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「俺は馬鹿だ」




荒川に、一人の男の声が響いた。





「どうしようもなく馬鹿で何一つ取り合がなくその場にいるだけで環境破壊してしまうような、そんな生産性のない男なんだ」

「・・・・・・」



「アリさんを踏んでしまわないように浮くだけの力もないし、もう俺って何なんだろう?って自問自答してしまいそうな程なんだ。そんな俺の存在価値なんてありはしないだろう」


「・・・・・・」




「嗚呼何故神はこんな駄目男をこの世に出してしまったのだろうか。二酸化炭素しか生み出せないこの口が非常に憎らしいよ。空気を汚してしまうし酸素を奪ってしまう。あぁ、俺はなんて駄目な下種男なんだ!」





「・・・で、結局何が言いたいのかしら」


そんな彼の目の前にいたマリアは、笑顔で尋ねた。

男も満面の笑みを浮かべて言う。








「マリアの犬にしてください」


「お断りよ」





「・・・・・・」

「・・・・・・」





「何故だマリア!俺、今凄く頑張ったぞ!?一生懸命己を蔑む言葉を見つけてきたんだ!1週間かけて!」


カッと目を開いて必死に主張する男の名は名前と言う、この河川敷の住人の一人だ。




「へぇ?」

「俺はシスターのようにマリアの罵りに血を吹き出すなんて面白い芸当出来ない。だが、それは努力で何とかなると思ったんだ・・・クッ、マリア、俺はどうやったら君に見合う男になれる!」


彼はマリアを心底愛している。そしてシスターを敵視している。


事あるごとにマリアに「結婚してくれマリア!」と言うつわものだ。

しかも・・・





「その熱血なところが鬱陶しいわ。少しは静かにして頂戴」

「あぁ、すまん。もう少しボリューム下げるな」



「・・・・・・」


「・・・?」




「・・・貴方じゃMになるなんて無理よ」




この男、マリアの毒舌など何一つ通用しないのだ。


どんなに嫌味を言われても、笑顔で受け入れてしまうほど。

これでは遣り甲斐がない。




「何故だ!?俺は嬉しいぞ!?マリアが俺に声を聴かせてくれるだけで嬉しいんだ!罵りだって喜びだ!」


喜びの意味が違う。





「マリア!P子に聞いたぞ!マリアの好みは、100回位谷に突き落としても這い上がってこれるような男なんだろう!?今すぐ俺を突き落としてくれ!すぐに這い上がる!!!!!」


「嫌よ。私の手を煩わせる気?」

「じゃぁ誰に突き落として貰えというんだ!村長か!?それともニノの!?それともシスター!?誰に突き落としてもらえと言うんだ!」


うおぉぉぉおおおお!!!!!と叫ぶ名前の声が河川敷に響く。

住人は「またか・・・」とため息をついた。






「煩い」


「おっとすまん。また声が大きくなったな。耳は痛くないか?」



叫んだかと思えばマリアを心配するように優しく声をかける。





「・・・ハァッ」

「何故ため息をつく」



「もう疲れたわ。今日は帰って頂戴」


「わかった。じゃぁまた明日なマリア」


笑顔でマリアに「あ、これは今日のお土産」と綺麗なお花を差し出した名前は軽く手を振って去って行った。





「・・・・・・」

マリアは手にある小さな可愛らしい花を見ながら・・・







「馬鹿な男」


ふんっと踵を返し、牧場の羊たちの元へと歩いて行った。




ドMになれない




熱血漢でドS心のわからないこの子の河川敷名はイチズ君とか・・・。←
河川敷に住むようになった理由はマリア様とか、実はハイスペックだったら良い。


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