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人間って、呆気なく死んじゃうんだな。



え?何で突然そんなことを言うかって?

そりゃお前・・・








――俺の死因が“通学途中に車に撥ねられて即死”だったからだよ。







自分が死んだのに、意外にも冷静だった俺だが・・・






オギャアッ、オギャァッ


まさか――死んだと思った瞬間に再び生まれるとは何事だ。



しかも聞いて驚け。

ただ生まれたわけじゃない。俺は、






「刑部ぅー!」

「ヒヒッ・・・どうした、三成」




はい。――石田三成になりました。




昔は佐吉と呼ばれていた俺が、自分はあの石田三成なのか!!!と気付いたのは、目の前にいる刑部に出会ってからだ。


しかも、ただの石田三成じゃない。


なんと・・・俺が死ぬ前にやっていたゲーム、BASARAの石田三成なんだ!!!あの斬滅の!!!!


いや・・・そもそも、此処でいう未来で死んだ俺が、こうやって戦国時代に生まれ変わること事態可笑しいのだが、それは今は忘れよう。





病で体中に包帯を捲いていた刑部は、周囲から距離を置かれていた。

別に病は刑部のせいじゃないのに、そうやって周囲から距離を置かれる刑部が・・・


いや。別に同情したわけじゃない。ただただ・・・その時の俺の心境と酷くリンクしたとでも言うのだろう。





兎に角俺は、刑部と話した。

病のせいで、何処か歪んで、皮肉な言い回ししか出来ない刑部だったけど、俺はその全てを聞いた。


最初こそ「ヒッヒッ、同情ならいらぬわ」と邪魔扱いされたし、周囲からは止めておけと言われたが、俺は止めなかった。



それで、ちょっとずつちょっとずつ、刑部の皮肉も減ってきて・・・







「美味い茶葉が手に入った!一緒に飲もう!」


「ヒッヒッ。そんなに声を大きくせんでも、聞こえておるわ」

「む!それはすまない!早く刑部と一緒に飲みたかったんだ!」



「・・・相変わらず、三成はわからん男だ」

気付けば、俺は周囲の誰よりも刑部と一緒にいる時間が多くなっていた。


刑部はそんな俺に救われたというが、俺にしてみれば、俺の方が救われたんだ。






刑部だけに言った、俺の“秘密”


俺が本当は名前で、一度は死んで三成になったのだという、誰にも言えなかった“秘密”







刑部は俺を疑わなかった。


馬鹿らしい冗談だと笑い飛ばすこともなく、ただただ「そうか」と言ってくれた。





生まれ変わって、記憶は死ぬ前のが丸々残ってて、しかも未来を知っている俺は・・・






“孤独”だった。






簡単に言えば、淋しかったんだ。


だから、刑部が俺を受け入れてくれた時、嬉しかったんだ。

だから俺が一番感謝して、一番信頼を置いているのは刑部。


小さい頃から良くしてくれた豊臣の秀吉さんにも、そりゃ感謝してるし尊敬してる。もちろん、半兵衛さんにも。



あの二人は、こう・・・父親と母親みたいなものだ。




豊臣軍は俺にとっての居場所だ。









「刑部。体の調子はどうだ?」

茶をたてながら問いかければ、平気だという返事が返ってくる。


その返事についつい満足気に笑ってしまう。






何時も確認してしまうこと。



本当は怖い。

刑部のいるこの部屋の襖を開く、その瞬間が。



もしも中で刑部が死んでいたら?


不謹慎で、どうしようもない、俺の恐怖の象徴。

刑部と仲が良くなるごとに、その恐怖は増える。







「刑部。一つ・・・お願いしても良いか?」


「やれ、何だ」





茶を飲み終わり、何気ない会話を続けていくなか、俺は唐突に口を開く。











「・・・俺を置いて、何処かへ行かないでくれ」











俺よりも先に死なないで。という言葉は喉元までとどめ、ジッと刑部を見詰めた。



「・・・・・・」

何て自分勝手なお願いなのだろうか。

泣きそうな自分は刑部にギューッと抱きつき「お願いだ・・・」と呟く。





「・・・あぃ、わかった・・・」

小さくそう返事をした刑部が、俺を抱き締め返してくれる。



「・・・有難う、刑部」

「ヒヒッ・・・」


包帯越しに刑部に口づける。

刑部は驚いたように眼を見開いたが、小さく笑って受け入れてくれた。







本当は、孤独で孤独で仕方なかった。

だから、刑部が・・・





刑部が生きててくれて、本当に良かった。




これからも・・・どうか俺の傍で、生きて――





君と一緒が何より大切



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