、さっき額に当てられたばかりの拳銃であることは間違いない。





「懺悔室に来い」

「ざ、懺悔することなんて何も・・・」


「お前の目は嘘をついている目だ。今すぐ全部吐いて貰おう」


ガシッと腕を掴まれたかと思えば、そのまま教会の中に引きずられる。


さっきの子に助けを求めようとしたけど、その子はオロオロしているだけで助けてはくれなかった・・・無念。






バタンッと閉じた懺悔室の扉。



対面するようにいるブラザー・・・いやいや、シスター。




「名前は」

「わ、わかりません」



「何処から来た」

「・・・わかりません」



「自分が何者かわかっているか」

「そ、それは・・・もちろんわかります、よ」





「嘘だな」


「・・・わかりません」




「住む場所はあるのか」

「・・・わかりません」




あぁ『わかりません』しか返事が出来ないじゃないか。


軽く項垂れる僕に、シスターは言った。






「では村長に会いに行こう」

「え?」





「住む場所がないなら、此処に住めば良い。記憶も、いずれ戻るだろう」



ふっと笑ってそういったシスターに、僕の胸の中が何やらほんのりと熱を持った。







「・・・感謝します」



目の前のブラザーが本物のシスターに見えた。







記憶喪失な神父








「今日から此処に住む、“物忘れ”だ。皆、仲良くしてやってくれ!」

「何だその不憫すぎる名前は!!!!」

のちに河童の村長に紹介された名前に、リクはおおいにツッコミを入れた。



「も、物忘れのモノです」

苦笑を浮かべながら自己紹介をしたモノは・・・


「きょ、教会の神父をさせていただきます」

「マジで!?」


職業は神父らしい。



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